4:椎奈家
空を飛んでて改めて思うけど
妖狐化した奏はホントに軽すぎる。
「なんで、そんなに軽いの。」
「ん? 知らなーい。けど、これだけは言える。
小さくなったからその分だけ減った。
というか、柚葉だって十分軽いでしょ…。」
「奏に比べたら重いと思うけど?」
「そんなの当たり前でしょ。この姿の俺と比べる方がバカだと思うよ。」
(うぐッ……。ま、それは確かにそうなんだけどさ。
でも、奏は人型になっても男の人の中では軽いから私と同じか
それ以下ってことでしょ? やっぱり、ズルいなぁ。)
「ねぇ、家…通り越してるけど。」
「え? あ、本当だ!!」
指摘されるまで気付かなかった。
いつの間にか、自分の家を通り過ぎていたらしい。
「はぁ…考え事するのもいいけど周りをちゃんと見てよ。
今回は俺がいたから助かったんだからね。」
「そうだね。ありがとー。」
棒読みで返すと“棒読み!!”と怒られた。
そして、扉の前で奏を下ろすと煙があがるのと
同時に人間の姿に変わった。
「ただいまー。」
「お邪魔します。ふわぁ…。」
「おかえりなさい、奏くんもいらっしゃい。
響ちゃんもいるわよ。」
「また、響の奴……。いつもすいません、梓紗さん。」
「いいのよぉ? 真琴が唯一、一緒にいれる女の子だもの。それに楽しいしね。」
(本当にお母さんは緩いというか優しいというか
普通の親なら怒るんだけどなぁ…多分だけど。)
「あれ? お父さんは?」
「翔? 翔なら部屋で仕事してると思うけど…。」
仕事ねぇ…なんか学校で余った仕事でもあったのかな。
そう考えて、自室に向かい部屋着に着替えてもう一度リビングに行く。
「お邪魔してます、柚葉さん。」
「……姉貴、おか。…今日、肉じゃが。」
「ふーん、お母さんと響ちゃんの好きな奴じゃん。」
リビングにいたのは響ちゃんと私の弟の真琴がいた。
真琴は私と2歳離れてる弟で今は中学3年生。
響ちゃんは普通なら高校1年で同じなんだけど、真琴を気遣ってからなのか
試験にワザと落ちて浪人生となっている。
けど、申し訳ないと思いつつ響ちゃんには感謝している。
あの人の代わりと言っては何だけど、真琴のコミュニケーションの支えに
なってくれているから。
「そうなんですよ! あたしが行くと言ったら梓紗さんが作ってくれて…。」
「はぁ…響、お前もいい加減、自重してよ。
片割れながら恥ずかしいんだけど……。」
「別にいいじゃん。昔から仲良いんだし
そ・れ・に、あたし達、世良家と椎奈家は助け合って生きてるし。」
「ホントに図々しく育ったね、響。」
(いやぁ、それほどでもーと照れ笑いをする響ちゃん。可愛いから許す。)
「ありがとうございます♪」
「え、なんでお礼?」
「姉貴……口、出てる。」
「あ……。でも、調子に乗ったらだめだよ?」
「分かってますって!」
響ちゃんがにっこりと笑って返事したのを確認すると
ダイニングからお母さんの声が聞こえた。
「「「はーい」」」
声を合わせるという意識もしてないのに私と響ちゃん、奏の声が重なった。
私達はクスッと笑った。