第三幕
風切り音がした。
「うわっ!ちょ、ちょっ、なーにこれー!」
茶髪の男の腕が、不自然に胴体に押し付けられていた。
「後ろに下がってください、龍野君!」
五乃色を見ると左手をぎゅっと握り後ろに引いていた。
どうやら、五乃色が拘束しているらしい。
「ちょっと待って、お嬢さん!」
茶髪の男が叫んだ。
「これ、お嬢さんがやってるの?え、そんなの聞いてないんだけど、ただの女子中学生って聞いてたんだけど。ていうか、なんで縄ほどけてるの?意味わかんないし」
「静かにして下さい。今あなたの生殺与奪は私が握っています。それを理解した上で、私の質問にだけ答えて下さい。それ以外であなたが話す権利はありません」
五乃色は静かに、冷たく言い放った。
その顔は、つい先ほどまであんなに明るく笑顔を見せていた人とは同じとは思えないほど、冷めた表情をしていた。
「まず一つ、あなたたちは一体何の目的で私たちを攫ったんですか。答えて下さい」
「えー、聞いてないよー。もうふざけんなよー、請負班のやつら。戻ったら殺していいか後で師匠に聞こう。そうしよう」
そんな五乃色のことを全く気にしない様子で、茶髪男は独り言を続けた。
「ホントさ~、一緒に来てた誘拐班も周りの隔離失敗して対象外のガキが増えちゃうしさ~。一度全員殺した方が良いんじゃないかなー。掃除だよ掃除。あ、誘拐班はさっき師匠が海に流してたなー。夕方じゃなくて殺せないから、生きたまま縛ったのを小舟に積み重ねて。珍しく怒ってたもんな。不手際とか大嫌いな人だもん、ありゃ仕方ないよねー。俺は師匠の為にガキを生かして捕まえたのが良かったのか助かったけど。あの人美学美学言ってるけど、単純に殺すの好きだしなー。ま、そんなつもり一切無かったんだけどね。ラッキーラッキー。ん、いやラッキーじゃないな。おかげさまで俺と師匠しかいないから、俺が準備に見張りに買い出しに料理と全部しなくちゃいけなくなったから全然ラッキーじゃない。あーなんかムカついてきちゃった。気付いたらスゲームカついてきちゃったよ。クソ、どうしてくれんのー。この怒りをぶつける相手がもう海の上じゃん。追いかけて殺すのも面倒だしー。俺はこのムカつきをどこにぶつけたらいいのー。ねえ、ねえ、ねえ!」
延々と続く男の独り言を、俺はぽかんと聞いてしまっていた。
なんだこの男。
縛られて、自分の身に危険が迫ってるってのに、全然気にしてねぇ。
怖い。
相手の男のことが全く理解出来ない。
異質なもの過ぎて怖い。
関わり合いになりたくない。
つい先ほどまで、自分を殴ったこの男とまた対峙することがあれば、今度は戦うと決めていたはずだった。
しかし、今はその覚悟すらどこかに消えてしまった。
それほどまでに、俺は、この男に恐怖してしまった。
「質問に答えて下さいって言いましたよね。こちらの話を聞かないともっとキツく締めますよ」
五乃色が茶髪男を睨んだ。
その言葉に、ムカつく、ムカつくと言い続けていた男がピタリと言葉を止めた。
そして、ニタリと笑い、五乃色に向けて口を開いた。
「・・・お嬢ちゃんさー、それなりに耐性があるのかもだけど、それ、裏社会じゃ通用しないよー?特に、俺みたいな殺し屋にはね。やるならさー、言う前にやらないと。それが俺らなの。わざわざ、一回忠告してくれるとか、なんて優しくてあまーいあまーいお嬢ちゃんなの。そんな脅しにもならない飴文句、舐めるに決まってんじゃーん。きゃはは。というか、俺ならもう殺してるね。自分に害をなした相手だよ?せっかく先手を取れたのに、もったいない。ほら、今からでも遅くないよ?俺今動けないよ?チャンスチャンス大チャーンス!きゃーお助けー」
体を揺らしてキャーキャー言い続ける男に対して、五乃色は、固まっていた。
自分とは相いれない感性を持つ男に、動揺していた。
「あっれー、やらないの?そうなの?なんだーつまーんなーいのー」
固まってしまった五乃色に対して、男は興味を無くしたように言った。
「じゃあ、またおねんねしましょうかー」
そう言うと男は、糸による拘束を一瞬で抜け、五乃色を殴り飛ばしていた。
「がっは」
五乃色は腹を殴られ、吹き飛ばされ、後ろの柱に思いっきり背中を打ちつけてしまった。
そして、そのままズルズルと力無く、その場に座り込んだ。
「五乃色!」
俺の体はそこでようやく動いた。
五乃色に駆け寄り、抱きかかえた。
「五乃色!おい返事をしろ!五乃色!」
俺は必死に五乃色に呼びかけた。
しかし、返事は無かった。
五乃色は、息はしているが、完全に気絶していた。
「ふっふーん。どの状態からでも縄抜けできるようになれって師匠に言われたからねー。俺を拘束とかむっりに決まってるっしょ。って、あれ?やりすぎた?おーい対象外A君、お嬢ちゃん生きてるよね?殺しちゃってたら、俺が師匠に殺されちゃうから困るんだけど。あ、あと俺のせっかくの準備が無駄に終わっちゃうから困るんだけどー」
茶髪男は俺に話しかけてきた。
のんきに、とても、のんきに。
「というか、君頑丈だね~。俺殺される直前まで意識失うように殴ったと思ったんだけどな~。俺もまだまだってところか。また一つ、自分の未熟さを知れたぜ。ありがとう対象外A君!」
親指を立てながら笑ってきやがった。
俺は五乃色を横に寝かせるとゆっくり立ち上がり、歩き出した。
「ん、おやおや?どうしたのー?どこ行くのー?」
無視する。
俺は、鞄が置いてある場所に着くと、そこから、細長い袋を拾った。
「ねえねえねえ、何してるの?おーい」
無視する。
俺はその袋を開けて、ある物を取り出した。
「ねえ、こっちからじゃ影になってて見えないんですけどー。無視されると俺泣いちゃうよー。えーん、えーん。人を泣かせるとか酷いぞー」
「うるせぇよ、クソ野郎」
俺は振り向き。
「お前だけは、許さない」
手に握ったものを、竹刀を、茶髪男に向けて構え。
「絶対に」
茶髪男を、睨みつけた。
「お前は俺が、斬り伏せる」
へぇ、と茶髪男は少し驚いたように俺を見た。
「意外や意外。さっきまでプルプル震える仔犬ちゃんだったのに、少しはマシになったじゃーん。どしたのどしたの?もしかして、お嬢ちゃんがやられちゃって怒ったとか?なにそれ正義マーン、気持ちワリー」
そう、俺はこいつにキレていた。
しかし、それと同じくらい、自分自身に対してもキレていた。
こいつが現れて、俺はこいつに恐怖した。
朝の時のように、震えて、動けなくなった。
でも、五乃色は違った。
すぐに動いて、俺に下がるように言った。
俺を、守ろうとした。
いや、守ってくれた。
俺はそれに甘えた。
甘えて、ただただ、二人のやり取りを座って見ていた。
五乃色が殴り飛ばされるまで。
情けない。
なんて情けない奴なんだ。
朝も動けず、突然だったからと、昔を思い出したからと言い訳をして、次こそはと思っていても、また動けなくて。
助けようとした相手に守られた。
なにが困ってるやつは助ける、だ。
全然出来てねぇじゃねぇか。
ムカつく。
これじゃ前と同じじゃねぇか。
俺自身に腹が立つ。
そんなことでは五乃色を守れない。
助けられない。
なら、今から、俺は理想とした俺になろう。
どんな恐怖にも立ち向かえる奴になろう。
助けたい人を、助けられる奴になろう。
今度は五乃色を、守れるように。
五乃色のあの笑顔を、守れるように。
そのために、この目の前のへらへらした男を倒す!
フー、と息を吐いた。
相手の動きに集中する。
「ちょっと―、無視されるのが一番嫌いなんですけどー。俺怒っちゃうよー。でもでも、俺が無視するのはいいんだけどね。わーお、俺ってば自分勝手。そんな俺も好き!」
茶髪男は自分を抱きしめクネクネしていた。
変な動きだ。
しかし、油断はしない。
心は乱さない。
俺は、先ほどの、五乃色の拘束をこいつが抜けた時のことを思い出す。
速い身のこなし。
そこから繰り出される重い一撃。
俺の体が受けたこいつからの痛みが、その重さを教えてくれた。
だが、大丈夫。
こいつの抜ける動きはかろうじて見えた。
見えるのであればきっと反応できる。
油断しなければ大丈夫。
相手を観察し、動きの始まりを感じろ。
そうすれば、相手の攻撃なんて当たらない。
剣道を始めた7歳の時に言われた、父ちゃんの言葉を思い出す。
その言葉を初めて聞いた時は何言ってんだと思ったが、剣道を学び始めてから2年後、確かに相手の次の動きの始まりを感じる瞬間があった。
その試合は感じれただけで、体が反応できずに負けてしまったが。
それから、俺は、相手の動きを感じることに注力した。
反応できるように、練習も積んだ。
1年後、動きを感じて反応できるようになってきたが、フェイントによく引っかかるようになってしまった。
だから、本物の剣の動きの始まりと、フェイントを見分けられるように、今までの練習に加えさらなる特訓を自分に課した。
そして、初めて動きの始まりを感じられようになってから3年後、小6の時に出た全国小学生大会では、俺は相手に一本も取られず、優勝した。
あの時は、もう俺が最強だと思ったが、中学に入ってからはまだまだ上がいて驚いた。
動作が速すぎて反応できない先輩とか、フェイントを何重にも巡らして、どれが本物か巧みに隠す同級生とか。
っと、今はそんなことはいい。
問題はコイツの動きに反応できるかどうかだ。
さっきの速さなら集中力さえ切らさなければギリギリ対応できる。
問題はこいつがまだ本気じゃないってところか。
「もー、ずっと黙ってるつもりなら、黙るの手伝ってあげるよ。対象外A君、ダンマリでつまんないし。お嬢ちゃんと一緒に、眠らせてあ・げ・る」
くる。
茶髪男との距離は5mほどあった。
それを一瞬で詰めてきた。
そしてまた、腹をめがけて拳が襲いくる。
俺はそれを身をひねって躱し、そのまま横薙ぎで相手の側頭部を狙う。
手加減なし、全力で打ち込む。
しかし、茶髪男は上半身を反らしてそれを躱す。
奴はそのまま、反らした勢いのままバク中をして再び距離を取った。
俺はまた、構え直した。
「ひゅ~っ。たっまげたー。うん、これはほんとに驚いたよー。よく俺の動きに合わせられたねー。え、もしかして、ただの男子中学生じゃない感じ?ただ俺に勝てるっていう痛い妄想に憑りつかれた痛い子だと思ってたんだけど」
茶髪男はわざとらしく目を丸くしていた。
「俺は、ただ普通に生きて暮らしてるだけの、剣道がちょっと強いだけの中学生だよ」
相手から目を離さず答えた。
俺はさっきの一撃で決めるつもりだった。
いや、決めないといけなかった。
こいつが一番油断している一撃目が、一番倒すチャンスがあったから。
さすがに、こいつが本気を出したら俺は勝てないだろう。
それぐらい、俺にだってわかる。
「そっかそっかー。油断しちゃったな~。竹刀持ってるのはわかってたけど、朝の様子じゃ何もできないと思って舐めちゃってたよ。こんな面倒なことになるなら、準備じゃなくて先に君らの荷物海に捨てれば良かったねー。お嬢ちゃんのあの糸もどうせ鞄の中にあったんでしょ?あーあ、失敗失敗」
茶髪男は首を振った。
「ま、いっか。久々に少し運動しよう。最近師匠も稽古つけてくれないから、つまんなかったんだよねー」
だから、と男は言った。
「少しは粘ってね?対象外A君」
茶髪男が視界から消えた。
「なっ」
俺は驚いた。
消えた?
どこだ?
いや、落ち着け。
心を乱すな。乱したら負け・・・!
右側からプレッシャーを感じた。
俺はとっさにその場にしゃがみ込む。
瞬間上から拳が空を切る音がする。
危ねぇ、と思った時には、俺は吹き飛ばされていた。
俺は地面を勢いよく転がり、コンテナにぶつかる。
すぐに視線を前に向けると茶髪男はすぐ目の前に迫っていた。
右拳が目の前にくる。
首を横にずらして躱す。
間髪入れず脇腹を左足で蹴られる。
「がっ」
息が一瞬止まった。
その隙をついてもう一度右拳が顔面に迫ってくる。
俺はなんとか竹刀でいなして拳を逸らし、横に転がって距離を取った。
「ん~、こんなものなのか~。ちょーっと本気出したらもう付いてこれないなんて残念、本当に残念」
茶髪男は追撃してくることもなく、その場で露骨に肩を竦めた。
「まぁ、所詮素人だしねー。しょうがないかー。久々に運動出来ると思ったのになー」
「おいおい、ちょっと攻め込めただけで随分な評価だな」
虚勢を張った。
実際は一杯一杯だ。
動きを見失ったのだ。
実力差はかなりある。
改めて、それを突き付けられた。
「あれれ、強がっちゃって、かーわいいっ。しょうがないなー、お兄さんがもう少し付き合ってあげるね。俺優しい!」
また体をくねらせていた。
隙だらけではあるが、無策で飛び込むわけにはいかない。
「お前、なんで殺し屋なんてやってるんだよ」
俺は時間稼ぎのために聞いた。
今は少しでも考える時間が欲しい。
「なにー、お説教でもするの?俺初めて雑魚にお説教されるかも。やだ、初体験」
まともな会話になりゃしない。
まぁ、わかっていたことだ。
だが、俺はもう一度聞いた。
「答えろよ。なんでだ」
「なんでって言われてもなー。特に何かあったってわけじゃないしなー。うーん、そうだ!俺の家族を殺した奴を探す為に殺し屋してるとかどう?ちょっと深みが出たと思わないかい、対象外A君」
びしっと俺を指さした。
正直知るかよって感じだが、まだ、話を終わらせる訳にはいかない。
「要するに理由はないってことか」
「そうなんだよねー、俺がたまたま人を殺すのが好きで、たまたま捕まらずにいて、たまたま師匠に拾われただけだからさー。人が殺せればなんでもいいんだよねー」
「お前、なんでそんなに人殺しが好きなんだよ」
「やだー、俺に興味津々じゃん。俺のこと好きなの?でも残念、君はこれから死ぬ運命にある。だからさよならしないといけないんだ。バーイバーイ」
人をイラつかせる天才かなにかかこいつ。
のんきに手振ってきやがる。
いや、落ち着け。
静めろ。
あれは挑発だ。
乗ったら終わる。
「あれー、感動のさよならなのに手を振りかえしてくれないのかー。君、本当につまんないなー。まぁせっかく興味示してくれたし、しょうがないなー。ちょっと真面目に答えてあげるかー。ファンサービスってやつだ」
やれやれとため息をついて、茶髪男は話し出した。
「えーと、なんで人殺しが好きかだったけ。そんなの楽しいからに決まってるじゃん。君、ブロックとか粘土とかで作ったものを壊したことない?俺は何か形あるもの壊すのが楽しくてね、最初はそれこそおもちゃの人形だったかな。鋏片手にザックンザックン、あの感触と昂揚感は今でも忘れられないねー。それからどんどんいろんなものを壊していったなー。その感覚を楽しむためにね。そしてついには動物にも手を出した。あれは革命だったね。物にはない熱が失われていく感覚、たまらない背徳感、今までの比じゃない興奮を覚えたよ。そこで気付いちゃったんだよ。人を殺したらどうなるんだろうって。動物だけでもこんなに興奮するのに人だなんて、俺は興奮で死ぬんじゃないかって。だから、試した。隣に住んでた一家でね。とても仲の良い一家で、奥さんは外で会えば俺にも挨拶してくれる人で、旦那さんは会社員で、確か地区のまとめ役もやってるとかだったかな。子どもも二人いてね、お兄ちゃんはスポーツが得意で、妹はまだ学校には行かないぐらいの年だった。いやー最高だったね。まずは家に忍び込んで奥さんを縛って目の前で妹ちゃんを殺した。二人とも泣いてたねー。口塞いでたからなんて言ってたかわからないけど、きっとお互いに呼び合ってたんじゃないかな。いや、それとも助けでも求めてたのかもしれないね。ははっ。で、次に奥さんをじっくり時間をかけて殺した。お兄ちゃんと旦那さんがいなくて暇だったからね。少しずつ少しずつナイフで刺していって、ふふっ、あの痛みに悶える表情ゾクゾクしたよ。そこからどんどん生気が無くなっていくのはたまらなかったなぁ。で、次はお兄ちゃんだよ。リビングで二人の死体を見つけて取り乱してるところを後ろからお兄ちゃんのトロフィーでズガーンと頭にね。ナイフとかと違って鈍器のヌチャってめり込む感覚、あれは初めての経験だったねぇ。えーと、最後は旦那さん。旦那さんはね、殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殺した。いやね、素手で殺すってのはどんな感じなんだろうっていう興味からだったんだけど、もうこれが最高なのよ。直に伝わる死んでいく感触、初めての感覚だった。たぶんあの時恍惚の表情でも浮かべてたんじゃないかな。俺が素手第一主義になったのはそれからだったねー。まぁ、必要なら物を使うけどね。確実に殺しの快感を得ないとだからね。っと、話がずれちゃったね。要するに、なんで殺しが好きかっていうと、楽しいから、快感だからって感じかな。どう?どう?俺のこと知れて嬉しい?いいんだよ、あなたのことが知れてハッピー!って叫んでも。俺が許可する!」
茶髪男は笑顔で言った。
悪びれる素振りも一切見せず、ただただ楽しそうに言った。
俺は、吐きそうだった。
奴の話の邪悪さに当てられて、気持ちが悪かった。
時間稼ぎで聞いただけだったのだが、猛烈に後悔した。
考えなどまとまるはず無かった。
奴の話は、俺に多大な精神的ダメージを与えていた。
「お前、一体なんなんだよ」
「うん?どういうこと?」
奴は小首をかしげた。
その態度に俺はたまらず叫んだ。
「なんで、なんでそんなへらへら笑いながら殺しの話ができるんだよ!なんでそんなに人殺しを楽しめるんだよ!理解出来ねぇ!」
「えー、聞かれたから話しただけなのになんて理不尽なんでしょう。それに、人が何に楽しみを見出すかなんて個人の勝手じゃん。ゲームが楽しい、サッカーが楽しい、読書が楽しい、いじめが楽しい、蹴落とすのが楽しい、嵌めるのが楽しい、騙すのが楽しい、殴るのが楽しい、殺すのが楽しい。みーんな一緒。ただそこには人が人を縛るルールに触れるか触れないかの違いしかない。あっ、もしかして君って性善説信じてるおバカちゃんなの?残念でした。人は根っからの悪だよ。ただそれを表に出したら別の悪に潰されちゃうから皆隠してるだけ。早く気付いた方が良いよ。人生の先輩からのアドバイス」
「はっ、そんなことわかってるよ。人の本性は悪だ。それは俺だってわかってる」
人の性が善なら、俺は妹を見捨てなんかしなかった。
「そかそか。なら俺を責めるべきじゃないってわかるよね」
「いや、責める。お前は責められないといけないんだよ。俺は人として、お前が許せない。確かに人の本性は悪、それは事実だと思う。根が善ならこの世に犯罪なんて起こらないだろう。根が悪だから、人は大なり小なり間違いを犯す。それでも、人は犯してしまった罪を悔い、省みて、受け入れ、正しくなろうとする。善になろうとする」
俺は茶髪男を真っ直ぐ見据えた。
「善でいようとするのが人だ。己の悪に、他人の悪に負けないために。間違えることはあっても、人は善でいようとするし、善でいることを諦めない。だからこそ、人は人でいられるんだよ。お前のように悪に自ら進んで落ち、本能のままに生き、後悔も反省もしない奴を、俺は人とは思えない。はっきりと言ってやる。お前はおかしい」
俺は竹刀を突き付けた。
「俺はお前を嫌悪する」
守りたい人を守るため、少年は立ち向かう。
というわけで、茶髪男大活躍!
モブからの昇格で嬉しかったんですかね。
やりたい放題やってくれました。
こいつの言動はネジが外れているので、皆さん絶対に真似しないで下さいね。
私との約束だぞ。
ちなみに、途中の一番長いセリフがR15にしてある7割の理由です。
さて、今日の更新はここまでになります。
続きはまた明日、同じ時間に二本投稿します。
それでは、また明日お会いしましょう。