20、王家の事情
「流石に王がご存命のうちは、ユーリウス様に呪いをかけるようなことは出来ないと思います。むしろ王が亡くなる寸前か直後が危険ではないかと」
クリスタが思案顔で呟く。
「王が亡くなるのは前世ではいつ頃でしたか」
私はアブラムに尋ねた。
「一年後くらいかと思われます。王が崩御された後、しばらくは内密にされるため、はっきりとした時期がわかりませんが」
「そうですか、時間がありませんね。それでクリスタ、以前言っていた、手が打ってあるとはどういうことですか?」
「アデルベルトをユーリウス様の側近に送り込みました」
アデルベルトは前世の私の忠臣だ。あらゆる暗殺方法に精通し、毒の処理にも詳しい。もちろん呪いの解呪方法も知っている。
「薔薇の呪いは、呪いの芽が心臓に届く前でしたら解呪可能です。呪いをかけられないことに越したことはありませんが、最悪かけられたとしてもアデルベルトがいれば問題ございません。それと呪いを引き起こす元となる呪いの種も、ネメシスニアを通じて取得者を追えるようにしております」
「よくやりました、クリスタ。では後はエターナルリーベの問題だけですね」
「それが一番難しいのですわ」
クリスタがため息をつく。
「王家は代々長子からエターナルリーベを取得させてきたのですが、第一皇子と第二皇子がすでに敵対状態にあり、慣例が成り立たない状態です。第一皇子は第二皇子と戦うために北部に兵を集め始めていますし、第二皇子は中央の貴族だけではなく富豪まで取り込み、私兵を雇っています。王はどちらの肩も持たず、二人のうちのどちらが皇嗣になるのか決まるまで、エターナルリーベの取得方法は伝えないと決めてしまったのです」
「つまり・・・」
「このままいくと取得方法は秘されたまま、王は亡くなるでしょう」
前世と同じだ。そして跡目争いは激化し、二人の皇子は倒れ、呪いをかけられたユーリウスが長い時間をかけて、取得方法を自力で探すハメに陥った。
「今回は私がユーリウス様に教えるとしても、取得には王笏が必要です。それを手に入れるのが難儀でしょうね」
「第一皇子と第二皇子が前世のように共倒れになったとしても、まだ第三皇子がいます。前世でも中継ぎの王代理として王笏を手にしていました。その辺りの対策を考えなければいけませんわ」
私は思わずため息をついた。第三皇子がそんなに簡単に王笏を譲るとは思えない。何しろ権力欲の固まりのような男だ。
「エターナルリーベの取得方法を、いっそのこと公開するのはいかがでしょう。王笏の重要性を伝えて取り上げてしまいましょう」
私達の話を横で聞いていたアブラムが提案した。
「それだと第三皇子が利用して、エターナルリーベを取得できてしまいませんか?」
私の疑問にクリスタが考える間もなく否と答えた。
「第三皇子の母親は魔力量が低いため彼の魔力量も低いのです。エターナルリーベを取得できるほどの聖魔力がありません。子供の能力は母親の潜在能力が大きく関係してきます。とある筋からの情報ではユーリウス様の母親が平民に落とされながらも王宮に呼ばれたのは、王の世継ぎが不適応者ばかりだったため、能力の高い子を生むためだったとも言われています」
「そんな理由で子供を生まされるのですか?」
「王家では当たり前のことですわ。より聖魔力の強い子を作らなければ、エターナルリーベを取れず聖結界が壊れてしまうんですよ。それは国の滅亡を意味します」
しかしそう考えると王族のユーリウスが前世で私に求婚した理由って、全てエターナルリーベ取得のためだったのではなかろうか。
私は愛されていたと思っていたけれど、王族としての責務と次代の有資格者を得るための手段のためだった可能性を感じてしまい、私は慌ててそれを打ち消した。




