幕間1
朝、ある学園、学園長室にて――――
「何だと!瑠璃様が攫われたというのは本当か!」
「えぇ。通学中に、と警護の者から」
「どういうことだ?警護の者がいたならそうやすやすと攫われるわけがないだろう」
「誘拐犯の中に手練れがいたそうです。白スーツにピエロのような化粧をしたおかしなやつだったそうで。警護に着いていた二人のうち一人は顔に大やけどを負い、知らせてきたもう一人も強烈な電気により気絶してしまい、気付いた時には誘拐犯はすでに去った後だったとのこと。今は二人とも治療中で、命に別状は無いようです」
「一体誰の差し金だ?というか、瑠璃様は無事なのか?」
「どうやらあの者たちの差し金のようです。先程問い合わせました。実行犯は海外の者ということ以外はまだ不明です。今、他の者が捜索しています」
「すぐに見つけ出せ。いや、俺たちも動くぞ山城。俺たちが探して助け出すほうが早い」
「それはやめたほうが良いです、海原」
「なぜだ!」
「誘拐された場面に学校の生徒がいたらしいんです。その生徒の所在が現在確認できていないため、一緒に攫われている可能性が高いです。私たちを見られるのはまずいですよ」
「なんだと、瑠璃様だけでなく、うちの学園の可愛い生徒にまで手を出したのか?許さん!今すぐ見つけ出して殺してやる」
「だから、見つかるわけにいかないのだから私たちは動けませんよ」
「関係あるか、そんなこと。緊急事態だ。主も許してくれよう!」
「今、他の者が動いているからじっとしていろというのがなぜわからなんですか。あなたが動くと周りを巻き込むから止めているんです。あなただってわかっているでしょう」
「しかし!」
「あのー、良ければ私が行きましょうか?」
「!木野栖先生、いつからそこにいたんです?」
「最初からいましたよ!私のクラスの子が攫われたって山城先生が呼び出したんじゃないですか!」
「「気付かなかった(です)」」
「二人して酷いです!」
「すまなかった。で、先生が行くとはどういうことだ?」
「ああ、そうです。先程のお話の、そのピエロの犯人、私聞いたことがあるんですよ。海外で有名な殺し屋です。変なこだわりを持っていて、毎度毎度同じようなところに対象を連れていって殺す奴なので、あいつに聞けばすぐわかります」
「なんですって!」
「それは本当か!」
「はい、確かです。でも、ピエロと聞いて安心しました。あいつは夕方にしか殺さない変な奴なので、二人はまだ無事ですよ」
「なんと、そこまで知っているのか」
「昔取った杵柄ですよ。誇れるようなものじゃないですけどね。お仲間さんたちも良かったですね。夕方だったら二人とも容赦なく殺されてましたよ」
「そんなに強いのか、そのピエロ」
「私たちにまで名が知られていたってよっぽどじゃないとありえませんよ。良くも悪くも、いや、悪いだけの閉塞した組織だったんですから」
「それは、確かにそうですね。あなたたちから聞いて、実際に手を合わせた身としては。さて、どうやら部下の手には余る様子。そういうことでしたら、私はお任せするのがよろしいと思いますが?」
「そうだな。恥を忍んでお願い申す」
「任せて下さい。すぐ二人に連絡しますね。どうせ暇してるでしょうから」
「ああ、ちょっと待て。先生がいるのが二人にばれるのはどうなのだ?」
「大丈夫ですよ。人一倍影の薄い私が本気で気配を消せば近くに行ってもばれないです。それでは行ってきますね!あ、ちゃんと有給にしといてくださいねー!」
「・・・あいつらがいてくれて、今回は助かったな」
「そうですね。あの方たちと初めてお会いしたときは、なんと面倒なことに巻き込まれたものだと思いましたが」
「しかし、海外、か」
「盲点でしたね。まさかあいつらがそちらの方に手を回すとは思っていませんでした。あちらに確認をしてようやく干渉が発覚したのですから。正直、舐めていました」
「これからはもっと警護を厳重にしなければな。天野と地ヶ居に連絡は?」
「すでに」
「では、一度四人で集まるか。地ヶ居の奴に小言を言われるのは、今回は甘んじて受け入れよう」
「そうですね。ただ、今回の件、彼らが動くので余程のことが無い限りは大丈夫だとは思うのですが、一つ心配事が」
「ん?なんだ?」
「攫われたもう一人の生徒、あの龍野慎治なんですよ」
「なんだと」
「悪い子ではないのですが、少々無茶をし過ぎるところがあるので、今回は無事に終わると良いのですが」
慎治と瑠璃が攫われた後、暗い部屋で密談する妖しい人影。
彼らは一体何者なのか。
昔妄想していた時、山城さんはござる口調でした。
今回書くにあたって、なんか違うなとなり、没になりました。
というか、何故当時はござるでいけると思っていたのか。
さて、今日も2本投稿となります。
基本的には毎日2本投稿です。
時間は夕方頃を予定しています。
それでは、第二幕でお会いしましょう。