崇めよ、架空を崇めよ
この世界の魔物のクラス分けを書いて置きます。
S+は単体で大陸を沈めるほどの力を持ちます。
Sは単体で国を滅ぼすほどの力を持ちます。
S−2体以上で国を滅ぼすほどの力を持ちます。
Sランク別名【神話級】
伝説の勇者程の力がなければ討伐は不可能。
A+は単体で防衛都市を窮地に陥れる程の力を持ちます。
Aは単体でごく普通の街を滅ぼすほどの力を持ちます。
A−は3体以上で街を滅ぼすほどの力を持ちます。
Aランク別名【天災級】
B+は王都から討伐隊を組むことが推奨されるほどの力を持つ。騎士長や魔道士長クラスの力で単体を殺せます。
Bは騎士長クラスの力で3体以下の数を対処出来る程の力を持ちます。
B−は普通の兵士20人ほどで対処出来る程の力を持ちます。
Bランク別名【凶悪級】
C+は手馴れの騎士が単体でギリギリ対処出来るほどの力を持ちます。
Cは手馴れの騎士が余裕を持って3体以上の数を対処出来る力を持ちます。
C−は普通の騎士が1人でギリギリ対処出来る程の力を持ちます。
Cランク以下別名はありません
Dランクからはプラスやマイナスの区別がありません。
Dはひとつの村を20体以上で滅ぼすほどの力を持ちます。
Eは普通の大人が対処可能な程の力を持ちます。
いつからだろうか、こんなにも人が残酷に見える。
表向きは笑顔を振りまき、裏では愚痴をこぼす。
平気で命を神に捧げろと言う。
「なんなんだ、都合のいい神ってのは。」
「なんなんだ、命を創り出す神ってのは。」
俺はずっとこの神国で、架空の神とやらに【支配】された国で独り考えていた。
答えは、出ない。出るはずもない。全てを神に捧げたこの国では。どれだけ思考を巡らせても、どれだけ時間を掛けても。
「逃げだそう」
子供でも大人でもない16歳の木々が騒がしく色ずいていた季節だった。
走る。(今戻ればまだ間に合うぞ)
走る。(今からでも引き返せば取り返しがつくぞ)
走るッ。(神とやらに祈って生きていけばどうとでもなるぞ)
走るッ(嵐が近い、生き延びれない、【命】が消える)
「命がどうした、架空の神に作られた命なんて必要ねぇんだよ。」
「俺は、俺はッ、命がなんなのかを見つけるために飛び出したんだ。」
「今引き返す?笑わせるなッ、消えろ、消えてしまえ。」
誰に言うでもなく独り叫ぶ。もしかしたら魔獣に聞こえたかもしれない。この国の狂信者に聞かれたかもしれない
けど「どうでもいい」
ポチャンッ、ポツポツポツ、ザーッ
1粒、3粒、8粒、11粒、数えるだけ無駄だと分かりつつも、限界を迎えた足に注意を向けないよう数え続ける。
「グルルルル」
黒炎の目をした魔獣が現れる。
名前は確か、ダンプビア「どうでもいいんだよッ、邪魔だ退けッ。」
声だけは威勢がいいが、当然ただの一般人に叶うはずもなく赤子の手をひねるように、左手が捻れる。
「ハアッ、ハアッ、痛ッ。」
きっと左手はもう二度と使い物にならないだろう。
それでも【走れッ】誰の声だろうか。自分か?それとも本能なのか?はたまた、神?
「クソッ、神なんていねぇ、現に魔獣は現れないはずの森でB+の魔獣に襲われているじゃないか。」
それでも限界はやってきた、心だけでは体は動かないのだ。
「動け、動けよ、動けよッ!」
「グアアッ、ハァハァ」
いつの間にか魔獣が後ろに居たようだ。俺は死を覚悟した。赤く、紅く輝く瞳を見て、何故か恐怖はなかった。
その瞳は、美しかった。狂ったように、縋るように、神とやらに祈るあの、狂信者よりも。
「お前の目は、綺麗だな。ハハッ何言ってんだろうな、言葉の通じない魔獣に向かってな。」
魔獣は答えない、答えるはずもない
はずだった。
魔獣と目が合う。何か言葉を交わすかのように。
「お前、俺を食わないのか?」
だが、現実はそこまで甘くなかった。魔獣はただどこから食べるか考えていただけなのだ。
「ハハ、そうだよな、神とやらはッ、居ないんだな」
痛い、右足が痛い。
泥まみれになった頬を拭う、更に泥がつく。
結局魔獣は右足だけを食って去っていった。
残酷だ、嗚呼残酷だ、生きたまま右足を食いちぎられ、左手は折れ曲がり、体全体に擦り傷がついている。
「死にたい」
それが本心だった。物心ついた頃から何故か分かっていた、狂った両親に、狂った友達。それ以上の領主、貴族、そして聖女。
神など全く信仰していない金に溺れた貴族は、神の為だと、住民達から金を巻き上げ、命を奪い、私利私欲を尽くすのだ。
この国は狂っている、そう思う自分が狂っている。
もう何を信じればいいのか分からない。
「誰か、教えてくれよ何が。何が普通になのか、何が常識なのか、狂っているのは、どちらなのか。」
そう、初めから分かっていたのだ。
「この世界は最初から、狂っていたのか。」
その思考を最後に意識は途絶えた