3、生まれ変わった途端に死にそうです
雪がシンシンと降りしきる。
私は今、生まれたばかりでありながら、人生最大のピンチを迎えている。
前世は男爵令嬢であり、身分は低いがギリギリ貴族として生まれてきた。
子供時代はそこそこ裕福な生活を送り、命の危険を感じたことなど一切なかった。
しかし今世は誰の子で、どこに生まれたのかもわからない。
生まれてすぐどんな理由かは知らないが、どうやら私は道端に捨てられたらしい。
今、私は雪に埋もれつつある。すでに雪は私の頬にまで達し、もうすぐ鼻を塞ごうとしている。
このままでは間違いなく凍死か窒息死だ。
手足をバタつかせて何とか動こうとしてみるが、まだ寝返りさえ打てない事に気づいて嘆息した。
女神様はユーリウスと再び会えるようにと転生させてくれたはずなのに、こんな場所で野垂れ死になんてあんまりすぎる。
私はどんよりとした空を見つめた。
どうやら女神によって奪われていた記憶は全て戻ったようだ。
ユーリウスの事、家族の事、ユーリウスとした約束の事。
全てを思い出すと共に、罪悪感に襲われた。
ユーリウスを守れなかった事、家族から離れてしまった事、女神との取引きの事。
一つ一つあげればキリがない。
私と出会わなければユーリウスも死なずに済んだのかもしれない。
私はユーリウスを殺した犯人を知っている。彼が私の婚約者となることが決まり、王配となることが気に入らなかった、あの男以外にはありえないのだから。
第三皇子ジャファラーン。
昔から第四皇子であるユーリウスのことを妬み、目の敵にしていた男。
今世は絶対に邪魔はさせないし、ユーリウスを死なせたりはしない。
雲が晴れて雪が止む。
満点の星が顔を現し、私に希望を与えてくれる。
夜空の色はユーリウスの瞳の色。彼はいつも優しく私を包み込んでくれた。私はあの月のようにユーリウスを守る剣となるのだ。
ユーリウス様。私、今度こそあなたを守りますね。だから、待っていてください。
雪が止んだことで周囲の家々がざわめき出す。
扉が開く音とともに足音が近づいてきた。「まぁ、こんなところに赤ちゃんが」という驚きの声が周辺に響き渡る。
なんとか私は生きながらえることができそうだ。
ホッとすると共に、私の意識は徐々に途切れていた。