2:幼馴染と新しい先生
で、その奏っていうのが…
世良 奏、私と同じ高等部1年で幼馴染。
少し癖のある黒髪に、気だるげで少し膜が張るグレーの目。
奏も純日本人で、奏は入学早々に有名になった。
いつの間にか、ファンクラブまで出来てて、その子達からは、
グレーの目から『灰王子』って呼ばれてる。
それと、奏には双子の妹がいて、名前は響。
兄の奏とちょっと似てるけど、可愛い。
でも、私の弟を気遣ってか留年をして弟と一緒にいてくれる子。
「…ゆず……柚葉」
「……!、な、なに?」
「…何回呼んでも返事なかったけど…耳、大丈夫?」
「大丈夫、それに何も無いから気にしないで。」
奏に少し微笑むと、凄い呆れられた。
(何故、私が呆れられないといけないのだ…。)
「……柚葉、周りを見て気付いたことない?。」
「え? ……あっ! きりーつ……礼」
気付いたこと、それは何人かの人が私を見ていたこと。
その視線は早く私に挨拶の号令をかけろ、という視線だった。
(なんで、私が挨拶をするのかって? このクラスの学級会長になったから。
表では、いいよって言ったけど…物凄く面倒くさいです。ハイ。)
と言うわけにもいかず、心の中で愚痴っている。
まぁ…私が願うのは、ただ1つ。正体がバレない事だけ。
「おはよう、今日は特にこれといった連絡はない。」
そう言って、担任の先生は後は自由と言って
教室から出て行ってしまった。
(うん。自分の親ながらテキトーだなぁ。)
このクラスの担任は、私の父で女子にも男子にも人気な男性教師1位。
まぁ、奏のお父さんである零さんも、神代にいて理事長をしているから
同率1位らしい。
「最初の授業ってなんだったっけ。」
「科学」
「科学かぁ…当たらなければいいなぁ。」
「ムリでしょ。柚葉は実験とかちゃんとやるし、理論的に話すから
科学の先生に気に入られてんの。まぁ、あとは白衣が似合う。」
「いや、白衣なんて似合う似合わない関係ないでしょ?」
そう答えると「自覚無し」と投げやりな感じで言われた。
「自覚無しって何が? 私は色々と自覚はしてるつもりですけど?」
「そういうとこ。」
「?」
首をかしげると、また奏に溜め息を吐かれた。
(朝で既に2回か3回…一日でどのくらい溜め息疲れるんだろう。)
そう考えていると、教室に入ってきたのは40代くらいの男の先生ではなく
上の学年の理科を担当している20代くらいの女の先生だった。
「あれー? いつもの柊先生はー?」
「柊先生はね、今日は用事で来れないの。だから代わりに私が入ったの。
先生の名前は、仁兎木稲。
仁兎先生って呼んでくれたら嬉しいわ。」
女の先生は仁兎先生というらしい。
軽い自己紹介を終えると、黒板に次々と分を書いていく。
「…じゃ、これを全部解いて。
終わったら実験の説明をして、実験するから。」
仁兎先生はニコッと笑って、教卓の近くにパソコンを置いて
カタカタと何かを打ち始めた。
私は黒板を見て、問題を解いていって実験をしたりなどをして
1コマ目の授業が終わった。
それからは、変わったことは何も無くて無事に放課後になった。