1:私は吸血鬼です
「ねむ…」
「奏、寝ないで」
「うん……分かってる、けど…眠い。大丈夫、教室までは…粘るから。」
(って言いながら、もうすでに寝そうになってるんだけど…。
ま、いいか。どういう原理かは知らないけど普通に歩いてるし。)
「……素朴な疑問なんだけどさ。奏は私よりも寝てるのに、なんで?」
そう訊くと、奏に少しだけ目を見開かれて驚かれる。
「もしかして知らないの? パートナーでもない人が
吸われる時に起こる吸血後の副作用。」
「知らない。」
「この際だから教えるけど、副作用は3つ。1つは催眠、2つは催淫、3つは治癒。
ま、治癒はパートナーが出来るまで気付かないのが殆どだし、いるのが珍しいって、
父さんが言ってた。で、俺は催眠だから、吸われた後は…眠く、なってきて…ふわぁ、ぁふ」
「それは…謝るけど、パートナーが出来るまでは奏だけだし……。」
「……はぁぁぁ、そんな可愛いこと言われると怒れないんだけど。
まぁ、いいや…分かってるし。」
今は神代学園に向かうための通学路で会話していた。
神代学園っていうのは、保育園から大学まである大きな学園で偏差値も高いので有名。
それに、神代学園の制服は女子は可愛く男子はカッコよくがモットーに
作られてるから、いつも人気で倍率が高い。
高い理由は制服だけじゃなくて、美少年、少女の割合が高くて、
1学年に3、4人はいるのが現状。
だから、彼氏彼女を作りたくて入学する人もいるので倍率が高くなる。
(ま、私は当日の試験で点数が高かったから神代学園にいられるんだよね。
ついでに言うと、私と奏は高校から神代に入ったから皆、初対面だった。)
と、考えていると、いつの間にか自分のクラスに到着していた。
中に入ると、いつも笑顔が特徴的な夏海さんが話しかけてきた。
「おはよ、柚葉ちゃん。」
「おはよう、夏海さん。」
「また、あのイケメン幼馴染と登校? 本当に仲がいいね。」
「まぁ…小さい時から一緒にいたし、それにやっぱり幼馴染だし。」
そう夏海さんと少し会話をしていると、視界の端では
カバンを枕にして寝ている奏がいた。
(本当に眠たかったんだ…。というか、いつもながら早いなぁ。
あ、そうだ…自己紹介を忘れてた。)
私の名前は、椎奈 柚葉。神代学園に通う高等部1年。
髪も目も黒の純日本人、けど周りからはハーフみたいって言われることが多い。
ま、それは今度、話すとして…私にはバレてはいけない秘密がある。
朝の会話で分かった人もいるだろうけど、その秘密は私が吸血鬼っていうこと。
当然、家族と奏の家族は私の秘密を知ってて
私がパートナーを見つけるまで奏には血をもらってるんだ。