25. 心地の良い時間だった
久しぶりの朝比奈さんとの休日。
彼女は『一週間記念』と言ってデートに行きたがっていたけれど、寝起きの時に二日酔いで具合が悪そうだったので、外出は控えることにした。
たまには家でゆっくりするのも悪くない。
俗に言う『お家デート』だ。
「と言っても、やれることは少ないのよねぇ」
何をしようかしらと、朝比奈さんはテレビを見ながら呟いた。
今は昼に近い時間帯で、やっている番組はどれも私の興味には程遠いものばかり。
それは朝比奈さんも同じだったらしく、その目はつまらなそうにしていた。
「梓ちゃんは、何か見たい番組とかある? 映画とか興味あるなら、朝倉家に頼んで借りて来てもらいましょうか?」
「アパートにはテレビが無かったので、どの番組が面白いのかわかりませんね。映画も同じです」
「それならゲームは……まぁやっていないわよね」
「御察しの通りです」
とにかく無駄使いはしないようにと節約をしてきた私だ。
電気代の掛かるテレビは見ないし、それと同じでゲーム機器も持っていない。買おうともしてこなかった。それをする暇は無かったから。
「ゲームに興味はあります。クラスメイトがその話題で盛り上がっていたのを、何度も聞いていますから」
「今は何も持っていないから遊べないけれど、次のために買っておきましょうか」
「お金は私が──」
「半分よ。私も遊ぶからね」
「……わかりました。ありがとうございます」
朝比奈さんのことだ。今回も全部払うって言い出すのかと思ったけれど、高級レストランで話したことを覚えてくれていたらしい。
二人で遊ぶから、半分こ。
一つのことを二人で共有するのって、これが初めてかも。
「……ふふっ、可愛い」
なんだ急に。褒めたって何も出ないし、全額負担は譲らないぞ。
訝しげな視線を向けると、朝比奈さんは「気付いていないの?」と言ってきた。
……気付いていないって、何が? 私、何か変なことをしたかな?
「梓ちゃんって、嬉しくなると体が揺れるのよ。その動きが小動物みたいに可愛くて、ずっと愛でていたくなるわ」
「…………気付きませんでした」
「癖は自覚しづらいから、わからないのも無理はないわ……うふふ、梓ちゃんの癖を私が最初に見つけた……くふふっ」
怪しいから、その変な笑い方をやめてほしい……って、まさかこれが朝比奈さんの癖なのかな?
いや、私限定で気持ち悪いだけか。
「これからもっと、梓ちゃんが見せる癖を楽しめるなんて、本当に最高だわ」
「……むぅ、私だって、朝比奈さんの癖を見抜いてやるんですからね」
これはただの対抗心からきた言葉だ。
でも、朝比奈さんにとっては予想外の言葉だったようで……。
「楽しみにしているわ」
彼女は優しく微笑み、私の頭をポンポンッと優しく叩いてきた。
──温かい。
それだけの行為なのに、触られた所から熱が広がっていくみたいで……気が付けば私は、朝比奈さんのほうへ体を寄せていた。
「梓ちゃん?」
「……もう少し、このままで……」
ただの気休めだと理解しているけれど、今はこの温かさに包まれていたい。
ずっと欲しいと思っていて、やっと手が届いた心休める居場所だから。もう少しだけ、もう少しだけ……朝比奈さんに撫でて欲しいと思った。
「いいわよ。貴女が満足するまで、一緒に居ましょう」
朝比奈さんは文句を言わずに寄り添ってくれた。
その言葉通り、私が満足するまで、ずっと……。




