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転生帝者の無双魔導 〜転生した最強魔導師、新能力で超最強に!!〜  作者: しまらぎ
第三章 転生帝者の見えない記憶
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帝者、奈落へゆく

 荒風になびく金髪は長く、あの日の彼女と何も変わらない。

 手にしている剣は、聖黒剣デルスティア。かつて俺がエルスに作った、青と黒の魔石が持ち手の中央にはめ込まれた、可憐な剣だ。


「……なぜ……お前が……?」


 血が吹き出す右腕には二の腕から先が消えている。斬り落とされた腕は瓦礫の上で血を撒き散らしていた。


 だが、そんなものは何一つ目に入らない。


 古き仲間と再びまみえた懐かしさなのか、古き仲間に腕を斬り落とされた事への驚きなのか。

 今はただ、彼女の顔を見つめることしか出来なかった。


 彼女の顔を見つめる視線の端にあるものが、更に俺の目を釘付けにする。


「ーー深緑の帝王」


 転生した記憶が戻った頃から、日に日に魔力が戻り、今では昔以上に魔力に満ち溢れている。

 お陰で特性の効果がより強力になっているのだが、そのコマンドに書かれていたのだ。


 〈深緑の帝王エルス・フレイズ・エトシリア〉と。


 名前は変わっているが、俺が彼女を間違うはずがない。

 たとえ転生の魔法で不純物が混じろうとも、だ。


 しかしーー。


「ーーお前……その眼は……」


 エルスの眼には色が無かった。正確に言えば、魔法にかけられていた。

 この眼は、ごく最近に見た、フェルゼンのあの眼だ。


「ーーゲルド……」


 ポツリと漏れた名に、エルスは俺の眼をまじまじと見た。


「どうやら、あなたがこの騒動の原因のようですね」


 血塗られた剣を俺に向け、彼女は言った。

 

 ーー束縛の魔眼。


 なぜエルスにもかかっているのか謎ではあるが、マスクの男であればエルスには勝てる。フェルゼンよりはエルスの方が弱いからな。

 理由こそ分かりはしないが、アイツが関わっている事だけは間違いない。


 エルスの眼を見て、殺意があるかを確認する。


「大精霊祭まで残り二日。あなたのようなならず者を街に残す訳にはいきませんから。これは仕方のないことです」


 首元に剣が当てられ、フードの紐に赤黒い染みを作った。


 俺は瞬きをする間に後方へ飛ぶと、元いた場所の空気が斬れる。

 ここにいる他の者であれば、きっと死んでいた。


「ーーやらねばならない……か……」


 呟いて、右手に剣を握る。デルスティアには魔術破壊の力がある為、どのような魔剣も意味をなさない。

 少しの時間があれば精製可能だが、彼女が相手ではそんな隙は生まれない。


 ただの長剣をエルスに向けながら、彼女の息づかいとエリル達の動向に集中する。

 レミもケルンも復活し、今は店と店の間の路地に隠れていた。樽の裏で気配や魔力をかなり抑えている。単に、ただならぬ魔力の圧で固まっているのかもれない。


 俺の視線を追うように、エルスは視線の一端にエリルたちを捉えた。


「……あなたの仲間たちには手は出さないと誓いましょう。ですから、黙って私に殺されなさい」


「断る」


「では、仕方がありませんね。あなたには苦痛を味わった後、死んでいただきます」


「それも断る」


 俺を殺すなどと出来もしない事を言うエルスに向かい、俺は剣を下段に構えた。

 対して、彼女は抜刀の構えを見せる。


 彼女の剣撃は疾風の如き速さで有名だ。剣を抜いてから相手を切るまで、抜刀で彼女に敵う者は俺を除けばただ一人だけだった。

 鞘から出ている状態であれば、尚の事だ。


 通りに人はほとんどおらず、さっきの騒動で店のほとんどが閉められていた。

 アスガルの時とも違い建物の窓も全て閉められて、時が止まったような空間にいたのは俺とエルスに、エリルたちとシラフたち一行だ。

 

 だれもが息をのんで見守っていた。


 そして、ついにその瞬間が訪れる。

 俺は脚を動かし始め、エルスの剣が素早く動き出す。


 音の速さより速い剣のスピードをかわし、俺の剣先は確かに彼女の首元を捉えていた。

 このまま行けば彼女の首を擦り、その傷から魔法で束縛を解ける。


 だが、ほんの一瞬の間にそれは起こった。


「ーーーーディル様…………」


「ーーっ!?」


 小さな小さな声が、小さな口の動きが、俺の動きを止めた。

 そして、また一瞬のうちに全てが起こる。


「…………っうぐっ……!?」

 

 気がついた時には、俺の腹を刃が貫通していた。大量の血が飛び散り、視界を赤く染めた。


 薄く聞こえる悲鳴はエリルだろうか。誰かの泣き声も聞こえる。

 叫ぶ声と、嘲笑う声。

 いろいろな声が聞こえても、それを理解できるほど頭は動いていない。


 なによりも俺の頭の中を支配していたのは、痛みだ。


 ーー痛い。最後に感じたのはいつか。


 右腕にも、腹にも、痛みを感じる。

 デルスティアに斬られた所為で魔術破壊され、体内の魔力回路が狂ったのであろう。おかげで魔法は完全に使えない。

 なんにせよ、長らく消えていた痛みという感情が復活したのだ。

 

 

 そんな痛みに苛まれるなか、俺の意識はどんどん遠くへ行ってしまう。

 視界はぼやけ、痛みも次第に感じなくなり、音という音が何も聞こえなくなる。

 

 やがて全てが真っ暗闇に包まれそうになった時、一瞬、エルスの口元がニヤッと笑ったように見えた。




 ーー俺は死んだのか?


 何もない空間で、ふとそう思った。

 死んだら生き返る。

 それが常識だった俺の、二度目の死を感じた瞬間だった。


 身体に重みを感じない。

 痛みもない。

 それなのに、ただどこかへと落ちていく。


 ーーもう……いいか…………。


 流れに逆らう事もなく、眼を閉じて流れに身体を任せる。


 

 どのくらいの時間が経ったのか、俺は意識を取り戻した。


 側頭に当たる柔らかい感触。

 視界はとてもぼんやりとしている。

 ポツポツと、あたりに舞っているのは桜の花だろうか?

 

 ーーとても、いい匂いだ。


 暖かな風が心地よく、風に乗せられてやってくる優しい香り。

 とても懐かしい匂いだった。


 ーーあれ、おかしいな……?


 頬を、なにかが伝っている。

 それは止めどなく流れていた。


 涙が止まらなかった。


 ーー俺は……どうして……?


 悲しくはなかった。さして嬉しい訳でもなかった。

 なのに、涙は一向に止まる気配がない。

 

 涙にぼやける視界の先に何かがいた。


 ーーエリル……じゃない。


 はっきりとは見えない。

 でも、彼女ではなかった。


 ーーエイミー? ……いや、レイミー……でもない。


 魔力は感じられないし、どことなく似ているような気がしてならない。

 それでも、彼女たちじゃない。


 ーーレミ……ケルン……ネスティア……フェルゼン……。


 どれも違う。

 感覚的ではあるが、この四人じゃない。


 ーーいったい……だれが…………?


 相変わらずの視界の中で、俺はぼやけた花びらを眺めていた。

 すると、何かが俺の頬に触れた。


「ーーやっと、起きたね」


 柔らかな、そして聞き覚えのある声が聞こえる。

 左頬に当てられた手のひらが、優しく俺を撫でた。


「ーーいつもお寝坊さんだねーー」


 女の子の声が俺に語りかけるたび、視界が少しずつはっきりとしていった。

 そして、ようやく俺の眼に映ったのは、とても懐かしい茶色の髪に、ほんわかとした女の子の顔だった。


「ーーディルくん」


 また、頬を大粒の涙が伝っていった。


 暖かな風が桜の花を舞い躍らせ、そんな木の下でぬくぬくと寝ている俺に膝枕をする彼女。

 ゆっくりと伸ばした手のひらは、今度はちゃんと彼女の頬へと届き、その温もりをしっかり俺に伝えたのだった。

いやー、なんだか大変なことになりましたね。

戦ったり再開したり刺されたり、なんだか可愛そうにも見えてしたり……。

なんて、最強なんだしどーせどうにかなるかな、とか思ったり。

気になる次回も三日後くらいです! お楽しみに!!

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