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曲決め


「今日も今日とてピアノ弾く〜っと」

私は調子外れなメロディを口ずさみながら自転車を駆る。


というのも、先日実季先輩が送ると言っていた楽譜が昨日の夜届いたからだ。

最近はずっと似たような曲ばかり弾いていたので、新しい曲に挑戦するのは心が弾む。


いつものように練習室に入り、タブレットを立ち上げ、早速メールに添付された楽譜ファイルをダウンロードする。



「うわ…曲数多いな…」

メールを見ると二週間後に曲の出来栄えを見て本番で弾く曲を決めるとのこと。

「なるほどねぇ…。

パガ超 (パガニーニによる超絶技巧練習曲集)もやらないとなんだねぇ…。

よし、やる気出た。」


難しい課題を提示されればされるほど燃えるのが自分のいいところだと思う。


そう思いつつ練習を始めた。

ちなみに、送られてきた楽譜は全部で18曲もある。

リストやショパンなど、難しいことで有名な作曲家の曲がずらりと並んでいる。


私は来る日も来る日も練習室に通い詰めて練習しまくった。

授業とバイトがあるときと寝る時間以外はほとんどずっと練習室にいたと言っても過言ではない。


5日ほどで18曲全ての曲を形にすることができた。

10日ほど経つと18曲の完成度がバラつき始めた。

曲によって好きな曲、弾きやすい曲、ノリやすい曲など様々にあるため完成度がバラついてくる。

その中で、私がこれだけは勝負すると決めた曲は

リスト/ラ・カンパネラ、鬼火

ショパン/英雄ポロネーズ、幻想ポロネーズ、舟歌

の五曲だ。

特に幻想ポロネーズと舟歌は楽譜もさることながら表現が難しい。

これまで楽譜が難しい曲は挑戦してきたがそれに加えて表現もとなると未知の領域だと思う。

だからこそ挑戦したい。



そして、やってきた実季先輩。


「よし、曲決めようか!」

練習室に入るなり開口一番実季先輩はそう言った。


「はい!頑張ります!」


私はおもむろに弾き始める。

18曲全てを弾き終えるともう疲労困憊でどうにもならなくなった。

お腹が減りすぎて動けなくなってしまった。


「そういうことって本当にあるんだ…」

実季先輩は驚きながら笑って飴をくれたので、少し復活した。


「とりあえずカフェでも行って腹ごしらえしようか…。」

実季先輩の気遣いが脳にしみる。


私と実季先輩は大学近くのおしゃれなカフェで曲決めをすることにした。


「私はシーフードドリアで。」


「じゃあ私はカルボナーラ大盛りで」

大盛りを頼んだのはもちろん私だ。

しばらくすると二人分の料理が運ばれてきたので、食べながら実季先輩と話し合う。


「まず最初に言いたいのは、18曲全てが形になってると思わなくてびっくりした。

ほんっとにすごいね!!」


私としてもこんな美人で可愛い先輩にそんな手放しで褒められると少し照れてしまう。

そして、カッコつけたいので変に謙遜してしまう。


「いや、そんなことないっすよ。

まだまだっス。

てかむしろ全然的な。」


「そういうの似合ってないからやめな?」


「アッ、ハイ」


軽く心を砕かれた。


「私はやっぱりカンパネラと鬼火と英雄、幻想、舟歌でいいと思う。完成度が他の13曲と段違いだった。むしろこれしか練習してないでしょってレベル。」


「まぁ。確かに自分でもそんな感じです。

なんか弾きやすいし好きな曲だったんで、同じ時間練習しても出来上がりが違うんですよね。」


「なるほどね。じゃあこの5曲の中で一番やりたいの三つ選んで」


「カンパネラと鬼火と英雄ですかねぇ…」


「じゃあその三曲を本番でやりましょう。」


「そんなあっさり?」


「今の段階で出ても他のほとんどの参加者よりはうまいよ

でもまだ私の方がうまいけどね」


「 (そんな感じなんですねぇ。) そう言って強がる先輩が可愛すぎて鼻血出そうだった。」


「多分考えてることと口に出してること逆だと思う。」


「あっすいません。」



そうして私が学園祭で披露する曲は

リスト作曲、パガニーニによる大練習曲集より第3番嬰ト短調ラ・カンパネラ

超絶技巧練習曲集第5番 鬼火

ショパン作曲、ポロネーズ第6番変イ長調 英雄


の三曲になった。


しっかり練習しなくちゃ!!


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