幸祐里回
幸祐里「私の回も用意してくれよな!!!!」
なんか私もすごい久々な気がする。
まぁそんなことはどうでもいっか。
ヒロがアメリカに家を買うと言った時は驚いたけど、その後の説明とか、みんなの話を聞いていると、借りるよりは確かに。と思うようになった。
アメリカの物価がものすごいことになってるっていう話はニュースでもやってるし、この前出たテレビ番組でも、学者の人がそんなことを言ってた。
私も緋奈子も大学に在学してた頃からちょこちょこテレビや雑誌に出るようになって、今ではちゃんと暮らしていけるだけのお給料もいただけている。
でも最近はヒロの家で暮らしてるから家賃もかかってないし、あんまりお金も使ってない。
払おうとしてもヒロが止めてくるから。
私も稼いでるんだぞ〜!って言っても多分ヒロの100分の1くらい?下手したらもっと少ないかも。
だって14億の家買うくらいだからねぇ。
最終的には17億円だったらしいけど。
でもアメリカの一等地の家としては破格なんだって。
もう1年、もしかしたら半年くらいしたら五倍くらいに跳ね上がるかもってか言ってた。
確かに再開発地域だけど、ちょっとアクセスが悪いのかな。地区の端っこの方だから。
それでも治安はかなりいいし、警備の人の巡回も多いらしい。
私たちも移り住むにあたって、ヒロは他にもなんかするらしいけどその辺はよくわかんないや。
家の契約を終えてから、ヒロは嘘みたいに大きいウォークインクローゼットから、嘘みたいに大きいスーツケースをたくさん引っ張り出してきてたくさんの荷物を詰め込んでた。
そんな大きなスーツケースをほとんど引っ張り出してきたのに、ウォークインクローゼットの中にはまだまだたくさんのスーツケースがある。
しかも、全部同じメーカーなんだよね。
ヒロに影響されたのか、緋奈子もスーツケースを集め出した。
私は、スーツケースに特にこだわりは無いので、ヒロのスーツケースを使わせてもらってる。
おかげさまで、どの現場にスーツケースを持っていっても「センスいいね」と褒めてもらえる。
究極的に言えば、正直私は服装のこだわりもあんまりない。
ヒロの服装はいつもすごいおしゃれだなぁと思うけど、そんなセンスは私にはない。
お店のこだわりはあるので、そのお店で勧められたものを買っている。
だから最近家ではよくスエットで過ごしている。
なんかお化粧の仕方も忘れ始めたような気がする。
今日はヒロが出発する日なので、ちょっと気合を入れてみた。
荷物の搬入を手伝わないといけないので、上下ネペンテスのジャージセットアップ。
みんなでたくさんのスーツケースを車に詰め込んだ。
緋奈子はじゃんけんに負けて私たちより1つ多いスーツケースを持つ羽目になっていた。
たくさんのスーツケースを詰め込んだ後は、ちょっとしたパーティーをしてヒロを送り出す。
送り出すといっても、今回車の運転は私なので、私はもうちょっとだけ仕事がある。
免許を取ってからヒロの車の運転をさせてもらうことが増え、この大きな車の運転にもだいぶ慣れてきた。
とは言え、ハンドルは重たいし、曲がるときにハンドルを切ってもハンドルは自動で戻らないので、自分で戻す必要がある。
自動車教習所では、そんなことを教えてくれなかった。
でも悪いことばかりじゃない。
運転席からの視界は高く、周りが見やすい。
馬力があるので、車も運転しやすい。
後からあおられたりもしないので、落ち着いて運転できる。
何より車が可愛い。この水色のゲレンデヴァーゲン(ヒロが発音にうるさい。)はほんとに気にいっている。
「だいぶ運転慣れてきたよね。」
「そうね〜、確かにちょっと気をつかうけどもうあんまり不安は無いかな。」
「よかったよ。ほんとに。緋奈子はいまだに怖がるからさ。」
「確かに高級車だしね。」
「間違いないね。」
荷物がたくさんつめるし、いいことずくめなんだけどな。
「なんかあっという間だったね。」
「うん思ったより早かったなぁ。」
「ね、早かった。」
「緋奈子も早かった?
私の方も、なんだかんだ準備する時間足りなかったかも。
もっと日本で買いたかった楽譜もあるし。」
「じゃあ、それは帰ってきてから買い足しだね。」
「うん、そうする。」
車を空港に走らせる車中ではそんな話をしていた。
たぶんもうちょっと前なら、もっと泣き叫んで寂しい寂しいと言っていたかもしれない。
でも今はなんかそんな気持ちないんだよね。
なんだろ。
夫婦っていう自覚があるからかな。
この人が帰ってくるところは私たちのところっていう絶対的な自信と今の関係性が気持ちを変えてくれたのかな。
すぐに会えるしっていう思いもあるし、なんならすぐ行くしって思うのか。
そんな物思いに耽っていると車は空港に到着した。
空港の駐車場に車を止め、ヒロがどこからともなくカートを持ってきて、それにスーツケースを乗せる。
カートに山盛りになったスーツケースを見て、なんか変な笑いが込み上げる。
「荷物多すぎでしょ。」
「たしかに。」
1人でこの量を持って飛行機に乗るのがなんか笑える。
密輸人みたい。
そのカートをヒロが押して、私はヒロの小さなスーツケースを引っ張っている。
今回ヒロはファーストクラスでアメリカに行く。
私たちも多分マイルがすごく溜まっているので、アメリカ入りする時はファーストクラスで行こうと思う。
今回ヒロがチェックインするカウンターはZカウンター。
なんか離小島みたい。
「じゃあ気をつけてね!」
「うん、ひと足先に現地でみんなが暮らせるように整えとくね。」
「よろしく頼んだ!!!!!」
「任された!」
寂しさはない。というと少し嘘になるけど、今はむしろ新生活に向けたワクワクの方が勝ってるのかもしれないな。
ヒロを送り出した後、特に予定もないので、車を運転してちょっとドライブすることにした。
「久々に1人ドライブだ。」
駐車場から出て、頭の中で行き先を思い浮かべる。
まず、洗車は行きたいよね。
この車乗るの私とヒロだけだし、最近洗えてないし。
てことは、洗ってもらってる間にどこか買い物行けるところがいいよね。
とりあえず表参道の方行ってみようかな。
私は車を外苑方面に向かわせることにした。