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第1話 あなたのスキルは【魔力決済】です


「ブラッド第1王子のスキルは――【聖剣使い】でございます!」


「「「おおおおお!」」」


 大神官の言葉に、聖堂の中がざわっと沸き立つ。


 僕の兄であり、マクス家の長男であるブラッド・マクスが王家の人間に相応しいスキルを得たからだ。


 そして聖堂の上空に1本の聖剣が現れると、ブラッドの下へと降りてくる。


 彼はそれを掴むと、自らに注目する神官や騎士たちに高らかに掲げて見せた。



 ――このペイポル王国では代々、王位継承権が与えられる者は〝祝福の儀式〟を受ける決まりとなっている。


 〝祝福の儀式〟によって神から特別なスキルを授けられ、その力を以て国を守る力とするのだ。


 だから王子や姫が複数名いた場合、授けられたスキルが最も強力であると判断された者が王位継承者となる。


 今、この国の王位継承権を持つ者は2人。


 まず僕の兄であり、マクス家長男のブラッド・マクス。


 それから次男の僕、アーロン・マクスの2人だ。


 ブラッドが18歳で、僕は16歳。


 どちらも十分に王位を告げる歳になった。


 そしていよいよ、僕が〝祝福の儀式〟を受ける番がやってくる。


「覚悟はよいですかな、アーロン第2王子?」


「は、はい……!」


 緊張の一瞬。


 国王である父上と王妃である母上も、神妙な面持ちで僕を見守っている。


 緊迫した空気の中、大神官が両手を合わせて祈りを捧げると――彼の前に金色の文字が浮かび上がった。


「おお、出ましたぞ! アーロン第2王子のスキルは――スキル……は……」


「ど、どうなんですか!? いったいなにが出たんです!?」


 居ても立ってもいられず、僕は大神官に尋ねる。


 だが大神官は、まるで幻でも見ているかのように何度も目をこすり、酷く困惑した表情を作る。


「な……なんだこれは……? 私は幻覚でも見ているのか……?」


「あ、あの……大神官様……?」


「……アーロン第2王子、どうか気をしっかりもって聞いて頂きたい。あなたのスキルは……ま、【魔力決済】……です……」


 ――シン、と聖堂の中の空気が凍り付いた。


 次の瞬間、聖堂の上空に〝小さい板状の物体〟が現れる。


 それは僕の手元までゆっくり降りてくると、



『ポポン♪ こんにちは。言語と、国または地域の選択をして下さい。初期設定が終わりましたら、このタブレットは【魔力決済】にお使い頂けます』



 片面が鮮やかに点灯し、軽やかな起動音と共に女性の声で話しかけてきた。


 僕は頭が真っ白になって2、3度瞬きする。


「ま、【魔力決済】……!? 【魔力決済】ってなんですか!? これは、どのようなスキルなんですか!?」


「さ、さあ……この大神官にもまったくわかりません……。ですが、戦いに使えるスキルではないかと……。国を守る力があるとは、思えませぬ……」


 ――僕は、崩れるように膝をついた。


 僕自身を含め、この場にいた全員がハッキリと思ったはずだ。


 これは――外れスキル(・・・・・)だと。


 話に聞いたことはある。


 何百年かに1度、王家の中に全く役に立たない謎のスキルを授けられてしまう者が現れるという。


 その役立たずのスキルは外れスキルと呼ばれ、確実に王位を継承することはできなくなる。


 それどころか、王家の恥として扱われたこともあるようだ。


 ――なんてことだ。


 よりにもよって、僕がその外れスキルを引いてしまったんだ。


 茫然と父上たちの方を向くと、父上はがっくりと頭を垂れて額を抑え、母上はまるでこの世の終わりだと言わんばかりに絶望に染まった顔をしていた。


「王位継承者は決まりだな、オラ退けよ」


 いきなり、僕は背中を蹴り付けられる。


 そして床に倒れると、長男であるブラッドが勝ち誇った笑みで僕を見下してきた。


「に、兄さん……」


「残念だったなぁ、外れスキル野郎。王位継承権は俺がもらうぜ。恨むなら神様を恨むんだな、ヒャハハハ!」


 ブラッドは僕の髪を乱雑に掴むと、下卑た笑みを浮かべる顔をぐっと近づけてくる。


「俺は元々お前が嫌いだったんだよ。腕っぷしもないくせに、いい子ちゃんぶってヘラヘラしやがって。兄貴の方が有能で偉大だってわかったか? あん?」


「…………」


「親父! 王位は俺が継がせてもらうぜ! 文句あるかぁ!?」


 父上はしばし沈黙した後、


「……よかろう。ペイポル王国の次期国王は、ブラッド・マクス第1王子とする。他の者たちも異論ないな」


 父上の言葉に異を唱える者は、誰もいなかった。


 この場で僕を擁護してくれるものは、1人もいなかったのだ。


 そう、母上でさえも。


 そんな様子を見て、再びブラッドはこちらを向く。


「そんじゃあ、次期国王として最初の命令だ。アーロン・マクス、てめえをこの国から永久追放する。外れスキルの役立たずが、その面を2度と俺に見せるな! わかったか、ヒャハハ!」


 ――酷い。


 こんな、こんなのってあるか。


 あんまりだ。


 すがるような気持ちで父上たちを見たが、決して僕を助けようとはしてくれなかった。



 そして、今日この日を以て僕は王位継承権を剥奪され、ペイポル王国から永久追放となった。





『――言語と地域を確認。使用者(マスター)の氏名、アーロン・マクスを確認。【魔力決済】の初期設定を完了しました。これより、〈魔力ペイ〉をご利用頂けます』




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[良い点] 魔力ペイの発想が面白いです(⑉• •⑉) どんどん強くなってアップデート機能解放して欲しい…! [一言] もっと更新してくださいー!!
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