14、クリスタとの再会
「クリスタ!」
「アストリット様!」
私たちはきつく抱き締めあって、再会を喜んだ。
生まれ変わってもクリスタは前世と同じ姿をしていた。
「まさかクリスタが、同じ年代に生まれていたとは思いませんでした」
「私もです。アストリット様はまだ生まれていないはずだと。先週ビストニアの倉庫群で見たこともない魔術が発動されたと聞いて、もしやと思ったのです。
調べてみたら弱冠十二歳のAAA+冒険者がいると聞いて・・・
ハァ、アストリット様、何故に冒険者なのですか?
アストリット様ほどのお力なら、地元採用の魔導士にだってなれたでしょうに・・・」
クリスタに呆れられるが、私にそんな知識はなかった。
冒険者になれただけでも、餓死せずに済んで良かったと思っているのに。
「こんな真っ黒に日焼けして、髪もボサボサになって・・・だから一目見ただけではわからなかったので、少しの間、観察させていただきました。
だって前世のお姿とあまりにも違いすぎるんですもの。カトラリーより重いものを持ったことがなかったアストリット様が剣を持つだなんて!!
手なんてガサガサではありませんか。ああ、こんな節くれだって・・これじゃあ結婚指輪が入らないですよ!」
再会の喜びが半減してきた。
なんだかクリスタが説教臭い。 まるで百歳まで生きた口煩い老婆のようだ。
「クリスタ、あなた前世では幾つまで生きたのですか」
「大台を目前にして、食べ物を喉に詰まらせまして・・」
クリスタおばあちゃんは随分と長生きしたものだ。私なんてその半分も生きられなかったのに。
それなのに同じ世代に生まれ変わるなんて、なんだか納得がいかない。
「とにかく冒険者稼業はおしまいです。アストリット様には我が領地の貴族の養女になっていただきます。本当はわたくしと姉妹になり、オルロワの領主一族になっていただきたかったのですが、ウチは父が亡くなり、領主の兄も独身で養子が取れないのですわ。本当に、本当に、残念でなりません」
そう言ってクリスタは歯噛みした。そんな悔しがるようなことだろうか。
「クリスタ、困ります。わたくし孤児院の子供たちを見捨てるわけには参りません。オルロワに行くなんて無理です」
「何をおっしゃっているのですか。そんなこと、そこにいる男を領主にして、孤児院にお金を出させれば全て解決します。
全くヘタレたガキだこと。自分の領地を自分でどうにもできないとは」
クリスタがチッと舌打ちした。
「ゲオルグとやら、オルロワがあなたの後ろ盾となりましょう。領主になるからには弱者への救済を怠ってはなりませんよ」
「は・・はい・・」
「わたくしがハッパをかけるからには、とっとと領地問題に片を付けなさい。あなたにはアクアーリアの取り込みなどやってもらうことが、他にもたくさんありますからね」
クリスタが恐ろしい形相で、ゲオルグに念を押した。
身分的にはビストニアの次期領主であるゲオルグの方が上のはずなのに、まるで自分の手下のようだ。
「クリスタ、あまりゲオルグに無理を言わないでやってくださいね」
「無理など言っておりません。それよりもアストリット様こそ、やるべきことを忘れてはいらっしゃいませんよね」
クリスタにじとっとした目で見られる。
ちょっと忘れかけてたかも・・・バレてるよ。
私は笑ってごまかす。
「ユーリウス様のことですか」
「ユーリウス殿下だと」
今まで私たちのやり取りを黙って聞いていたレイが立ち上がった。
「あんた、ユーリウス殿下の知り合いなのか?」
前世でね。
今世では会えるかどうかも微妙ですから。
だって私、長年の忠臣が迷うくらい見てくれも変わっちゃたみたいだし。
会えたとしてもユーリウスには、私が誰かわからないかもしれない。
これは大問題だよ!