表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/166

一時帰国7


「よっしゃ、アメリカ帰るか。」


昨日のうちに荷物はまとめたし、もう今日はこのバッグだけ持って飛行機に乗るのみ。


車を借りているので、Wooの事務所に連絡して運転手さんを呼んでもらっている。


車を駐車場から出し、マンションの前に止め、後部座席で待っているとすぐに来てくれた。


「すいません、今日はよろしくお願いします。」


「こちらこそ、ご連絡ありがとうございます!

羽田空港まで安全運転で参ります。」


「お願いいたします。」


車中では特に会話もなく、つつがなく羽田についた。


登場時刻まではまだまだ余裕があるため、早めにチェックインを済ませ、中のラウンジでゆっくりしようと思っていると、遠くからやってくるCA集団とパイロット。


ふぁー、かっけぇなぁーなんて思ってるとCA集団の中に早川さん。


「あ、あれ今日のシップのクルーか。」

飛行機をシップと呼び、乗務員をクルーと呼ぶのは早川さんに倣った。


すると、早坂さんとバチっと目があった。


早坂さんが駆けてくる。

揺れる。


「もう!なんでここにいるのよ!」


「いや、私今日の便でアメリカ帰るので…。」


「あ、そうだった。」


なーんて会話をしているとCA集団に追いつかれた。


「あ!もしかしてやよいの彼氏さん?」


「すごー!イケメン!


「答えなさいよ早坂ぁ〜」


「いや、全然、あの、」

女の子が三人寄れば姦しいとは昔から言うが、

ここで閃いてしまった。

そして、ムクムクと頭をもたげてくるいたずら心。

「え、やよちゃん全然なの?

遊びだったの…?」

そして全力のあざとい顔ウルウル目!!!!!


まぁ、ほんのいたずらですわ。

いくら線が細いとはいえこんな大男が…


ーーーーーズキューンーーーーーー・・・


あ、今やべえ音した。


「やよいが全然なら…私…。」


「いやいや、私も…。」


「早坂がいいって言うなら…。」


おい、心なしかみんな頬が赤いぞ。

チーク塗りすぎたか?

おい、胸を抑えるな。

ドキドキしてないから。

それ気のせいだから。


「ほ、ほら、皆さん行きますよ!!!」

やよちゃんが、しどろもどろになりつつおそらく先輩であろう皆様をシップに連れて行く。


「いやぁ、悪いことしちゃったかな。」


お気に入りのレザーのバッグを肩に背負ってラウンジに向かう。



コンセント付きの席に腰掛け、MacBookPROを広げる。

空港のラウンジでMacBookを広げるだけでできる大人感演出できるのいいよな。

まぁMacになんの思い入れもないんですけどね。

周りがそうだからMacの方が互換性高くて便利っていうだけです。


溜まっていたメールを処理して、今回の一時帰国の間に思いついた曲でボイスメモに残していたやつを楽譜に起こして、としているとあっという間に搭乗時間だ。


帰りもビジネスで帰るので優先搭乗である。


座席につくと、先程の作業の続き。

私は基本的に頭の中では常に何かの音が鳴っている。

知っている曲が無限ループしている時もあれば、新しい曲が生まれてくる時もあるし、自然の風景なんかに感動して音が聞こえる時もある。


ちなみに風景の音に関しては小さい頃からで、今なんか曲流れてた?と親に聞いていたらしい。

アメリカに行ってから、それを共感覚と呼んでも良いものだと知り、周りにもそう言う奴がたくさんいた。


集中してガッとやっていると、もう機内食のお時間だ。


「ヒロ〜ご飯よ〜。」


そうそう、早坂さんのことをやよちゃんと呼ぶようになってやよちゃんは私のことをヒロと呼ぶようになった。


「ご飯よ〜って。」


「あんまり集中しすぎても体に毒よ。」


「そうだね。」


テキパキとやよちゃんが用意してくれたのは

洋食セット。


肉が食べたくてね。


ペロリと平らげたあとはまた作業。


今度はクラシックの作曲である。

向こうの友達が室内楽をやるから曲書いてくれって。

じゃあ書く代わりにピアノで私も出してよと。

そしたら最高じゃねぇかと。


で、受けたはいいものの、これがまた難しい。

ポップスは、理論はあれど結局キャッチーなメロでを思いつくかどうかが勝負。

でもクラシックにそんなものはいらんのや。

風景や心情を思い起こさせるような何か、スピリチュアルなものが必要だと考えている。


でも、そういうメロディのストックも山ほどあるんですけどね。

今回一時帰国したのはそれもあってのこと。

誰にも見せることなく、このまま黒歴史化しそうになってた大量の自作曲にスポットを当てようと思いましてね。

あと実家から小さい頃の旅行のホームビデオとか送ってもらって、自分が歌ってる姿とかからメロディを抽出しようと思って。


1人でこっそり聞いてみたら意外といいものがありまして。

音楽してるじゃん自分なーんて。


日本の家で聴いて、防音室で形整えてあげて、楽譜にして、今それに肉付けしてる。


完全個室状態にして集中してたけど、一通りの完成が見えたので伸びをする。

そしたらドアがコンコンって。


こちらのボタンでドアを開けてあげるとやよちゃんじゃない人。


「あら、どうも。」


「こんばんは。作業がひと段落したみたいだったのでブランケットお持ちしました。

あと、お夜食もいかがですか?」


お気遣いありがとうございます。


「すいません、ありがとうございます。

じゃあラーメン、いいですか?」


「かしこまりました。

あのラーメン美味しいですよね。

すぐ持ってきますね。」


「ありがとうございます。」


夜中の飛行機のラーメンはマジでうまい。

悪魔的だ。


しばらくするとさっきのCAさんがラーメンを持ってきてくださった。

ふと耳をすますとあちらこちらでラーメンをすする音が聞こえる。


美味しいもんな。


そのあとCAさんと少し雑談をした。

帰り際にCAさんから名刺渡された。

やべ、隠さないと…。

やよちゃんにバレたらまずい。


ラーメンを食べ終わって一心地ついたので自分でベッドメイク。

フルフラットにして快適な寝床ができた。


よし、寝よう、おやすみなさい。






そして起きて朝食。

作業は昨日でほぼ完成しているので後はもうゆっくり。

と言ってもすることもないので今度は趣味の方の曲作り。


そうこうしていると空港に着く。


帰り際にこそっと名刺をまた渡された。


内緒にしとこうね。


降機するとき、また後でねーとやよちゃんに言われて、はいよーと返しておいたが、やよちゃんが他の人からいじられて顔赤くしてた。


かわいいね。


よし、第二の我が家へ帰りますか!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ