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11、ビーチェの救出

 私は探索魔法でビーチェの魔力探索を行った。魔力の残滓を追っていくと、ビストニアの郊外にある倉庫群に辿り着いた。ここはビストニアとエターリアの中央とを結ぶ内陸水運の要所だ。

 私とゲオルグとレイと彼らの従者を含めた六人は今、その倉庫の上空をビーザムに乗ってクルクルと旋回している。


「ビーチェを拐って、どうするつもりなのでしょう」


「恐らくここから中央に連れ去って、こちらを強請る材料にするんだろうな。第一皇子派に鞍替えしろってことだ。ビストニア第二夫人の息子のミハイルは第一皇子派だ。アクアーリアの領主ヘルニコフが第二皇子派だってことを明言したから、あちらも焦ってるんだ」


レイが説明してくれた。


「ふむふむ、なるほど」


 犯人はビストニア第二夫人かその息子ミハイル、もしくはエターリア王家第一皇子ディートフリート及びその母親、王の正妻ペトロネラあたりが濃厚だということか。

 確か、前世ではビストニアの次期領主はミハイルだった。つまり私が動くことにより、歴史が変わる可能性がある。


「どうするべきか・・」


「悩むならやめておけ。リティは部外者だ。これ以上この件に関わらない方がいい」


 ゲオルグが別の意味に取って、私を止めた。

 私と彼の付き合いは長い。冒険者稼業を始めたばかりの頃は助けられてばかりだった。

私は彼を助けたいし、それで運命が変わり彼が領主になったとしても、ビストニアが悪い方向には行かないと、はっきり言えるだけの確信がある。

恐らくゲオルグならば、立派なビストニア領主になれるだろう。


「出てきたぞ」


倉庫に動きがあった。

鉄の重厚な扉が開き、中から人が数人、姿を現す。


「ミハイルの従者が数人いる。奴ら、どこへ行く気だ」


入り口には馬車が停められ、どこかへ移動しようとしていることがわかる。


「クロも三人いますね」


「闇の組織が本格的に関わってるってことか」


「それはどうでしょう。上の方はともかく、末端は金次第でどうにでもなる連中ですから」


「まるで知ってるような言い方だな」


それには答えない。曖昧に微笑みながら少し高度を落とした。

隠蔽魔法を使っているため、誘拐犯からこちらは見えない。


「ビーチェが出てきたら、敵を全員地面に縛り付ける魔法、グラビゾンを一発ぶちかまします。時空魔法回避の類の守護があると効かない可能性があるので、レイとゲオルグは黒魔道師達の動きに注意してください。従者の皆さんはビーチェの救出を最優先にお願いします」


「わかった」


「随分と慣れてるんだな」


 レイがいちいち私に対して引っかかる言い方をしてくる。疑っているのはわかるが、こんな時にやめて欲しい。


「これが終わったらお互い腹を割って話し合いましょう」


「ああ、もちろん。君の正体を知るのが楽しみだ」


 微笑みあうが、当然友好的にではない。

お互い食えないと思っているのがありありとわかる。


私は敵じゃないけどね。


 どこまで話すかは大問題だ。馬鹿正直に全部を話す気はないけれど、信じてもらうにはある程度は真実を話さなければいけないだろう。

しかし時には嘘や偽りも必要である。

 そうこう考えていると扉から縄で縛られたビーチェが連れ出されてきた。ビーチェの顔色は悪く、対照的に右目付近は赤く腫れ上がっていた。縛られた手首には血が滲んでいる。

その姿を見た瞬間、私の中で怒りのリミッターが弾け飛んだ。

私は隠蔽魔法を解き、犯人達の前に降り立つ。


「貴様、何だ?どこから来た」


突然現れた少女に彼らは戸惑っている。私は言葉を交わす時間すら与えず、前世で私が最も得意とした最強攻撃魔法を唱えた。


「光と水は混じり合い 大地へと制裁を科す ひるめ黒きまが御魂たましい 清め祓う眩き閃光により」


上空を真っ黒な雲が覆う。突然降り始めた土砂降りの雨に男達が戸惑う。


「アルカシア マダイン」


雷が複数に割れて犯人達を直撃した。

真っ黒焦げになった男達が地面に倒れ伏す。もちろん敵以外には当たらないようにしているので、ビーチェは無事だ。

呆然と立ち尽くす皆の視線を受けて、私はハッと我に還った。


さっき正体がバレないように気をつけようって思ってたとこなのに私のバカ、バカ!


自分の学習能力の無さに呆れ果てた。隠すとか、偽るとか、多分私には無理だ。カッとなったら突っ走って、全然成長していないではないか。

よくこんなんで女王やってられたなと自分でも思う。よっぽど周りの側近達が優秀だったのだろう。


「申し訳ございません。やりすぎですね」


「いや、君の実力が知れて良かったよ」


レイが引き攣った笑みを浮かべていた。






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