緋奈子回1
「私の出番少なすぎませんかね?」
こんにちは。緋奈子です。
今は藤原緋奈子という名前を名乗っています。
パスポートとか、仕事とか、口座とかそういうのは望月のままなんだけどね。
そんなことより、私の回少なすぎませんかね?
いや、私のというより、私たちの。
私と幸祐里の。
最近はヒロくんの話ばっかりじゃん。
最後の登場も家を買う時以来だし。
最後のタイトルに名前がある登場いつよ?
112回のアメリカ編以来じゃない?
ということで、本編のキリが良さそうなので緋奈子の回です。
緋奈子ファンの皆様お待たせしました。
「なんかすごい久々な気がする。」
「そう?」
「そんなことより食べようよ。」
「そうだね。」
「そうしようそうしよう。」
ヒロくんにあらかじめ伝えられていた麻布十番の鉄板焼きのお店の個室に入るとすでに2人は席について飲み物を選んでいるところだった。
実季ちゃんはもう少し遅れるみたい。
さっき連絡があった。
そう、呼び方についてなのだけど、
実季さんって呼んでてら、なんか先輩みたいな、とかやめてよ〜という話になって、最終的に私は実季ちゃんで落ち着いた。
実季ちゃんは私のことひなちゃんって呼んでる。
実季ちゃん日本にいる時は予定いつもつめつめなんだよね〜。
どうやら今日の話は、9月からのアメリカ行きの話らしい。
確かに、まだざっくり大きな話としてしか聞いていなかったので、ここでこの話をしっかりと詰めておきたい。
私と幸祐里はどちらもフットワークが軽く、肝もすわっている方だと思うので、もともとアメリカにはついていくつもりだった。
そのことをヒロくんに話すとえらく感動していた。
正直、この世の中の事の大半は、根性とやる気で何とかなる。
そのあとは向こうで住む家をどうするか、という話になった。
私と実季ちゃんは、圧倒的に戸建てを推しているが他のみんなはどうだろう?
「一応ね、向こうに4年住む予定だから、今の家は賃貸で回して、なおちゃんにお金が行くようにして、
私たちは向こうに家買っちゃおうかと思ってるんだよね。」
「うん、いいと思う。」
「賛成。ちなみに実季先輩も賛成だよ。
前から向こうに住むの賃貸より買うのがおすすめって言ってたし、もし私がいないときに家の話になったら戸建てを猛プッシュしてって言われてた。」
と言うことで、戸建ての家を購入することに決定した。
その後、ヒロ君が14億円の家を買うと言い出したときには、私たちは驚きのあまり彼の正気を疑ったが寛くんの説明によると、どうやら借金をせずに購入することができるらしい。
できるらしいと言うと、詐欺のような気もするが、今ある金融資産の処分と貯金で賄えるとのことだ。
さすがにヒロ君が買う。家に無償で住まわせてもらうと言うのも施しを受けている感じがして嫌だ。
私だって仕事をしないで、ヒロくんから、お金をもらって生きているわけではない。
たまにモデルをしてみたり、たまにテレビに出てみたり、たまに家に出てみたり。
とんでもなく売れっ子と言うわけではないが、全く売れてないわけでもない。むしろ人気の方だと思う。
なので、お金はちゃんとある。
私はもらっているお給料の大半を投資用の口座に入れてブン回している。
お金の計算をすることが嫌いではないので、私のお仕事がどれくらいの価値を持っていて、私のお仕事がどれぐらいの利益を出しているのかを把握している。
なので、どれぐらいのお金だったら私が家の購入を手伝えるかちゃんと計算した上で、5000万円という金額を提示した。
「私は5000万出す」
「えぇ!?」
ヒロ君がめっちゃ驚いてる。
「じゃ私1億!」
幸祐里は対抗して私の2倍の1億と言った。
彼女はあまり投資に対して良いイメージがないと言うことで、私と違って資産のほとんどを現金で持っている。
だからこういう時どかっと大きく出すことができるのは強みだよね。
「幸祐里多分それだと、口座のほとんどのお金を出すことになるんじゃない?」
「そうだね。でもこういう時じゃないとお金使うことあんまりないからさ。」
「それはさすがに申し訳なすぎるよ。
ひなちゃんは大丈夫なの?」
「私は、毎月投資会社から来る報告書にも目を通しているし、私が一回のお仕事でもらうお金もちゃんと把握してるし、毎月の給与明細にもちゃんと目を通しているし、お金のことに関しては心配しないでも大丈夫だよ。」
「すごいね…。」
「ひなちゃんお金に強い…。」
「私、こう見えても簿記持ってるから。」
実は私は高校生の時に簿記資格を取得した。
そんな凄い奴じゃないけど。
「じゃあ、3人同じ額で5000万ずつでいいんじゃない?」
「えっそんなに?」
「賛成!」
幸祐里の賛成をもらえたので、そういう風に決定した。
もし実季ちゃんがごねたら?とかってヒロくんが心配してるので、実季ちゃんの説得は私が受け持とう。
ごねるわけないと思うけど。
飲み物を注文して、前菜が到着して、そろそろお肉がやってくるかなというところで、実季ちゃんが合流してきた。
「お待たせ〜」
「おぉー!おかえり!」
「実季ちゃんまってたよ〜!」
「実季ちゃん久々!」
幸祐里はなんだかんだで、実季ちゃんと会うのが久々だ。
「ひなちゃん髪色変えたんだ!似合う!」
「ほんと〜?よかった〜!」
「幸祐里前の時ごめんね!めっちゃ会いたかったけど会えなかった〜!」
「大丈夫よ!いまあえてるから!」
実季ちゃんが場に来るとわっと華やぐ。
可愛らしさと人懐っこさと、話のうまさ、声のトーン、全てが最高だ。
私の推しでもある。
「さっき決まったんだけど、家買うことにした!」
鉄板焼きのお肉が目の前で焼かれ始めて、食欲をそそる匂いが嗅覚を刺激し始めたところでヒロくんが切り出す。
「やっぱそうしたんだ!いいと思うよ!
もちろん戸建てでしょ?」
「うん、戸建て。みんな戸建てが良かったみたい。」
「そうだよね。知らない人と集合住宅はちょっと怖いよね。
アメリカだし。」と
確かにそうだよね。
アメリカはみんな銃持ってるし。
「いくらのお家にするの?」
「14億だって。」
「あーやっぱそれぐらいするよね。
むしろ安いんじゃない?
ニューヨークのどこ?」
実季ちゃんはあんまり驚いてない。
向こうの住宅事情に驚いているのは私だけなのかなぁ。
幸祐里の方を見ると、実季ちゃんが驚いてないことに驚いていた。
「マンハッタンの橋を渡って向こう側。」
「いいじゃん!めっちゃお買い得だと思う!!」
お買い得なんだ…。
ほんとすごい世界だなぁ。
「じゃあいくらずつ出す?」
「さっき1人5000万でどう?って話になったよ」
「ああ、いいね。それぐらいなら全然出せるよ。
てゆうか、本当はヒロ君が自分の仕事の成果を1つ形が残るものとして残したいんでしょ?」
「ばれたか。だからそんなにお金出さないでいいんだよ。」
「そういうことか」
「なるほどなぁ。」
私も1億でも2億でも出せるけど、もし何かがあって働けなくなっても大丈夫なように、金融資産やお金はある程度残して5000万円を提示したけど、本当はヒロ君は自分1人で出したかったんだな。
ここは男女の違いかもしれない。
「じゃ5000で決定!さすがに10分の1も出してないんだからヒロくんも許容するでしょ?」
「もちろん。心遣いがありがたいよ。」
やっぱり実季ちゃんは先輩だけある。
話をまとめるのがうまいし、ヒロ君の気持ちもよくわかってる。
私たちの頼れるボスだ。
欲を言うと、もうちょっと家に帰ってきて欲しい。
こんな感じで、家を買うことが決定し、今日の食事会は、購入決定パーティーと相成った。