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転生帝者の無双魔導 〜転生した最強魔導師、新能力で超最強に!!〜  作者: しまらぎ
第三章 転生帝者の見えない記憶
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帝者、再開を果たす

 破壊の粒子が巻き起こす衝撃波は全てを滅し、音も光も魔力をも消し去っていく。

 その破壊の行進が無に誘うのは、アイツが放った魔法だけではなかった。

 

「ーーくそっ、持ち堪えてくれ……!」


 空間に満ちる魔力が消えても、世界を彩る光が消えても、俺の視界の端には結界が映り続けた。


 相殺にかかる魔法の威力は甚大で、未だに俺は出力を続けている。


 ある一定の威力を越えれば、容易く向かい来る破壊のエネルギーを消し去る事ができる。だが、結界も破れる。


 俺が結界を張れば万事解決、なんて事もない。

 そうすれば俺の中の魔力が異常なまでに荒れ、エイミーにレイミー、フィアの存在が消えかねないのだ。


 今ここで俺に出来る最善の策。


 それが、ギリギリのラインで持久戦をする事だった。



 ミシ、ピキ、と少しずつ結界にヒビが入っていく。その度に結界を修復せんと魔力を高める者たちの姿が見えた。

 

 結界が壊れれば、待っているのは死。

 結界が耐えられても、ピンチな状況には変わりない。


 絶望の二文字が頭をよぎった。



 一分、二分、三分、四分、五分。


 破壊のエネルギーは少しずつ衰えてきていた。

 

 あと一分。


 それだけ持ち堪えてくれればいい。

 この地を再び死の色で染める事だけは、絶対に嫌だ。


 ただひたすらに、俺は願っていた。





 ーーパリンッーー


 

 あと数秒で全てが終わる。

 そう思った時、ガラスが弾け飛ぶような、そんな効果音が頭の中を流れた。


 ほんの刹那の間に、俺の頭の中にはち切れんばかりの情報が流れ込んで来る。


 いや、逆だ。


 ゼロが限りなく続く身近な時間の間に、俺の頭の中から全てが出て行ってしまった。

 

 残っているのは…………これも違う。

 何も残っていない。


 俺の心も頭も、限りない虚無感が支配していた。



 破壊のエネルギーが進んでいくのが、それこそ刹那の如くゆっくり見える。

 道の先には止まってしまった人々の顔があった。


 ごく一瞬の出来事に、表情を変える事すらも許されない。

 

 そこにあったのは、まさに非日常を切り取った絵、写真とかした人々の姿だった。



 やがて、俺の視界から光が消えていく。


 破壊のエネルギーが充満している空間の中に、俺も取り込まれていくのだ。


 暗い世界は影でなく闇でもない、無の空間。

 そこで、虚無に沈んでいく俺の心にただひとつ沸いた想い。



 かつて弱いが為に守れなかった多くの命に申し訳ない。



 誓ったのに、守れなかった。また守れなかった。

 

 弱かったときも、強くなっても、結局は誰も守れない。



 俺はーーーー。




 ーーくん……ディルくん!!ーー


 遠くから、音じゃない何かが聞こえた。

 心に訴えかけるような、熱心で、可愛くて、暖かくて、優しい声。


 ーーわたしが…………わたしたちがいるよ!!ーー



 その声が俺に教えてくれたのは、とても簡単なことだった。

 昔からずっと変わらない、大切なこと。

 

 

 俺は一人じゃない。



 パッと目を見開き、世界に光が戻ってくる。


「ーーこれは…………」


 俺の世界に戻ってきた光は、神々しい翠の色をしていた。


 破壊のエネルギーは消え去り、結界の眩しい翠が目に映る。


 城の結界と地上の結界、二つの間に浮かぶ俺に、誰かが呼びかけた。


「ーー何をしているんですかっ!!」


 とても懐かしい声だ。


「私の帝王はそんな事で負けません!!」


 前に聞いた時よりは、幾分か強みが増している。


「早く、戻って来て下さい!! 帝王、ディルガノス様!!」


 そこには、一人の少女が剣を掲げて立っていた。

 剣先は結界と同じ翠に輝き、長い金髪はあの時と同じ。


 その名は、エルス。エルス・ケイティス・ゼルガード。


 アイツ、ゲルダの呪縛から解き放たれたエルスが、そこに立っていたのだ。

 あの刹那の間に結界を張り直し、皆を守ったのだ。横にはネスティアとフェルゼンの姿もある。


 

 身体を傾けて彼女たちの方へと飛んでいく。結界に身体が触れると、まるで何もないかのようにするりと通り抜けた。


 半ば形を保っていない噴水の横に足を下ろす。


「エルス」


「ディル様」


 互いに名を呼び合う。頬に手を当てると、確かな温もりを感じた。


「よく頑張ったな。ありがとう、エルス」


 そのまま回復魔法をかけてキズを治してやると、エルスはニコッと笑って俺にも回復魔法をかけてくれた。

 

「あーあ、また一人増えおったぞ」


「どうしようもない奴じゃの」


 フェルゼンとネスティアの、ムスッとした声が聞こえる。


 気づけば俺たち二人を取り囲むように、ニャルルとネスティアとフェルゼン、そしてメリルが近寄ってきていた。


 感動の再会なのだから邪魔をしないで欲しいものだ。


「ふふっ、慕われているのですね」


 二人の言葉にエルスが笑う。

 だが、その笑顔の下に隠れていた黒い何かを、俺は見逃さなかった。


「…………なんだ……?」


「……べつに、何でもないですよ?」


 気になって訊いてみるも、返ってきた言葉に背筋がゾッとする。

 

「……ただ」


 ちょっとだけ後ずさりすると、その間を詰めるように近づいてくるエルス。

 隠しきれない黒い感情が表情に浮き出ていた。


「ちょーーーっとだけ気になることが……」


 長い。なぜにここまで長いのだ。

 湧き出る黒いオーラが、萎縮する俺を圧するように猛々しく燃え盛っている。


 だが、俺は帝王ディルガノスだ。仲間に負けるなど俺の心がそれを許さん。


「おいエルス」


 俺は彼女の話を途中で切るように、威圧的に声を放つ。


「お前、散々な事をしてくれたな?」


「……えっと……何の事でしょう……?」


 今度はエルスが後ずさり、俺が間を詰めていく。


「覚えているのだろう?」


「…………」


 無言で顔を逸らす彼女は、やはり自分が何をしたのか覚えているようだ。


 気が弱いように見えて、昔からエルスはそういう人間だった。常に強い芯を持ち、この俺を相手にイタズラを仕出かすほどの大それた人間だ。


 よもや俺を殺す事など何とも思っていないのではなかろうか。

 そう思わせるのもエルスの人間性が大きかった。


 それに、俺もふざけて殺されるぐらい何とも思わない。ただのイタズラだし、生き返られれば問題ないからな。

 だから、いつも彼女の起こす問題には目をつぶっていた。

 今回も特に例外ではない。


 俺は彼女の顎を持ってグイッと俺の方を向かせた。


「お前の全てを許す」


「……ディル様……」


「だがーー」


 もちろんただで終わらせる気は毛頭ない。


「俺の配下ならば呪い程度に屈するな。帰ったら特訓だ」


「うぅ…………」


 スッと手を放し、俺は俺たちを囲む少女らの間を通り抜けていく。


 そのまま近くに倒れている魔導師の一人の前で立ち止まった。


「お前もそんな下手な演技をしてないで出てきたらどうだ?」


 声に魔力を乗せ、重みのある言葉をかける。


 すると、屍のように動かなかった魔導師が、ヒョイっと跳ね上がるように立ち上がり、その顔を露わにした。


「ーーなっ!?」


「ーーキサマは!!」


「ーー君が……なぜ……!?」


 記憶に深く刻まれた顔に声を漏らすエルスとフェルゼンとメリル。


 俺たちの前に姿を現したのは、エルスとフェルゼンに魔眼で呪いをかけ、メリルを殺した男、ゲルダだった。

ついに登場しましたゲルダさんです!

出てきて消えてのゲルダさん。どんな戦いをするのか楽しみですね!


次回もお楽しみに!!

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