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転生帝者の無双魔導 〜転生した最強魔導師、新能力で超最強に!!〜  作者: しまらぎ
第三章 転生帝者の見えない記憶
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帝者、護られる

 大剣が力強く空を斬り、いくつもの魔法が飛び交う。


 相手方は大男が大剣を、細身の男が魔導書を片手に火、水、風の魔法を連発している。酔っ払いのオッサンに限っては酒瓶で攻撃していた。


 こちら側は俺の前で魔導書を開く少女三人組だ。

 それぞれ、エリルは水と風と光系統、ケルンは光と雷系統の魔法を使い、レミは長剣で迎撃中だ。


 そして肝心の俺はというと…………その少女たちに守られていた。


「…………おい、お前たち、無茶はするなよ?」


 俺が片付けようと思っていたのだが、魔法を使おうとした瞬間にレミたちに止められたのだ。


 私たちの力を見せてあげる、だそうだが……そう言われても、相手の魔導師はなかなかの強さだ。正直なところ彼女たちの力でどうにかなるとは思えない。

 

 しかし、彼女たちの能力を知らないままなのも良くない。

 ……仕方ない、今回ばかりは見ているとするか。


「あなた達、いったい何者なの!?」


 上手く大剣と酒瓶を受け流しながら、レミが叫ぶ。

 酔っ払いのオッサンは酒瓶を振り回しているだけで、特に強い訳でもない。ただ、大剣の大男は威力が高い分危険だ。


「お嬢ちゃんたちにゃあ用はねえさ。だが、名乗ってはやろう」


 そう言うと、オッサンは酒瓶の蓋を開けて、中身を全て飲み干してしまった。


「ーー俺様の名はシラフ! この街で俺の右に出る奴は一人しかいねぇ!」


「…………なんだ……いるのね……」


 あからさまに肩を落とすレミの剣が一瞬鈍ると、すかさず大男が大剣を振り下ろす。


 ドガンッと大きく音が響き、レミは間一髪で避けたものの、その一瞬で地面に敷き詰められた石レンガに大きな亀裂が出来てしまった。上手く避けはしたが、砕け散った石レンガの破片がレミの頬をかすめた。


「おい、ヒョロ男。女に護られるとはいいご身分だなぁ!!」


「……ヒョロ男で悪かったな、負け犬風情が」


「ーーチッ、誰が負け犬だと?」


 バリンッと割れる酒瓶。今度は投げつけられたのではなく、シラフの握力によるものだった。


 酒を飲んだあたりから、シラフの魔力が異常に高まっているのが感じられる。おそらくは狂人化の類いだろうが、これを含めてしまえば完全にこちらが劣勢だ。


「テメェ、調子に乗るのはいい加減にしろよ? さもないと……そこのお嬢ちゃんたちがどうなるか……なぁ、分かるよなぁ?」


 筋肉が紫付き膨れ上がっていく。目は充血し、身体中に異色な血管が浮かび上がると、一気にシラフの魔力が上昇した。


「な、なんなの、これは?」


「まさか……狂人……?」


 狂人を知っているか。さすがはケルンだ。

 古来から伝わる狂人ではあるが、この時代に使える者は数少ない。そもそも強くないから衰退してきたようなものだが、今となっては強者の部類に入るのだろう。


「……風の精霊よ、大いなる風を呼び起こしーー」


 エリルが詠唱を始めると、彼女の魔導書から大きな光が漏れ、魔法陣が展開された。


 風魔法の斬撃か。狂人には光が優位だが、そもそもの実力差が大きすぎる。

 魔力を解放した時点での圧が弱すぎるのだ。


「ーーこの世に烈風を吹き荒らせ! 風斬撃(セルフレア)!!」


 魔法陣より放たれるいくつもの斬撃が、敵方三人に襲いかかる。

 しかし、俺の予想どおり、狂人化したオッサンには直撃しても傷一つつかず、大剣で身を守る大男と結界を張る魔導師には当たらなかった。


 だが、その隙を突くのがうちの女衆だ。


「隙ありっ!!」


「ーーっグァハッ!!」


 大剣で身を守っている大男の後ろに、レミが素早く回り込み、その背中に大きな一撃を入れた。

 血が辺りに散り、剣先からポタポタと垂れている。


 まさか本当に斬りつけるとは思わなかったが、案外血には慣れているようだ。

 大男は地に倒れ、大剣から手を離した。

 レミは剣を一振りして血を払うと、息を整える。


 再び余裕を見せるレミだったが、そう上手くはいかない。


「ーーっうぐぅっ!?」


「ーーレミッ!!」


 油断したレミの腹を、狂人オッサンの骨折してたはずの左腕が襲った。大男の後方に十メートル程吹っ飛んだレミの元へ、ケルンが走って行く。

 だが、これもまた浅はかな判断だ。


「……仲間より、自分を大切にしな……」


「ーーんぁっ!?」


 スッと瞬間的にケルンの前に移動した細身の男は、ケルンにボソッと囁くと、肩に手を当て魔導書を介して魔力を強く流し込んだ。

 強力な魔力を一気に流し込まれ、ケルンまで気絶してしまう。


「レミさん……ケルンさんも…………」


 流石に仲間を二人もやられてしまえば、エリルにも焦りが出てくるか……。彼女の魔力がどんどん不安定になっていく。集中力が欠けてしまえば魔法は使えないのだ。


 少し悪いことをしてしまったか。皆の実力を知るためとは言え、本当なら全て俺が止めるべきだった。


 エリルに近づいて、肩をポンとする。

 

「ーー選手交代だ、エリル」


「リュウヤさん…………私たち、自分でやるって言ったのに……」


「気にするな。それよりあとの二人を見てやれ。回復は既にしてある」


 コクリと頷いてケルンとレミの方へ走っていくエリル。隙だらけにも関わらず、魔導師も酒瓶もエリルには目もくれなかった。

 理由は簡単。

 奴らは俺が強いことをこいつらは知っているから。殴っただけで骨折したのだ。殴られた俺でなく、殴ったあいつが。


 いくら狂人化して強くなり、理性を半分失っても、本能的に強い相手と理解しているのだろう。

 もちろん仲間の魔導師もである。


「ようやくやる気になったようだな、ヒョロ男」


「お前こそ、少し太ったんじゃないか?」


 互いに挑発しあい、溢れんばかりの魔力がぶつかり合う。

 俺の魔力圏内では魔導師は無力だ。既に魔導書から光は失われている。ついでに言ってしまえば、魔導師の彼は動くこともままならない。


 ひと睨みすれば、ケルンに流し込まれた量のおよそ一万倍の魔力が彼を襲う。

 死にはしないだろうが、魔力回路は二度と使えないだろう。


「さて、これで一対一だな」


 チラリと視線を動かし、エリルが二人を安全な位置へ連れて行ったのを確認する。

 そのとき、エリルの口元や頬に血が流れた跡が目に映った。


「……よくも俺の仲間をいたぶってくれた」


 魔力を込めて一歩を踏み出すと、荒ぶる魔力が更に揺らいだ。


 借りは返さねばならんからな。たまには全力で戦うというのも悪くはないだろう。

 だが…………完全魔力解放だけで街がな。それにエリルたちも間違いなく死ぬ。

 

 安全に、かつ一撃で、それでいて丁度良い痛みを与えるには…………アレしかないな。


「ーー悪いが……いや、悪くはないが、お前には死より苦しい痛みを与えてやる」


「貴様、目が悪いらしいな?」


「お前は頭が悪い」


 シラフは狂人化によって底上げされた力の全てを左腕に注いでいた。魔力が左腕から火花閃光となって溢れんばかりに騒いでいる。

 

 一歩ずつ、ゆっくりと間合いを詰めながら、俺も右腕に力を込めていく。

 無限にも等しい魔力を右腕に、右拳に集中させれば、その力は大気を揺らし、石レンガの亀裂を更に大きなものとした。


 俺たちの距離は僅か五メートル。


 強大なる魔力は天候をも変え、力を込め終わった事を知らせた。

 それだけの魔力の中、俺の強さに未だに気づかない狂人シラフは、その脚に大きく力を入れた。


 脚を踏み出せば地面に足跡を残し、雷雲の暗い街に吹き荒ぶ風をかいて進む。

 同時に踏み切る俺の足元には、原型を留めない大穴が空き、風よりも、崩れる地面の音が進むよりも速く進んだ。


 一瞬のうちに繰り広げられる絶大な力のぶつかり合い。

 二つの拳が混じり合う前から、バチバチと音を立てて周囲を破壊していく。

 

 そして、拳が混じり合う寸前、その一瞬の間に、それは起こった。


「ーーやめなさいっ!!!!」


 ほんとうに、一瞬だった。

 宙を大量の血が舞い、右腕が回転して飛んでいくのが目に映る。


 だが、俺の眼が捉えていたのは、血まみれの右腕ではなかった。


 懐かしい顔、懐かしい剣。そしてなにより、俺の耳に届いた声。


「ーーーーエルスーー」


 傷を抑える事も、直すことすらせずに立ち尽くす俺の前に居たのは、五千年前に別れを告げた、俺の従者、エルスだった。

だんだん三章らしくなってきましたね。

昔の女の登場によってどうなるのか、楽しみです。

次回も三日後です。お楽しみに!

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