18. 心配になった
更新忘れてましたァァァァ(土下座)
無性に悲しくなった私は静かに視線を逸らし、話を変える。
「帰りは、紫乃さんに?」
「ええ、夜遅くに申し訳ないと思ったのですが、流石にあの人を運びながら歩くのは厳しく……案の定、マンションの入り口からここまで辿り着くのに二十分もかかってしまいました」
「ほんと、重ね重ねありがとうございます」
たとえ秘書だろうと、ここまでやる必要はない。
それなのに立花さんは最後まで付き合ってくれて、介抱のお手伝いまでしてくれた。本人は慣れていると言っていたけれど、同居人としてお礼を言わないわけにはいかない。
──本当に、知り合いにまで迷惑をかけて、あの人は。
朝比奈さんを見つめると、何かいい夢でも見ているのか「えへへ」と笑顔を浮かべていた。それがとても幸せそうで、少しだけ可愛いと思ってしまう。
「……なんか、意外だなぁ」
それは無意識に出た言葉だった。
ポツリと呟いたのは立花さんにも聞かれていて、不思議そうな顔をされた。
「あ、えっと……朝比奈さんは私の前だと、いつもかっこよくて優しい女性だったので……だから、あのように酔っ払った姿を見るのは、意外だなと」
私の思う朝比奈さんは、お金持ちで優しくて、何でも出来るかっこいい女性というイメージがあった。
でも、今の朝比奈さんにはどのイメージも当てはまらない。
自由奔放な姿は実年齢よりも若そうに見える。
大げさに言ってしまえば子供みたいだ。
「社長は、貴女の前だけでは理想の女性でありたかったのでしょう。……誰も、大切な人の前で欠点を出そうとは思いませんからね」
その言葉から私は察する。
立花さんは私達の関係を知っている、と。
「そう警戒しないでください。私は誰かの恋愛事に何かを言うつもりはありません。社長が選んだ相手ならば、むしろ応援しましょう」
「立花さんは、女同士はおかしいとは思わないのですか?」
「特殊ではある。それが世間の共通認識でしょう。しかし、恋愛は自由です。誰を選ぼうが、誰を愛そうが、その人次第でしょう。……特に、朝比奈社長は昔、っ」
立花さんは、そこで言葉を区切った。
「朝比奈さんは、何です?」
「…………いえ、これは私が勝手に言っていいことではありませんね。私も酔いが回っているようです。今日のところは帰ります。失礼しました」
失言だったのか、立花さんはそそくさと荷物を纏めて立ち上がった。
よく見ると、彼女も結構飲んでいたのか足元がふらついている。朝倉さんはもう帰っているだろうし、徒歩で帰るつもりなのかな。
時計の針は十一時を指している。女性が一人で歩くのは危険な時間帯だ。
過去に被害にあった私だから、余計にそう思ってしまう。
「あのっ!」
だから、咄嗟に声をかけてしまった。
「良ければ、泊まっていきませんか?」
「……ですが、ご迷惑では?」
「私は朝比奈さんと寝ているので、客室は空いています。多分、家政婦さんが綺麗にしてくれているので、問題なく泊まれると思います。このまま夜道を出歩くより安全ですし、もし立花さんに何かあれば、朝比奈さんも困ると思いますから……」
「心配してくれるのですか?」
初対面だとしても、朝比奈さんにとっては大切な仕事仲間だ。
あんなだらしない姿を見せられる相手なのだから、信頼しているんだと思う。秘書として朝比奈さんを支えてくれている人だし、立花さんの身に何かあれば困る。
「……ありがとうございます。では、お言葉に甘えてさせていただきます」
「はい。客室はこっちです」
立花さんを案内して、客人用の部屋の中に入る。
ちゃんと掃除が行き届いていることを確認して、一先ずは安心した。
「私も社長も明日は休みなので、ゆっくり休ませていただきます。梓さんは……」
「明日は土曜日だから、私も学校は休みです。なので、気が済むまでゆっくりしていってください。……あ、お風呂はどうしますか? まだ沸かしていないので、少しだけ待ってもらうことになりますけど」
「いえ、今はもう休むことにします。朝にシャワーだけでも貸していただけますか?」
「ご自由にどうぞ。バスタオルも勝手に使ってください。お洋服は洗濯しておきましょうか?」
「それでは、お願いします」
立花さんはその場でスーツを脱いで、下着姿になった。
朝比奈さんもそうだけれど、彼女もかなりスタイルがいい。
出るところは出て、締まるところはちゃんと締まっている。
やっぱり、健康に気をつけていると体も綺麗になるんだな……。
っと、ジロジロと見過ぎた。
「お預かりします。……では、おやすみなさい」
「ええ、おやすみなさい」




