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武器を出してみよう!

 ドアの向こうに意識を向ける。

 誰も来る気配も音もしないので、武器を確認してみることにした。


 ゲームではアイテム欄があり、選択すれば装備することができたし、

 ボタンを押せば自動的に出して撃っていた。


「アイテムボックス」


 言ってみた。

 何の変化もなかった。


「銃。猟銃。マシンガン」


 変化なし。


「銃装備。猟銃装備。マシンガン装備」


 変化なし。


「私は負けない!」


 やけくそ気味に必殺技の時のセリフを言ってみた。

 何も起こらなかった。


 今度は口に出さずに、武器出ろと念じてみた。

 やっぱり何も起こらなかった。


「はあ? なんで? 見た目が女児でも中身が女児じゃねえからか? 中身がやべえ性癖の持ち主だからか?」


 現れない武器に苛立ち、低い声が出た。

『赤ずきん』の武器が、健気な女の子や清らかな女の子しか使えないとか、制約がある場合。

 BLだろうが、GLだろうが、NLだろうが地雷物以外何でも嗜んでいる雑食系腐女子の時点で積んでいる。

『赤ずきん』の武器なしで狼を倒さないといけないということだ。

 無理。


「どこから武器調達しよう」


 籠の入手がまだだろうから、その過程で武器が手に入りそうなところはなかっただろうか。

 考えていると、ドアが開いて女の子が戻ってきた。

 見ると、髪の毛が側頭部で一つ結びにしてあった。


「シャルロットだ」

「は?」

「なんでもない」


 うっかり声が出て慌てて誤魔化す。

 どこかで見たことあると思ったら、赤ずきんの同室にして、

 色々と助言してくれるゲーム内のお助けキャラだった。


 籠や赤いずきんがどこに行けば手に入るとか。

 孤児院があるこの町や他の町の噂など、ゲームの進めるために必要なことを、なんだかんだと言いながら教えてくれるツンデレキャラだ。

 設定上名前がなく、赤ずきんからは「黒子のお姉ちゃん」と呼ばれている。


『シャルロット』は、黒子のお姉ちゃんに付けられた。二次創作での名前だ。

 声優さんとその人の代表キャラクターの名前を掛け合わせて、『シャルロット』

 私も、『赤ずきん×シャルロット』をよく読んでいたし、ドエスな赤ずきんにあれこれされるシャルロットが大変好きだ。


 同人誌の内容が脳内を駆け回り、テンションが上がる。

 だが、赤ずきんの位置に今自分がいることを思い出し真顔になった。

 見た目がどうであれ、自分が出てくるもの地雷だ。



 ため息をついて近づいて来た。


「着替えたのはいいけど、髪がまだじゃない」


 私の髪を手に持っていた櫛でとかしだす。

 シャルロットの背が、頭一つほど高いことに気づいた。

『低身長×高身長』もいいなと考えていると、後頭部に触れられ痛みが走り声が出た。


「いっ」

「ちょっと、コブできてるじゃない」


 いったい何をやっているのよと、文句を言いながらも、コブができているという後頭部には触れないように、優しい手つきで素早く三つ編みにしてくれた。


「ちょっと待ってなさい」


 そう言って、部屋を出て行った。


 三つ編みを見ると、紐で器用に結んであった。

 服と一緒に入っていた2本の紐は髪を縛るためのものだったようだ。

 ゲームの赤ずきんの三つ編みも紐で結んであった。

 靴下も紐で縛るタイプだったから、ゴムが存在しないのだろう。


 自分で紐を使って髪を結べと言われてもできないから、シャルロットにやってもらうことができてよかったと安堵する。


 シャルロットが布を2枚持って戻ってきた。

 1枚を渡してきた。

 少し濡れて冷たかった。


「まだ顔を洗っていないでしょ。これで拭いて、こっちでコブを冷やしなさい」


 もう1枚布を見せてきた。

 どうやらタオルのようだが、知っているタオルと比べて薄くぼろい。

 正直タオルと認めたくないが、言われた通りに顔を拭く。


 冷たくてさっぱりしたが、普段使っているタオルと違い肌触りが悪い。

 普段との違いに、ますます自分がいた場所とは違うのだと感じる。


 手を出してきたので、拭いた布を渡す。

 もう1枚のほうを渡された。

 ハンドタオルくらいの大きさで、先ほどのものより硬く絞られていた。

 後頭部に当てると冷たくて気持ちよかった。


「朝ごはんを持ってくるから、部屋で食べなさい。

 食堂に行ってら、みんなあなたに構うからゆっくり冷やせないでしょ。

 少しでもコブが目立たないようにしないと。

 いい、そのままおとなしく冷やしておきなさいよ」


 シスターに伝えてくるわと、言いながら顔を拭いたほうの布を持って出て行った。

出せるとは言っていない。

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