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リアルな現代TSファンタジー

「はぁ…疲れた…」


私は社会人3年目。そこそこ仕事にも()れて来て、一通りの事はこなせる様になった。

ブラックと言う程ではないが、ホワイトとは死んでも言えないと言う会社で働いている。


今日も程々に残業して、明日の準備が一通り終わったから、帰って早くお風呂に入って寝よう。


そう思いながら、職場から出て、いちばん近くにある駅に向かって歩き出した。


そこでふと気付く。


塾の帰りだと思う中学生くらいの少年達が信号待ちをしている所に、車が真っ直ぐ突き進んでいることに。


運転手は…居眠りをしている!

だが、少年達は話に夢中になって気付いていないようだ。


どうしよう…と考える前に、私は()け出していた。


「あんた達!危ない!」


ドンッ!と言う音が私の中から聞こえた。


と同時に、左の肋骨(ろっこつ)から激しい痛みと熱が走った。


少年達は?


良かった。無事突き飛ばせたようだ。

少し怪我(ケガ)をしているかもしれないが、全員元気な様に見える。

だから、少しの怪我くらい大目(おおめ)にみて欲しい。


「ごふっ…!」


大丈夫?と聞こうとして、口から出たのは声ではなく、血だった。

口から血を吐くと同時に、口の中いっぱいに鉄の味が広がる。


あれ?そう言えば胸から下の感覚がないぞ?


……。


!!!


ヤバい!もしかして死んじゃうの!?


どうしよう?どうしよう!?

お母さん達と別れるのはイヤだし、友達とも別れたくない!

まだまだやりたい事はあるし、結婚もしたかった!

それに、推しの(すばる)きゅん(アニメキャラ)の抱き枕注文したのにまだ使ってない!

はっ!!!

…このまま死んだら、私の部屋から大量の薄い本(18禁BL)が出てくるし、パソコンの中の腐敗(ふはい)したファイルが家族にバレる!!!


し…死ねない!!!


私は、こんな所で死ねないんじゃあ!!!


せめて、全て処分する(まで)…は………





香澄(かすみ)


香澄(かすみ)……


はっ!?


あれ?ココは何処(どこ)?辺り一面が真っ白なんだけど?


香澄……


所で誰?私の名前を呼ぶのは?


『香澄。気が付いた様ですね』


「誰なの?何の用?私はしなきゃいけない事があるんで、急いでるんですけど!」


『香澄。貴女(あなた)は死にました』


「は?」


あれ?そう言えば体に痛みはないし、普通に呼吸も出来るなぁ……


…。


…うぅぅぅ…やっぱり死んだんだ…


どうしよう…あの腐敗物(キケンブツ)


『香澄。聞いてますか?』


「あ!はい。何でしょう?私はこれからどうなるの?」


『貴女は死んでしまったので、普通なら輪廻(りんね)()(したが)い、新たな生を受けます。でも、私は貴女に恩があります。だから、私が出来る事なら少しだけ叶えてあげたいのです』


「恩?私、貴方(あなた)に何かしましたっけ?」


『貴女がまだ小さい頃、おばあさんの家に遊びに行った時に、山で不思議な蝶(を見つけませんでしたか?』


「あぁー、確かに虹色(にじいろ)でキラキラした(ちょう)蜘蛛(くも)の巣に引っかかってた!」


『私は元はその時の蝶の化身なんです。蜘蛛の巣から助けてくれた恩を返したいのです』


「あー…何となく助けただけ…だったんですけど、良いんですか?」


『ええ。私が助かったのは事実ですからね』


「じゃあ生き返らせて!」


『すみません。そこまでの力はないのです。私に出来るのは、貴女の転生先の希望を聞いたり、転生後の小さな望みを叶えるくらい何です』


「そう…ですか…。あ、パソコンのデータとか消しといて貰えませんか?」


『それは出来るのですが、もう既に家族にバレてますよ?貴女が亡くなってから、既に1ヵ月経っているので…』


「…お、終わった…」


もうみんなにバレたのね…


はぁ、もうどうでも良いやぁ…ははハHAHA…


『そうですね。魔法と冒険の世界とかに転生するとかどうでしょうか?流行ってますよね?』


「あー、治安悪そうだし、インフラ設備(せつび)(ととの)ってなさそうだから、ヤダ!出来れば元の世界……!?

そう言えば、似たような世界だけど、魔法も使える世界って無いんですか?」


『うーん…そうですね…。あ、こんな世界はどうでしょう?科学の代わりに魔法科学が進んだ世界です。もちろん、個人でも簡単な魔法が使える世界ですね』


「それ!そこが良い!」


『ではそこにしますね?』


「はい!あ!ちなみに何が魔法の才能的なモノをもらえないんでしょうか?」


『ええ、良いでしょう。では魔法の才能をプレゼントしておきますね?』


「ありがとうございます!」


「では、貴女の来世がより良いモノになりますように…」





…。


今、ハッキリと思い出した…。


私の前世だ…。


ふざけんなって思う。


これまでは(うっす)ら前世の記憶を思い出すくらいだった。


その記憶が入り交じって、私は女だと思っていたし、今は確信的に自分が女としか思えない。


でも、なんで先に言ってくれなかったんだ?


もしくは、なんでちゃんと記憶を消してくれなかったんだ?


この世界は魔法が使える人がいる。


魔法を使うにはある条件が必要だ。


私は確かに魔法の才能を願ったし、今はそれがかなっている。


この世界で魔法を使える条件…それは、()()である事。


女性の場合だと、子供を産むために必要な臓器(ぞうき)の影響で、何故か魔法が発現しないらしい。


と言うのも、ぶっちゃけ女性の子宮の代わりに、男性には女性の子宮の位置に魔法を使うための魔力臓器があるそうだ。


…。


私の今の名前は『龍野(たつの) 将虎(まさとら)』と言う男らしい名前だ。

父親が名付け親なんだが、付けた理由は「名前に(りゅう)(とら)が入っててカッコイイだろ?俺はこんな名前にして欲しかったんだよなー」って言ってた。


だが、残念ながら前世の記憶の影響もあるが、私は性自認が女だし。


でも、魔法が使えるし。


…身体はもちろん男だけど…


「あ゛あ゛あぁぁ!!!」


あの蝶ぅぅ!

ちゃんと教えておいてよー!!!

おかげで身体の性別と性自認が違うから、違和感がずっと感じてたじゃない!


昔からずっとおかしいなぁ?って思ってたんだから!


身体が男なのに自分の事を女だと感じている私は、頭がおかしいのか?とか!

なんで女って感じているのか考えたり!

もしかして、特殊な性癖(せいへき)なんじゃないか?って悩んだりとか!


なんで自分が男に産まれたのかと恨んだし!

第二次(だいにじ)性徴(せいちょう)()で徐々(じょじょ)に身体が男っぽくなって行くのが気持ち悪くて仕方ないし!


あぁ…そう言えば、修学旅行とか最悪だったわ…

周りの男の子達は普通にお風呂に入れるのに、私は自分の身体がイヤで誰にも見られたくないし、下に付いてるモノの存在が気持ち悪いから、皆でお風呂入るのがめちゃくちゃイヤだった!


服だってそう!

男性向けのファッションとか全然興味無くて、むしろ女の子のファッションが興味あるから、女装したいの?って悩んだり!

なんか、大人の男性向けのファッションって色が地味!

他の男性がするなら良いんだけど、自分がそれを着るのはものすごくイヤだったし!


今思えば、何故か『私、性欲強すぎるかも…』とか悩んだのもそうなんじゃない?

私が女の時の記憶を持ってたから、その違いに戸惑ってただけじゃん!


そもそも、苗字(みょうじ)龍野(たつの)は仕方ないけど、将虎(まさとら)ってなんなのよ!?

男らしいと言うよりは、若干の厨二病っぽく見えるよ!

龍と虎って、私の苗字と名前はライバル同士なの?



そして一番頭にキてるのは……


なんで、国立東京魔法大学の特待生を決めるための実技入試の順番待ちの時に思い出すのよ!!!


もう少しで私が呼ばれる…ってドキドキしてる時に、なんで?よりによってどうしてこのタイミング?


「はい、では受験番号『893』番の方ー。実技室に入ってくださーい」


あ!私だ!


「はい!」


「では、どんな魔法でも良いので、あの(まと)に魔法を当ててください。あの(まと)は周囲に魔法防壁(まほうぼうへき)()けられていますし、耐久の魔法が()けられていますので、全力で魔法を(はな)っても壊れません。魔法防壁を破って(まと)に当てれれば特待生試験の実技は合格となります。少なくとも、魔法防壁を破るか、()(くぐ)る技術が試されています。制限時間は10分ですので、試行錯誤(しこうさくご)してみて下さい」


あ゛ー…むしゃくしゃするし、この怒りをこの試験にぶつけてやろう…

どうせ、壊れないんでしょ?

じゃあ久しぶりに詠唱をして本気で魔法をぶつけよう…


魔法を使うと決めた時、自然と魔法の呪文が頭に浮かび上がる。

私はその呪文の通りに詠唱(えいしょう)をして、魔法を(はな)つだけだ。


『火の魔素(まそ)よ…私の手に集まりなさい…私が(めい)じるままに…(すべ)てを()()くす…豪火(ごうか)()れ…』


地獄ノ獄炎(ヘル=フレイム)


ゴウッ!


私の手に集まった火の魔素が黒く光り(かがや)一握(ひとにぎ)りの大きさの炎になって、(まと)に向かって放たれた。


そして、魔法防壁に当たった瞬間、(すべ)てを焼き尽くす黒い炎の竜巻が発生して、(まと)を巻き込んだ。


数十秒くらい()った時には、高熱(こうねつ)でガラス化した地面しか残っていなかった…


…あれ?


壊れないんじゃ?


なんか…ヤな予感が…



「お…おい、君…」


「何でしょう?(ニッコリ)」


「…聞いた事の無い詠唱もそうだが…、…なんで壊れない様に『不壊(ふかい)』の魔法が込められた(まと)が壊れるんだ…?」


「ちょっと古くなってたんじゃないでしようか?(遠くを見つめる)」


「アホか!この世界でも3本の指に入ると言われている、我が国の国家魔法士長が今年の試験のために作った(まと)だぞ!?古くないわ!」


「そうなんですねー」


「…試験は合格で良いから、この後学長室に来なさい。受付の係の人に伝言して、案内させるようにするから!絶対に(のが)さんからな…!」


「てへぺろ♪」


あ゛ー!!!


あの蝶!全てアイツのせいだー!!!





こうして、前世の記憶を取り戻した私の、性別を元の女性に戻すための物語が始まるのだ!


え?


魔法とか、大学生活は?って?


うん。それも程々(ほどほど)にガンバるよ!


でも、そんなことより、まずは性同一性障害を診断できる病院に行って、早くホルモン治療始めなきゃ!!!



END

いろんなTSモノがありますけど、実際はこうなると思います。


男性から女性の場合も、男性器喪失による性欲の激減や、月一の生理、女性社会と男性社会のギャップ等で、本気で大変だと思うんですよねー。


受け入れられる人っているのかな?と疑問に思ったので、私の考えるリアルなTSモノを書いてみましたw


いかがだったでしょうか?

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― 新着の感想 ―
[一言] 性別に関する違和感って、他の人には分からないけど、意外に結構大きいんですよね。 僕もショーツの中の邪魔物に対するコレジャナイ感が凄く有りますよ(笑) 生理と妊娠と出産っていう、女性の身体の…
[一言] 凄く面白かったです。 男性器の喪失も月一の生理も憧れなので、実際にこういう風になりたいですね。
[良い点] 他薦で読ませて頂きました。 とても明るい作風なのにテーマが深く、尊敬します。
2019/01/30 14:26 退会済み
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