新居
働いた。
せっせと働いた。
荷物用エレベーターでスーツケースを2階に持って行き、二つずつ持ってクローゼットに。
「えーと、服、服、靴、鞄、靴、あ、これは部屋履きにしよ。
えーと、あと部屋着、スーツ、スーツ、スーツ、燕尾、靴、革靴、これは普段履きだから下に持って行く。
あと香水か。」
ちなみに玄関にもシューズクローゼットはある。
あらかたクローゼットに入れる荷物は収納が完了した。
荷物が多いと荷解きも一苦労である。
「次は家電!」
この家には基本家電は揃っている。
洗濯機や、冷蔵庫、電子レンジなど。
メーカーのこだわりありますか?と言われたがないので任せますと伝えておいた。
その他の小さな家電は自分で持ってくる必要があった。
基本的には特に急がないものがほとんどなので、向こうの引越しの時にまとめて持ってくる予定だ。
我が家にはドライヤーなど小さな家電は無駄にある。
緋奈子も幸祐里もこだわりがあるためほぼそれらは1人に一つずつある。
実季先輩と私はこだわりがないのであるものを使っている。
「えっと、ドライヤーはここか。」
私は家から適当に持ってきたドライヤーを脱衣所の洗面台に置く。
〜〜〜〜〜〜幸祐里サイド〜〜〜〜〜〜
「あたしのドライヤーないんだけど知らない???」
「ヒロ君持って行ってたよ。」
「嘘でしょ!?!?!?!?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
たくさんあったスーツケースの中身もほとんどなくなり、荷解きが完了した。
基本的には現地調達で事足りるので、服や靴など自分のサイズがあるもの以外はあまり持ってこなかった。
「あとは楽譜!」
楽譜だけでスーツケース一つ分埋まっているので、
スーツケースごと練習室に持って行く。
取り急ぎ、今取り掛かっている楽曲の楽譜と自分が作成中の楽譜のみ持ってきている。
ゆくゆくは書斎のPCと練習室のプリンターを同期する予定だけど、なんとなくこの練習室に入り浸るんだろうなと思っている。
使い勝手が悪いんだよな、書斎。
一応今の家の電子ピアノは置く予定。
スーツケースごと練習室に置くと、中から数冊の楽譜を取り出す。
まだ本決まりではないが、ソロリサイタルを行う予定なので、それ用の楽譜をすでに譜読みしている。
ソロリサイタルなので曲数を用意しなければいけないのが難ありだ。
「時間も遅いから適当に宅配で済ませるか。」
スマホをぽちぽちとしていると、どうやら近所にFetteSauというバーベキューサンドが美味しいお店があるらしい。
「ここにしよ。」
クレジットカードで決済を済ませるとしばし待つ。
ニューヨークではウーバーイーツがめちゃくちゃ早い。
自転車乗りの人が多いからだろうか?
リンゴーンというアメリカらしい玄関チャイムの音がする。
「音うるさ。」
あ、外門まで取りに行かなきゃじゃん。
めんどくさ!!!!
インターホンで、配達員さんに家が大きすぎるので少し待っててほしいと伝える。
配達員さんは笑っていた。
やっとの思いで外門まで辿り着く。
「お待たせしてすみません。」
配達員さんに声をかける。
「いやいや、この大きさの家ならよくあることですよ。」
「山を越え、谷を越えはるばるやってきました。」
「オー!ニンジャ!!」
私は苦笑いしつつ配達員さんから食べ物を受け取る。
料金にチップも含まれているが、お待たせしてしまったので、少しチップも渡す。
配達員さんはまたよろしくね!という言葉と共に自転車をクルクル回して(言葉通りくるくる跳ねてた。信じられないだろ?)、颯爽と去っていった。
「あんたのほうがよっぽどニンジャだよ。」
食べ物を片手に来た道を引き返す。
「これはめんどくさいから、今度から家に帰るときになんか買って帰ろう。」
家に入り、ダイニングテーブルでバーベキューサンドの包みを開く。
途端に香ばしくて甘辛い、食欲を誘う匂いが広がる。
「あ、うまそ…」
気づけば夢中でかぶりついていた。
「あー、美味しかった。」
程よく満腹になったので、譜読みを再開する。
せっかくなので、書斎に籠り、オーディオチェックを行うことにした。
「えーと、MacBookはこれか…。」
愛機を持ってきて、書斎の品のいいオークの机に広げる。
防音らしいのでスピーカーの調子も確かめよう。
パソコンから選択した音楽を流すと音が聞こえてきた。
「お、これは中々いいんじゃないか?」
デスクの引き出しに用意されていたオーディオのリモコンから音量を段々と上げて行く。
「おぉ、割れないし、めちゃくちゃいいぞ」
次はヘッドホンだ。
デスクの上にジャックもあるが、据え付けのヘッドホンもある。
Bluetoothも対応しているらしい。
「せっかくだから据え付けの…、これソニーのシグネチャーじゃねぇか!!!」
作りの難しいことはわからないが、めちゃくちゃいいものだ。新品で買うとなると20万円を超える。
「これモニターヘッドホンとして使えるのか…?」
まぁ基本的に書斎で使うのはモニタリング用途ではないのでいいと言えばいいのだが…。
「まぁ聴いてみるか」
……うん。
すごい。
やっぱり高いだけある。
正直特大の高品質スピーカーで聴くのと変わらない。
むしろ雑音が入ってこない分、生のコンサートホールのような響きまで聴こえる。
「…、世界変わるわ。これ。」
そのあとしばらく譜読みをして、風呂に入って寝た。
まぁ男の風呂なんて、誰1人期待していないだろうから簡潔に申し上げますが、風呂の入り心地は正直日本と変わらん。
そのあと日本から持ってきたダイソンのドライヤーで髪を乾かして、めちゃくちゃでかいキングサイズのベッドで寝た。
うーん、快適。