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吸血少女の非日常  作者: 紅空
10/10

10:幼馴染の役割

奏sideです

「奏…次の号令は、よろしく……保健室にいる、から」


 柚葉にそう告げられ頷く。


 けど、その時の柚葉の様子が異常で心配になった

 父親のいる理事長室に向かった。


 *  *  *


 俺は理事長室の扉の前に立って

 ノックを3回すると、中から声が聞こえた。


「入っていいぞ、奏。」


「まだ、ドアも開けてないし名前も言ってないんだけど。」


 俺はドアを開けながら開口一番に父親に悪態をつく。


「奏の妖力は分かりやすいんだ。

数少ない影妖術を使うからな。」


「数少ない妖術を使ってたとしても、分かるのは父さんみたいな

強い人だけだよ、それ。

俺からしたら、いくら妖術が違くても同じ感じだし。」


 そういいながら、ふかふかのソファに座る。


「奏だって、いつかは俺のようになる。

今はまだ、覚醒してないからな。」


 俺の両親と柚葉の両親は、違いが分かると言ってるけど

 それは年の功だからだと思う。

 俺も柚葉も響も真琴も違いなんて全然分からない。


 それに、俺達は『妖狐』『吸血鬼』と定義して分けるけど

 ある人間はたった一言、“妖怪”という言葉でまとめる。

 だって、違いは人間にも分からない。

 だから、いくら『妖狐』『吸血鬼』『悪魔』といったところで

 妖怪に変わりはない。


「で? 俺に用があったんだろう?」


「そ、柚はの様子が異常なんだよ。

今は保健室で寝てるけど…。」


「どんなふうにだ?」


 どんな風に…?


「苦しそうで、何かを求めてる感じ。」


「…なるほどな。柚葉の今の状況は吸血衝動だ。

一人前の吸血鬼になるためにパートナーを呼んでるんだ。」


「呼んでる? 普通は吸血鬼自身が行くんじゃないの?」


「それは男の場合だ、女の場合は違う。

女の吸血鬼は自分のパートナーを待って、確実に自分の所に来ることで

安心感が生まれて、ソイツをパートナーにするんだ。」


「それって、パートナーじゃない人が近づいたらどうなるの?」


「パートナーを呼んで待ってる女の吸血鬼に、近づいたら

体内の血液を全部吸われる。要するに死ぬ。

ま、男の吸血衝動には前兆があるが女にはないからな。そこが厄介なんだ。」


「だから、今…柚葉は苦しんでんの?」


「そうなるな。ま、喉の痛みとかなら自分の血を飲んで

気休め程度にはなると思うが、パートナーの血を飲まない限りは

苦しみ続ける。そして、最悪の場合、灰になる。」


「……灰、に?」


「あぁ。吸血鬼は不老不死だってことは知ってるよな?

でも、唯一死ぬ危険があるのはパートナーを探す時。

見つければどうってことないが、見つからなければ身体が渇いて

灰になるんだ。そうなったら、もう二度と蘇ることもない。」


 それを聞いて少なからずショックを受ける。


 もしも、柚葉のパートナーがここにいなければ

 柚葉は苦しみながら死ぬ…。

 俺が、パートナーだったら…助けられたかもしれないのに。


 何もできない自分自身が歯がゆい。

 小さいころに与えられてる『監視』という役割を隠して

 一緒にいたとしても、柚葉は大事な幼馴染だから…。


「奏が気に病むことはない。そういう運命なんだ吸血鬼はな。

それに、柚葉の衝動は治まる。

直感だけどな。パートナーはこの学園にいる。」


 確信を含んだ言い方の父親に不信感を抱きながらも

 一度も外れたことはないのを思い出して渋々、頷いた。


「分かった…じゃ、俺は教室に戻る。

柚葉の代わりを任されてるから。」


「そうか。お前に教えとく、翔の娘なら起きてると思うが、

吸血鬼は衝動の後、意識がなくなる。

だから、帰る時は柚葉も一緒に連れて帰ってこい。

ま、意識があっても眠らせろ。パニックになるからな。」


「分かった。」


「眠らせたら数日は起きないからな。

特別に柚葉が寝てるときは、お前を休みにしてやる。」


 職権乱用な気もするけれど、俺は頷いて

 理事長室から出た。


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