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朝活

さて早朝。

機内でしっかりと寝たためか、眠りは浅かった。


むかっと起きてスマホで時間を確認すると、まだ朝の5時。


「ピアニストの朝は早い。」


六月初旬のニューヨークといえば朝は涼しく日中は割と暑い。暑がりなニューヨーカーたちはほとんどが半袖で過ごし始める。

例に漏れず私も半袖のトレーニングウェアに着替える。


カードケースにクレジットカードとほんの少しの紙幣だけ持ち、ナイキのアームバンドにスマホを入れ、スポーツ用のイヤホンをセットして家を出る。


目的地は、自宅からほど近くのウィリアムズバーグ橋を渡って、私の住むウィリアムズバーグエリアの対岸にある公園、イーストリバーパークだ。


地図上での距離は4キロほど。

大体40分ってとこか。


家を出て15分ほどすると気づいた。

「結構きついな…」

思っていたよりもアップダウンが激しく、体感では中々の運動強度を感じている。

心拍数も普段より少し高い。


ウィリアムズバーグ橋に着くと、大きさに圧倒された。

「でっか。」

普段、車で渡っていると案外わかりにくいものだけど、生身の人間として対峙すると、大体のものは大きさに圧倒される。

この橋もそうだ。


「よし、行こう。」

徒歩でこの橋を渡る人も多く、この時間帯はランナーも多い。

えっほえっほと走っているとおじいちゃんに抜かされた。

「地元民は強いなぁ…。」

私はペースを乱さず淡々と走り続ける。

眼下に地下鉄が走っているのが見える。

反対側には雄大なイーストリバーとマンハッタンのビル群が。


「ニューヨークだぁ…」


声に出すつもりはなかったが、声になってしまっていた。


橋を渡りきり、程よいところで角を曲がり、イーストリバー公園に到着した。


「お、キッチンカーがある。」


さすがに走ったばかりで食べ物を入れると脾臓のあたりが痛くなるのでスポーツドリンクにしておく。

飲むと熱った体にひんやりと心地よい。


公園の広場では思い思いにみんなが運動している。

ヨガをする人もいれば、太極拳をしている集団もある。

マッチョたちは筋トレをしている。


「やぁ、私も混ぜてもらってもいいかい?」

私が声をかけたのはマッチョ達だ。

マッチョはトレーニーに対して世界中どこでも優しい。


「お、新入りかい?」


「トレーニーは大歓迎さ」


「さぁ、こっちへ。」


ほらね。


マッチョ達に囲まれて私も筋トレを始める


「君の筋肉は大きさこそないが、実用的な素晴らしい筋肉だ。引き絞られた鋼のようなしなやかさと力強さを感じる。」

マッチョ達は暇さえあれば互いの筋肉を褒め合う。

「あなたは芸術的なまでに大きな筋肉をしていますね。」

私も負けずに褒める。


筋肉を褒め合いながら、

プッシュアップやプルアップなどの筋トレを一通りこなすとどうやら解散らしい。


「私たちは特になんという集まりでもないのだが、自然と集まってきたマッチョだ。

大体この時間には誰かいるから来るといい。」


「ありがとうございます。ぜひ参加させてもらいます。」


「あと困ったことがあるとあいつに声をかけたらいい。

きっと来たばかりで大変だろう。」

彼らと世間話をするうちに最近こちらに越して来たことを話した。

今はまだ仮住まいだが7月半ば頃正式に引っ越してくるということも。


「本当ですか!助かります!」


「彼は弁護士をしている。」

マッチョの社会的地位は高い。


「よろしく。マンハッタンで事務所を開いている。

同じマッチョだ、なんでも力になろう。」


「よろしくお願いします。」


「そして、あそこのあいつは警察官だ。」


「なんかあったら俺に言ってこい。

大体の犯罪は見逃してやる。」

マッチョは寛容だ。

「お世話になることがないように、真面目に暮らしますよ。」

笑いながら握手をする。


「そして私はニューヨーク市議のアダムスだ。」

やはりマッチョこそが正義。

きっとこの人は悪いことをしていない。


「アダムスというと…?」


「よく知っているね、ニューヨーク市長のアダムスは私の兄だ。」

アダムス市長といえば黒人で2人目のニューヨーク市長である。

確かに見たことがあるような気がする。


「では何か悪いことをするときは相談させてもらいますね。」


「面白い悪いことなら大歓迎だ!」


楽しいマッチョ達と交流したあと、また走って家まで帰る。

家の近くにまで来るともう9時前だ。

早いお店ならそろそろ開き始めている。


家の近くのグロサリーストアで朝ごはんにめぼしいものを買って帰る。

パンやハム、目についた野菜など。

飲み水は浄水器が家についているのでしばらくはそれで我慢だな。


割と大きな荷物になってしまったが、両手に買い物袋をぶら下げて家に帰る。

鉄扉を開けることなく、横の小さい門から庭に入る。

もちろんそちらの小さいドアも静脈認証だ。

まだ上手く扱えず、何度かかざすとようやくロックが外れる。


「過ぎたテクノロジーも考えものだな。」


整備された、芝の青々と茂る庭を見ながら

ゆっくりとクールダウンさせるように舗装された庭の道路を歩く。

アメリカ人の理想の休日は芝生の手入れをして、子供がそこで転げ回って遊ぶのを眺めるのが理想の休日とされている。

そして、きれいな芝生を保つのはアメリカ人の義務だとも。


「芝生の手入れは夏休みとかは近所の子供とかにお願いすることも多いらしいんだよなぁ。」

せっかく手に入れたきれいな芝生なので、ちゃんとメンテナンス費を払ってきれいに維持したい。


家に入って、食料品を冷蔵庫に入れ、浄水器から水をコップに注いでむ。


「ふう、、、」

落ち着いたところでBCAAなどといったサプリメントを飲む。

買って来たパンとハムで簡単なサンドイッチを作ってたべながら今日の予定を考える。


「まず買い物行かなきゃだな。」

暮らしてみて思ったが案外足りないものが多い。

牛乳やプロテイン、食器類。

ボディソープやシャンプー。

昨日は飛行機でもらった大量のアメニティで乗り切ったがずっとそういうわけにはいくまい。


「あと近所のガソリンスタンドや病院とかの位置も把握しときたい。」

人間誰しもずっと死ぬまで健康というわけではない。

万が一のこともあるしね。


「とりあえず喫緊はそこか。

予定終わったら午後から大学行くか。」


今日の予定を決めた私はとりあえずシャワーを浴びに行く。


シャワーを浴びて、資生堂ザ・ギンザのボディソープ、シャンプー、コンディショナーで体を清め、さっぱりしたところで服を着替える。


ユニクロの半袖TシャツにNIETのカーゴパンツ。

クリアフレームのDIORのサングラスをかけて、髪も軽くセットする。


「よっし。」

出かけよう。



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― 新着の感想 ―
[一言] スーパーに買い物時は前に言った様に 金持ちファッションは厳禁だよ?貧乏の勤め人に 偽装し中古のホンダかスバルが良いよ? アメ車はボディー強度がコリアンと同じだからダメだよ? タイガーウッズの…
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