35、お守り(side アデルベルト)
エターリア王宮 ー東の宮ー
sideアデルベルト
学校から帰ってきてから、ユーリウス殿下はずっと調合室に閉じこもりっぱなしだ。
今日学校でリティ様によって押し付けられたお守りの守護魔法陣の解析を行い、どうにか外せないのか試しているらしい。
ここは窓が多く、外部から賊が入りやすい位置にあるため、警備する上でかなりの緊張を強いられる。
王宮での二度の毒殺未遂事件が起きてからは、敵もその手段は諦めたのか、食事に異物が混入されることはなくなった。
だが、今は別の手段を講じていると見るべきか。
アデルベルトも王の正妻ペトロネラを見かけたことがあるが、ユーリウス殿下に対するあからさまな憎悪は見るのも耐え難いものだった。
寝室に毒ヘビを放たれたり、花瓶の花がマヒを引き起こす毒草に入れ換えられていたこともあった。
アレを子供の頃から受け続けてきたユーリウス殿下の精神力は並大抵のものではないだろう。
それでも決して横道にそれず、人への思いやりと国への忠誠心を忘れないユーリウス殿下には頭が下がる思いだ。
リティ様はユーリウス殿下のことがよほど心配らしい。
前世のユーリウス殿下からご自身に贈られた守護のお守りをそっくりそのまま模倣して、今のユーリウス殿下の右手首につけられた。
アデルベルトが見た感じでは、かなり強力なタイプの直接皮膚に刻み込まれる魔法陣であり、もはやお守りというよりは呪いに近いかもしれない。
ユーリウス殿下は相当リティ様に対して怒ったようだが、こうなる結果を分かりきっていながら強行したところを見ると、薔薇の呪いに対しても何らかの効果があるのだろう。
「アデルベルト、待たせたな。部屋に戻るぞ」
ユーリウス殿下が部屋から出てきた。腕には王宮図書館から持ち込んだ本をたくさん抱えている。表情は入室したときと同じ、憂鬱なままだ。
「リティ様が殿下に不利益になるものを渡されるとは思えませんが・・・」
少しでも表情を明るくしようと本を受け取りながら言ったのだが、ユーリウス殿下はさらに渋面になった。
「確かに、害はないことはわかった」
「では安心ですね」
「そうとも言えない」
右手首をしきりに触れて、気にされている。
「やはり外せないのですか」
「いや、外す方法はある」
でも外さないと?意外とお気に召したのだろうか。
「マティアスも其方もあの者に対して好意的なのだな」
「まぁ、旧知の仲ですから」
「幼馴染みとは良いものだ」
前世からの縁なのですが・・。
記憶のない殿下に言っても無駄なので、私は誤解させたままにしておいた。
第二皇子ヴェルスハルトの動きが最近活発化している。
前世のように民衆まで味方につけるのは、何としても阻止しなければならない。
リティ様まで狙われているそうで、ユーリウス殿下自身が色々と策を練っているようだ。
それに聖結界の守護力が落ちてきていることも気になる。
リティ様の懸念が現実にならなければ良いが・・。
美しい外見と豊富な聖魔力、人を引き寄せるカリスマ性、王になるべくして生まれたユーリウス殿下からそれらを失わせる薔薇の呪いを絶対に受けさせてはならない。
必ず守る。
そう改めて決意し、私はユーリウス殿下の後ろをついていった。




