39、暗雲(side ペトロネラ)
北部 ーカイトリュート公爵邸ー
ペトロネラは自室から中庭に集合する兵士たちを見つめていた。
ルイズバルト王が第二皇子を自分の子ではないと宣言し、エターナルリーベの取得方法を周知しなかったことにより、エターリア国内には一気に不満が噴き上がった。
元々病気がちで政治に対しては積極性を見せない王に対して不安を抱いていた者達が、全て第一皇子派の支持に回った。
王が聖結界に魔力供給していないせいで、弱化の影響が出始めたことも大きい。
こんな時期に聖結界の守りを弱めるだなんて、あの男の運もとうとう尽きたようだ。
北部と南部、両側から攻め込めば、首都アルランローゼは簡単に陥落するだろう。
「母上、出陣の準備が整いました。下まで降りましょう」
ディートフリート自らがペトロネラの車椅子を引いた。
茶色の髪に緑色の瞳の息子は、ルイズバルト王とは全く似ていない。
バレないように夫とよく似た男を選んで寝所に引き入れたのだが、生まれた子は全く違う色をしていた。
悪いのは王の方だ。
王は一度もペトロネラに触れなかった。
かつて父、カイトリュート公爵が率いる北部勢力はルイズバルト王を即位させるために、ある一族を奸計に嵌めた。そして王が喉から手が出るほど欲しがったものを手に入れたというのに、王はそのことで我々を逆恨みし生涯許すことはないと言い放った。
「ユーリウスが王となることだけは阻止しなければ・・・」
「わかっております、母上」
アレは悪運の強い子だ。
今まで何度もユーリウスの暗殺を試みたが、生来の慎重さゆえか全て失敗に終わった。
このままいけばユーリウスがエターナルリーベを取得し、王となってしまう。
「奥の手を用意しておくか」
本来エターナルリーベは取得適応者が試練の谷へ行き、聖獣グリフォンと戦わなければ得られない。
だが他にも取得する方法はあるのだ。
かつてルイズバルト王も同じ方法で、あの滅びた一族の者からエターナルリーベを奪ったのだ。
「号令をかけなさい、ディートフリート。あなたが王となることを、皆に知らしめるのです」
ディートフリートは力強く頷くと、兵たちの前に立った。
私は必ず我が息子を王にする。
王家の血族など滅ぼし、長年私を蔑んできた夫に復讐を果たすのだ。




