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短編 ホラー

平成奇怪譚録 〜広告〜

作者: 遠智 赤子

ネット上でサイトを閲覧してるときに端や途中に出てくる広告を不思議だと思ったことありませんか?


私にはあります。


なんで私の興味のあることが載ってるんだろう?


と。



旅行について調べたあとだとニュースを見ているときでも旅行会社やホテルの広告が出てくる。



確実に私が女だとわかっているような広告が出てきたりもする。



そして逆を言えば、男性向けのファッションやセクシー系の広告は見たことがない。



なんでもこれは行動ターゲティング広告という手法らしい。



簡単に言えば読み手の行動や履歴から興味、関心のありそうな広告を推定して選んでいるそうだ。


つまり、私が先ほどまでしていたことから

私がどんなものに興味があるか判断されてしまっているのだ。




そう思うと、このスマホの画面の向こう側にも誰かが居て覗き見されているような感覚に陥る。




そう。数ヶ月前にあったあの出来事を思い返すとよりその感覚は強くなる。





私は夜寝る前にネット上で怪談を読むのが日課になっていた。



ベッドに入り部屋の電気を落とす。


明かりは目の前のスマホの画面だけだ。



そうすると自分の部屋であってもなんとも言えないゾクゾク感があってやめられなくなっていた。



普段読むのはオカルト板やまとめサイトだったりときには怪談小説も読んでいた。



とにかく怖い体験をしているその話の登場人物に感情移入をして


自分自身が非日常にいるような感覚を味わいたかったのだ。


その日もオカルトのまとめサイトを読んでいた。


この日選んだ記事は長短様々な話が掲載されていたがその中でも私が目を引いたのは自殺サイトに嘘の書き込みをしたときのことを語っているものだった。


自殺志願者のフリをしているうちに何人かで集団自殺をすることになってしまったというものだった。


とにかくその人の文章は上手で何レスにも渡って書いてあるのだが臨場感が伝わってくる。



このスクロールしながら読むというのも怖い話を読むには合っている気がする。


なんせ自分で読み進める文章を小出しに出来るため、うっかりオチを見てしまうことも防げるのだ。


ただ読み進めようとスクロールしても他のレスが途中で入っていたりスマホアプリの広告が出てきたり思うようにいかなこともあるが。


そしてその集団自殺の決行の日、当然志願者のフリをしていた語り部は逃げだしたのだが


その日を境に不可解なことが起き始めたのだ。


ここまで読み進めたがどうにもページをめくる回数が多いことに私は気付く。



もう次ページにクリック?



1ページに載ってる量が少ないのだろうか。

そんなこと考えながら読み進めるが少しずつ原因がわかった。




数レスあるたびに広告があるのだ。このせいで幅を取りなかなか読み進められない。



そしてこの広告もなにか変なのだ、



暗い草原?のようなところで奥の方に人らしき影が立っているだけといったものだった。




まぁこんなサイトを見ているくらいだそういうホラー漫画やゲームの広告なのだろうぐらいにしか思ってはいなかった。



そして、物語は佳境を迎えた。

嘘の志願者だった語り部の住所や名前がそのサイトに載りだしたというのだ。



ゾクゾクして私は一度スマホの画面から目を離す。


目が暗闇に慣れてないせいかまわりは真っ暗だ。




そして物語のオチを読もうとしてもう一度画面に視線を戻しスクロールしたがそこから動かなくなった。




こんなときにフリーズ?


いや、違う。




画面はゆっくり動いている。




下にゆっくりゆっくり動いている。




読みたい文章を越えてもスクロールしていく。




やがてあの広告が下からはみ出てきた。



目が何故か離せなくなっていた。




そして下からあの広告の人の影が映ったとき広告自体が動きだした。




少しずつこちらに歩み寄って来る。




やばい。これは広告なんかじゃない、




その影が女だとわかるほどに近づいてきた。



慌てて電源ボタンやホームボタンを何度も押すがどれも反応がない。



女は顔を伏せたままこちらに向かって来ていた。



私は怖くて怖くてスマホを投げだした。




ガンッ




床に大きな音を立ててスマホが転がる。

画面が割れるほどの音だったがそんなことは気にならなかった。




スマホは画面を下向けにして床に伏せていた。




乱れた呼吸を整える。



どれくらい経っただろうか下を向いたスマホから漏れ出す明かりも消えていた。



私は恐る恐るスマホを拾うために体を起こした。


なぜかまわりを警戒しながら手を伸ばしたときだった。





『ご用件は何でしょう?』





スマホの音声操作が鳴った。



驚きその場で動けなくなる。



ブブッ



また振動ともに音声操作を呼びかける音が鳴る。




『こんなふうに尋ねてください。』





しかしこのあとはなにも言ってはこない。


震えた手でスマホを拾うと画面には






「こんなふうに尋ねてください」



「なんで最後まで見ないの」





と入力されていた。




そして画面が切り替わり



痩せた女の顔がアップになった。



無表情だったが明らかに目は私を見つめていた。



キャッ!



スマホをまた落とすが今度は画面は暗くなっていた。



それからスマホは充電切れを示していて

朝になってから確認したがとくに異常はなかった。



夜に見ていたサイトはさすがに怖かったので開くことなく消してしまった。


それから私はもう夜の日課をするのはやめた。



先にも述べたが私の行動を見てなんらかのものに選ばれてしまったのだと思う。



誰かが私にこの広告を見せているのだ。



いや、見てもらいたかったのかもしれない。




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