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吸血少女の非日常  作者: 紅空
8/10

8:過去の記憶

*  *  *


「あれ、真琴…帰ってないんですか?」


「うん。帰ってきてないけど、てっきり一緒に帰ってくるのかと」


「いいえ。あたしは今日、生徒会の仕事があったので

 遅くなるって伝えてあって……」


 それなら、真琴はいつもより早い時間に帰ってきてる筈。

 なんで、帰ってこないの?


「あ……そういえば、なんかこの頃、変な視線を受けてる気がするって

 真琴が言ってた気がします。」


「……それは、本当?」


「あ、はい。あたしは帰りしか一緒にいれないので、

 気を付けてとしか言えなかったんですけど。」


 真琴が危ない。真琴のことだから、暴力沙汰には巻き込まれても

 捻り潰すだろうけど…あの顔なら変な輩に襲われかねない。


 私は急いで父親がいる部屋に向かって事情を話す。

 すると、お父さんは自分の使い魔を窓から飛ばして場所を探ってくれた。


「使い魔でも、探すことは可能だが…俺達も探そう。

 俺は空の上から探す。2人は地上から探してくれ。」


「分かった。じゃ、行ってきます。」


 私は響ちゃん、奏と一緒に真琴が通っている学校付近を

 探してみたり真琴が行きそうな場所を探した。

 合計で5カ所はまわったと思う。


「…はぁ、は…なんで、いないの。こんなに、探してるのに!! 真琴ー!」


「澪…一回、家に帰ろう。時間も時間だし、

 帰ったら翔さんの使い魔が見つけてるかもしれないし。」


「そんな…こと、してる時間も真琴、真琴は!!」


「だから、落ち着けって!!今、取り乱してたら

 探せるものも探せないだろうが!!」


 奏の豹変ぶりに驚きながらも

 感情的になったその声で、冷静になっていく。


「ごめん…奏。」


「いいよ別に。いくよ。」


 奏に手を引かれながら走って家に帰ると

 お父さんが家から出てきていた。


「柚葉、真琴の場所が分かった。」


「何処!!?」


「真琴が通ってる学校から離れた人気のない倉庫だ。」


 それを聞いて、私は急いでその倉庫とやらに向かう。


 すると、その中からは女特有の甲高い声や男の低い声…

 そして、甘ったるい匂いが充満していた。


「真琴!!」


 名前を呼びながら、倉庫の中を探していると匂いと声が近くなっていった。

 その甘い匂いや声の中に、真琴のうめき声のような

 悲鳴のような声が混じっていた。


「あれ、お姉さんじゃん♪というか、あなたも混ざる?

自分の大事な家族で可愛いって思ってたんでしょー?」


「………」


 目を向けると、そこには同級生の男子だったり少し年上の女の人達がいた。

 そしてその様子は輪姦……という言葉が当てはまる感じだった。


「……」


 私が無言のまま、進んでいくと周りにいる女は

 避けて行き、やっとのことで中心にいる人が分かった。


「……まこ、と。」


 真琴の姿は見るに堪えない姿だった。

 制服は脱がされて、いたるところに噛み痕や赤い花があって、

 白濁液が付着していた。そして、吸血鬼だとしても苦しいはずの首を絞められた跡。


 何よりも、私の目についたのは大事な弟を…真琴を道具のように

 扱っていたであろう跡。


 その時の真琴の瞳は、助けてと言っても助けてくれない

 クラスメートに絶望して、泣いても止めない女と男を見ていて。


 そして、私が好きだった真琴の青色のどこまで澄んでいた瞳が

 真っ暗で淀んでいて、何も映してなかった。


「……さない」


「は? なに? して欲しいの?」


 リーダーらしき女はケラケラと笑いながら

 汚い口で言葉を紡ぐ。


「…人間風情が調子に乗るな。今すぐ、目の前から消えろ。」


 そこから私自身の意識はなく、数分して意識を取り戻した

 その時には真琴に跨っている女の姿も、周りにいた奴らの姿もなかった。


「……あ、ねき……」


 真琴はそう言って意識を完全に飛ばした。


 私は、その真琴を家に抱えて帰った。


*  *  *


「……寝てたのか、久しぶりに見たな。夢。」


 ま、今ここで呑気にシャワーを浴びている真琴も私と同じ神代学園に転校した。

 神代学園はセキュリティーもばっちりだし

 なによりも姉である私がいるから、真琴が目をつけられることはなくなった。

 これは嬉しい限りである。


 まぁ、ハルっていう名前の真琴のパートナーが真琴の心の傷を

 軽くしてくれたことが一番の功績かもしれない。


 それを聞いたのは当然、真琴本人から。

 ま、今はハルについて聞くと殆どが「あいたい」とか「すき」とか「ほしい」とか

 単語で話すから重症だなとは思ってる。


「…姉貴。」


「なに?」


「いや……終わったけど背中流す?」


「大丈夫、ありがと。」


 私は真琴の嬉しい言葉を断って全部終わらせてから

 風呂をあがると、奏たちは数分前に帰ったことを教えられ

 そのまま部屋に戻って復習をしてから眠った。


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