一つの終着地点『リナのお誕生日』(第一部完?)
今日は諸事情で沢山投稿しています。15話分一気に投稿したので、「フェルのおはなし」の回からお読みください。
十二月のある日の朝。
「リナ、お誕生日おめでとう!」
起きて早々、お母さんが私の部屋に飛び込んできた。
「あのさあ、そういうのってタイミングを見て、みんなで一緒にやったりしないの?」
「だって、早くリナの喜ぶ顔が見たかったんだもの」
咎める私にも、お母さんはニッコニコだ。
どっちの記念日だかわかったもんじゃない。
「たんぞーび?」
ベッドで寝ていた妖精の少女が、寝ぼけ眼で起き出してくる。
「誕生日よ。今日はリナが生まれた、記念すべき一日なの」
「ほえー。リナ、生まれたのか」
日付の概念があまりないのか、フェルは首をかしげている。
「そうよ。だから、いっぱいみんなで祝福してあげるの。フェルちゃんもよ」
「ん? おう! 生まれたリナを祝う! めでてえ!」
何もわからず手を上げて喜ぶフェル。幸せな子だ。
そう。今日は私の誕生日。
まあ、うちの母さんなんかは一日中ハッスルする日だ。
「モーニングプレゼントは、これよ!」
母さんが出してくれたのは、自分で編んだらしいスプルトーンのセーターだ。
まだ出してないソフトだけど、私が好きで遊んでるのを知ってたんだろう。
「ありがと、母さん。とっても嬉しいよ」
私は素直に喜びを表しておく事にした。
「まあまあ、愛しい我が子!」
そんなこんなで、私の騒がしい一日が始まった。
「リナ、おめでとう」
「リナねーちゃん、おめでとう」
「おめでとう!」
お父さん。
トビー君やカレンちゃん、トッポ君。
ガレナさん、サニアさん、メソラさん、フィオさん。
みんなが集まって、色んなプレゼントをくれた。
それから、一緒にゲームパーティだ。
マルオカーツやモム鉄、みんなではしゃげるゲームでいっぱい遊ぶ。
「なんで誕生日の私にビンボーなすりつけんのさ!」
「ははは、リナ、ゲームはゲームだ! 手加減などせん!」
ガレナさんは楽しそうにそう言っていた。
フェルは、遊ぶたびに毎回しんでた。
凄く嬉しい、楽しい会だった。
そうして、夕方。
子どもたちもそろそろ帰る時間で、パーティも終わりだ。
マルデアでは、誕生日に本人がスピーチをする習わしがある。
恥ずかしいけど、私もやらなきゃね。
「みんな、今日は集まってくれてありがとう。
私は今日、十七歳になりました。
ガレリーナ社も軌道に乗って、私生活はみんなと楽しくやれています。
ここまでやってこれたのも、ここに集まってくれたみんなが支えてくれたおかげです」
私はみんなへの感謝を告げて回った。まあ、無難な感じかな。
と、その時。
フェルクルの集団が家に入ってきた。
あの草場の老フェルクルだ。
「マルデア人の娘よ。これは我々から、いや、精霊様とフェルクルからのプレゼントじゃ」
老フェルクルは、そう言ってパチンと指を鳴らす。
出てきたのは、精霊様のハテナブロック。
「こ、こんなもの、どうするんですか?」
「これには、精霊様の力が込められておる。一つだけ、願いが叶うじゃろう。
じゃが、そなた自身が願ってはならぬ。そなたを想う誰かの願いでなくてはならぬのじゃ」
「私を想う、誰か……」
すると、フェルが前に出てきた。
「なら、わちしが願う! このパーティ、一つだけ足りない!」
彼女はそう言って、ブロックに手をかざす。
すると、ブロックは光り輝いた。
その光は居間の壁に向かい、そこにドアのような形を作り出す。
少し待っていると、そのドアの先に何かが開いた。
「なんだろう……」
覗き込んでみると、そこは……。
奈良の、実家の居間だった。
見慣れた畳の部屋。ちゃぶ台に、ふすま。
そして、座布団の上に座っているのは……。
「お、母さん?」
「……、リナ?」
母さんと、目が合った。
実家の奈良と、繋がってしまった。
地球の実家へと行く、通路が、できてしまった。
「お母さん……、お母さん!」
私は思わず、母さんに抱き着いた。
素敵なパーティだった。でも、奈良のお父さんとお母さんがいたら、もっと素敵だろうと思った。
「ああ、リナ……。ユウジ。会いたかった」
お母さんは、久々に会った程度だというのに、涙を流していた。
やっぱり、母の体は、とってもあったかかった。
十二月一日。前世の命日であり、今世の誕生日。
奈良の両親にとっては、悲しい日だ。
だから、喜ばせてあげたかった。
楽しいパーティに開いた小さな穴を、フェルが埋めてくれたんだ。
それから、私は奈良とマルデアの両親を交えて食事会をする事になった。
「うちのリナがお世話になって……」
「いえいえ、こちらこそうちのリナが……」
ママ同士が頭を下げ合っている。
なんだかもう、よくわからない。
でも、多分とっても幸せな光景だと思う。
だから、これでいいんだ。
それにしても。
「フェル、どうしてこんな願いしたの?」
私は、隣で飯を食らう妖精に問いかけた。
「リナと奈良のパパママは、好き合ってる。でも、ぜんぜん会えない。寂しい。
なら、いつでも会えるのが一番いい」
フェルはそう言って笑っていた。
「そっか。ありがと、フェル」
私の相棒は、本当に私のためを思ってくれていたんだ。
「リナ、泣かんでええよ」
「うん……。グス、ありがとう」
溢れ出す涙が止まらない私を、フェルはずっと横でついていてくれた。
ありがとう。私の相棒。
それから、マルデアの家と奈良の家のドアは、ずっと繋がったままになった。
お互いのパパやママたちがお互いの家を行き来し、私は毎日奈良の両親と顔を合わせる事になった。
「仕事終わったかい? お帰り。お疲れ、リナ」
「……、おかえり」
奈良の両親がそう言って、私の帰りをねぎらってくれる。
前世で果たせなかった事が、ついに実現できたのだ。
「うん、ただいま」
ただいまって言える相手がいる。
それは、とっても嬉しい事。
ありがとう。みんな。
私はきっとみんなのおかげで、ここまでこれたんだ。
だから、これからも、がんばるよ。
一気に投稿してごめんなさい。
ちょっと入院の可能性もあるので、もう一部の終わりまで出しておこうと思いました。
ここまで読んでくれたみんな。
ほんとにありがとう。
作者はもっと、リナの続きが書きたいけど、とりあえず定期連載がしんどいかもしれないので、ここを一旦終着地点とします。
完結にしないのは、もっとたくさん書きたいからです。
リナの物語を書けている事は、私にとって誇りであり、生きがいです。
だから、もっと書きたい。
リナはきっと、もっと色んな所へ旅をして、ゲームや遊び道具を輸入して、みんなを笑顔にするでしょう。
だから、今後も書けるなら続きをマイペースに書いていきます。
みんな、ありがとうね。
よかったら、感想欄に小説の感想を書いて行ってください。
リナやフェルたちの物語の話を、みなさんから聞かせて下さい。
それが何より私の力になります。
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