現状打破を目指して
つんでいた。
びっくりするくらいつんでいた。
狼に食い殺される。
狼に殺されなくても、確実にシスターや、村人達に撲殺される。
理不尽な状況に怒りがわいてきた。
何で殺されなければならない。
孤児院で、村で、何か武器になるようなものはなかっただろうか。
食事が目についた。
料理するなら、包丁があるかもしれない。
「私の分持ってくるからちょっと待ってて」
「え?」
「あなたが食べている間にコブを冷やしてあげるから、一緒に食べましょう」
考えいて反応が遅れた。
慌てて出ていこうとしたシャルロットに言った。
「コブを冷やすくらい一人でできるよ。お姉ちゃんはみんなと一緒食べて」
「でも」
「私もう赤ずきんだから、できるよ」
少し誇らしそうに胸を張って言う。
中身の年齢や羞恥心は、投げ捨てる。
面倒見のいいシャルロットなら、私の意見を断って一緒に食べるかもしれない。
だが、自分より下の子の『一人でできるもん!』と言う主張は尊重してくれるかもしれない。
これは賭けだ。
シャルロットも他の子も、シスターも食堂にいてもらわないと困る。
武器調達をばれたら、死亡決定だ。
「わかったわ」
小さくため息をつかれて言われた。
「何かあったり、コブの痛みがなくなったりしたら、食堂に来なさい。途中からでも一緒に食べられるわ。」
そう言って部屋を出て行った。
コブを冷やしていた布を、お盆の上に乗せた。
ドアに近づいて、シャルロットの足音が遠ざかるのを聞いて、
すぐパンにかじりついた。
「かっった!」
固くてとても食べることができなかった。
すぐにあきらめると、タンスの中にパンを隠した。
スープを飲む。
薄い塩味。
野菜はくたくたに煮られていて、急いで飲み込むことができたが、肉は固く、時間をかけて噛まねば飲み込めそうになかった。
肉以外をすべて食べて飲み込み、肉だけを口に含んで食器と布を載せたお盆を持つ。
ドアを開けて、廊下の様子をうかがう。
近くに人はいないようで、静かだ。
ゲームでの孤児院内の見取り図を思い出す。
食堂と台所がある部屋は離れていたはずだ。
口の中の肉を咀嚼しながら、静かに、急いで台所の部屋を目指す。
もし誰かに遭遇しても、食べ終わった食器を片付けに行くと言えば誤魔化せる。
台所がある部屋に行く理由にもなる。
不自然ではないはずだ。
途中、子供たちの声が聞こえる部屋を見かけた。
ゲームの見取り図通りならば、食堂だろう。
全員そこにいるなら、今がチャンスだ。
台所にある部屋に着いた。
食器棚や水が入っているだろう大きな壺がゲーム内通りにあった。
姿を確認するために、壷の中を覗き込んだ。
水に映っているのは、三つ編みをした黒髪の可愛い女の子。
ゲームの赤ずきんだった。
舌打ちしそうになるが、ぐっとこらえる。
誰かに見られたらまずい。
食べ終わった食器を水で軽く洗い流して、置いてある布で拭いて、食器棚にしまう。
そして、食器棚の中を漁る。
やっぱり、食器類もなにもかも木製で武器になりそうになかった。
木製でも、箸かフォークなら武器にできただろうがなかった。
包丁を探しながら、外へ繋がるドアや窓のカギを開けた。
もし、何かないことに気づかれても、第三者の侵入があったことにして、知らないふりをする。
包丁を見つけた。
大きさの違うものが3本あった。
肉切り包丁のような大きい物。
一般家庭にある通常サイズの物。
そして、果物ナイフのような小さい物。
持って振り回すことを考えると、ナイフだけしか持っていけない。
他の2本は今の体では重い。
ナイフを手に取って気づいた。
どうやってバレずに持って行こう。
行動したが、行き当たりばったり。