見送られて
玄関には、黒子のお姉ちゃんがいた。
「赤ずきん」
「黒子のお姉ちゃん」
じっとこっちを見てくる。
どうしたんだろうと、首を傾げていると近づいてきた。
顔を見ようと上を向くが、赤いずきんが邪魔で見ることができなかった。
ずきんのフード部分を取ろうと触る。
取る前に、黒子のお姉ちゃんの手が頭に乗せられた。
「行くのね」
「うん」
頭を撫でられる。
「赤ずきん、気を付けるのよ」
「? うん」
お姉ちゃんの声が、少しだけだけど震えていた。
どうしたのだろう。
顔を見たいけど、頭を撫でられていて見ることができない。
「黒子のお姉ちゃん・・・・・・」
「赤ずきん!」
「お姉ちゃん!」
どうしたの?と言うおうとしたらみんなが来た。
頭から黒子のお姉ちゃんの手が離れる。
顔を見ようとしたら、小さい子に抱き着かれて見ることができなかった。
「赤ずきんのお姉ちゃん、行っちゃうの?」
「まだ、行くの早いよ」
「朝ごはん、一緒に食べられなかったんだよ」
小さい子達が抱き着いたり、手を掴んだりしてきた。
不満そうな顔をして言ってくる。
「こら! わがまま言わないの」
「赤ずきんが困っているでしょ」
お姉ちゃん達が、小さい子達を引き離す。
やだと言うが、顔は笑っていた。
行ってほしくないというのはホントだろう。
でも、この子達だってわかっている。
おばあさんの家に行くのは、幸せになるために必要なことなのだ。
「コブ大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ」
「道わかる?」
「うん、昨日聞いたからわかるよ」
「手紙書いてね」
「うん」
「いつでも来ていいからね」
「うん。絶対また来るよ」
代わる代わる声をかけらていると、シスターが籠を持って来た。
「お待たせ」
「シスター」
「はい、赤ずきん」
「ありがとう」
籠を渡された。
布で蓋をされて、籠の中が見えないようにされている。
「おばあさん、風邪を引いているらしいの。風邪にいいワインを持って行って飲ませてあげて」
「わかった」
布を捲って籠の中を覗くと、小さなパンが2つと小さいワインの瓶が入っていた。
「シスター、今までありがとう」
「私の方こそ、ありがとう。元気でね」
「うん」
「赤ずきん、元気でね」
「気を付けてね」
「また会おうね」
「またね」
「みんな、ありがとう。いってきます」
みんなに見送られる中、ちらりと、黒子のお姉ちゃんを見た。
いつもと変わらない様子で、手を振ってくれていた。
お姉ちゃんも寂しかったのかなと思いながら、前を向いて歩き出した。
難産だった。何で赤ずきんがでてきたんだろう。支障ないからいいけど・・・・・・。