あれ?
ドアをノックされた。
音に驚いて、身を固くする。
「赤ずきん、大丈夫? 気分が悪いの?」
ドア越しに黒子のお姉ちゃんが呼びかけてくる。
一気に思考が戻った。
そうだ、私は『赤ずきん』。
早くおばあさんの家に行かないと。
「大丈夫、待ってて」
用を足して外に出た。
黒子のお姉ちゃんが何か言う前にこっちから声をかける。
「黒子のお姉ちゃん、シスターはどこにいるの?」
「シスター? シスターなら、まだ食堂にいると思うけど」
「わかった。ありがとう」
「ちょっと、赤ずきん!」
食堂を目指して走る。
黒子のお姉ちゃんの呼び止める声が聞える。
心の中でごめんなさいと謝りながら、聞こえないふりをする。
起きてから、かなり時間が経っている。
早く行かなければ日が暮れてしまうかもしれない。
食堂に近づくと、丁度シスターと2人の子供が出てきた。
「シスター」
呼ぶと気づいて、こちらに近づいてきた。
「赤ずきんだ。おはよう」
「お姉ちゃん、おはよう。」
「二人ともおはよう」
子供たちが駆け寄ってきた。
笑顔で挨拶をする。
「おはよう。コブができたって聞いたわ。大丈夫?」
シスターが目の前に来て、屈んだ。
見せてと言いながら、ずきんに手をかけようとする。
その手を軽く掴んで止める。
シスターの手を触りながら、笑って答える。
「おはよう。シスター。冷やしたからもう大丈夫だよ」
何ともないと言うようににっこりと笑って見せる。
「そう」
「大丈夫よ。私、おばあさんの家に行くわ」
「あら、今から?」
「うん」
「えっ、赤ずきん、もう行っちゃうの?」
「お姉ちゃん行っちゃうの?」
寂しいと言いたげな声で聞いてくる。
安心させるために、目を合わせて笑う。
「うん、おばあさんの家に行くのに時間がかかると思うから、もう行くよ」
「「えー」」
「昨日、約束したでしょ。落ち着いたら、お手紙を書くし、お休みをもらえたら会いに来るから。ね?」
「「うん」」
「そうね。今から行けば、時間的に丁度いいかもしれないわね」
シスターが立ち上がりながら言った。
「赤ずきん、籠を取ってくるから玄関で待っていて」
「うん」
「2人は、他の子達に赤ずきんが行くことを伝えてきてくれる」
「「はーい」」
日が暮れた森程怖いものはないと、小さい頃からシスターから教えられていた。
これなら、昼の内におばあさんの家に行くことができると安堵する。
シスター達と別れて玄関に向かって歩く。
赤ずきんがログインしました。