気付かぬ狂い
ちなみに主人公は義務教育を終えた時点で、上の中位の成績でした。
神国アラミウスは、魔法の面においては世界トップレベルです。
目が覚める。首が痛い、しかし自然と苦ではなかった。
「やっぱり、夢ではなかったか。」
ギュルルルル
「腹が減った。昨日のラビー取っとけばよかったな。」
慎重に降り、枯葉に足を付ける。
「さて、と。何をしようかな。殺す?それもいいが、とりあえず狩ろう。」
まだ日は昇っていない。少し暗いのでラビーを見つけることが出来ても、上手く石を当てられない。
「クソが。」
スライムの核を踏みつぶす。命を奪ったという実感。心地がいい。
「魔法でも使うか。」
この世界では、学校に通っている生徒は大半が初級魔法を使うことが出来る。中には中級魔法をマスターする者もいるくらいだ。
本来魔法は詠唱を必要とするが、神国アラミウスでは、無詠唱の方法を確立しており、学校の卒業課題ともなっている。
ちなみに学校は15歳までが、義務教育となっている。
“アイス”
右手に魔力が集まり、普通の矢ほどの大きさの氷の矢が出来る。
命中する。体に命中し、生まれて初めて触れる氷に戸惑っているようだ。
グサッ。肉を断つ感触が心地いい。
昨日と同じように血抜きをして、ちゃっちゃと焼く。
「やっぱりうめぇ。自分で狩った獲物はおいしいな。」
遠くにゴブリンが見える。肉を焼く匂いに釣られて来たようだ。
グギャギャ、ギャァ。
「汚ねえ声で鳴くな、このゴミが。俺が初めて殺す人型の魔獣はゴブリンか、まぁ手頃で丁度いいだろう。」
ナイフを構えながら近づく。ゴブリンは太めの木の棒を届きもしないのにブンブン振り回している。
「フッ」
ナイフを全力で首目がけて振り下ろし、上手く一撃で殺すことが出来た。
「ウッ、気持ち悪い。」
食べたもの戻しそうになるのを堪え、殺したゴブリンを見る。
「確か核は右の脇腹にあるんだったな。」
学校で習った知識を思い出し。ナイフで1突きする。スライムの時とは比べ物にならないほど、力が溢れる感覚がする。
「ハハッ、なんだこれ。気持ちいい、すっげぇ気持ちいい。よし、殺すか。」
(止めろ、止まれ。今ならまだ間に合う。お前はあいつらと同じようになりたいのか?)
「うるせぇ、だまれ。魔獣を殺す。気持ちいい。世界のためになって、俺は気持ちいい。最高じゃないか。」
焼けたラビーの肉を持ち、森の中に入る。
グギァ。ギャッギャッ。
二匹のゴブリンが現れる。
「俺のために死ね。」
一体に目掛けてナイフを振り。左手に傷をつける。上がった身体能力に振り回されるように続けて切る。
ゴブリンは木の棒を振りかざしてくる。
「危ないなぁ、何してるの?魔獣は人間に殺されるのが使命だろ?なぁ、違うか?」
全力で振り、胸を切り裂く。しかしあまり深く切れない。さっきの2手目がいけなかったのだろう。
それでも構わず振りかざす。
ギャッ。
短い悲鳴。あぁなんて気持ちいいんだろう。
隣で仲間が死ぬのを見たゴブリンは、怒ったのだろう。木の棒を先程よりも速く降っている。
「当たると思うか?」
さっきと同じように、首目がけてナイフを振り下ろす直前。ゴブリンの木の棒が頭に命中する。
頭が痛い。フラフラする。ゴブリンに負ける、魔獣に負ける。魔獣負ける?そんなはずはない。
「ウインド」
透明の刃がゴブリンの左目に直撃する。
ギヤァァ、ゲェ。
「もっと鳴けよ、さっき俺に攻撃したんだろ?
・・・飽きた、死ね。」
脇腹にナイフを突き刺し核を潰す。
「うおおおおぉ、これだよこれ。最高だ。あっそうだ、もう一個あるじゃないか。」
前に倒したゴブリンに近ずき、核を潰す。
「来た来た来たぁ。ハハッ楽しいな、殺すのは人間の特権、人間に生まれてよかった。」
ふと、後ろを振り返る。そこには、立派な剣を持った、エリートゴブリンが居た。
「いい剣だな、寄越せよ、そして死ね。」
真っ赤な目をしたエリートゴブリンは、剣で防ぐ。続けざまに下から切り上げる。今度は右足の太ももを切り、赤黒い血が流れる。
その時、自分の中で何かが壊れた気がした。何故かは分からない。血を見たからなのか、右足を切ったからなのか。
「なんだこれ、楽しい、怖い、寂しい、気持ちいい、気持ちいい。」
先程とは比べ物にならない速度でナイフを振り、首に傷を付ける。しかし、ナイフの刃が切れにくくなっていたのか、絶命にまでは至らない。
「ウィンドブラスト」
少し目を凝らせば見える、半透明の刃がエリートゴブリンの首を切り落とす。
「何故俺が中級魔法を使えるんだ?それに体が軽い。これはゴブリンを殺したとか、そういう次元じゃなねぇ。」
これではまるで、レベルアップしたみたいじゃないか。
レベルアップとは、Lv1は一般人、人口の約8割がLv1.のまま生涯を終える。Lv2は中級クラスの騎士や衛兵などに当たる。これは約1割程に当たる。Lv3は上級騎士やトップレベルの道場の師範などに当たる。ここで人口の約97%程の割合となる。
Lv4は、各国の騎士長や魔道士長クラスで、途方もない努力をしたものにしかなれないLvである。
Lv5は勇者や賢者など、歴代でも両手で数えられる程の人数しか至っていない境地である。
「なんであのタイミングで。まぁ、かんがえても無駄か。とりあえず、あいつの剣と核だな。」
既に死んだエリートゴブリンに近づき、核を潰す。
「ふぅ、なんか慣れてきたな。それより、この剣だ。」
小さな宝石が散りばめられており、細かな模様が描かれている。どこかの貴族の紋章のようなものも描かれている。
「貰っていくか。」
青い空には・・・・・・




