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副作用/戦闘

バイオハザードものです。今連載中の「アンドロイド」と読むといいかもしれません。同じ世界、時空列のお話しなので。中川はじめが書く小説は全て同じ世界です。なので至るところでなにかしら大事件が発生してますね。(笑)理由はあるんですよ。ちゃんと。

発達させた科学力はいつか人類を苦しめるという話がある。僕はそれを痛感した。あの惨劇のせいで僕たちは苦しんでいるんだ。それは今から2年前に遡って話をしなければならない。

科学技術が世界的に発達していた「ゴモス」の隣国であり、同時にそこと最も親しい国の「ギアル」という国があった。

ゴモスはギアルに人工的に作られた微生物を使った医療の技術を提供した。

しかし、それはルアフという国を襲撃した兵器、エンディアと呼ばれるものを作り出すときに利用されていたものだ。それ故に元々大変危険なもの…というより使ってはいけないものなのだ。

エンディアとは、一人の兵士に特殊な方法で改造した、言わば生物兵器だ。その特殊な方法というのが、例の微生物を人体に植え付けるというものだ。

その微生物の名は、「ヴェルクウイルス」。

ウイルスを保管していた医療機関が爆発テロにあってしまい、それが町中に蔓延してしまったのだ。

感染した人間は人を食らう化け物になる。エンディアとは違ってダイレクトに感染しているため、感染者を助ける術はないので殺すしかない。感染した人間は、ヴェルカーと呼ばれている。

知能は野生の動物並かそれ以下ではあるが、強固な鎧のような皮膚を持っているために銃器を使っても駆除することはできない。ヴェルカーを駆除するには、同じヴェルカーでなければならない。いわゆる“共食い”をさせるしかないのだ。しかしヴェルカーを駆除するために研究を重ねた結果、もう1つだけ可能性が出てきた。エンディアと同じ肉体改造をした人間が戦うことだ。

そしてそれの被験体が僕だ。僕の前に54人ほど同じ実験を行ったがいずれも失敗で殺処分されてしまった。僕は唯一の成功作…とも言えない。僕には寿命ができてしまった。僕に残された時間は13年だ。13年以内にヴェルカーを駆除するのが僕に下された命令だ。


感染が拡大しないよう、マエニカに伝わる魔法科学によって作られた透明なドームのせいで、かつて当たり前のように射してきた日光が濁っている。

鳴り響く目覚まし時計の音が耳に響いて痛い。

手を伸ばしてそれを止める。

「やぁ、フィリオ君。調子はどうかな?」

いつの間にかそこにいたスーツ姿の男が僕に話しかける。

寝ぼけて頭がボーッとしているなか、返事をする。自分でもなにを言っているのかよく分からない。スーツ男がフフっと笑う。

「起きたまえ、フィリオ君。朝だ。バイタルチェックを始める。」


「1.私の名前を覚えているかい?」

えっと…。

「…記憶力の低下が見られる…想定していたことではあるな…。私はガイだ。君が受けた実験をやった会社の…いわゆる代表取締役ってやつだ。」

取締役…? あぁ、そういうこと…ですね…。

「2.腕や足に変な感じはしないかい?」

…する。重くて痺れる。たまに黄ばんで見えるときもあります。

「…? 頭痛は?」

します。

「…黄ばんで見えるのは恐らく高熱を出したときだろうか…。手足は抗がん剤の副作用みたいなものか…? だったら末梢神経障害ということになるか。うん、想定内だね。」

「さて、3つめだ。覚えてないならいいんだ。変な夢を見ないか?」

…もう一人の自分が世界の話をしてきた夢を見ました。それですか?

「その通りだよ。それは影者現象というものだ。変なことを吹き込んだりするだろうけど大丈夫。心配しなくてもいい。」


「うんうん…バイタルチェックの項目をクリア…。末梢神経障害もある程度までは想定内だし、きっと問題はないね。」

ガイさんがテーブルを台にしてボールペンでチェック項目にレ点を入れる音が聞こえる。

入れ終えるとすぐに立ち上がってボールペンを胸ポケットにしまった。

「さて、私はそろそろ行くとするよ。君も早く起きて皆に顔を見せるといいよ。」

ガイさんが爽やかな笑顔で言ってから部屋の扉を開けて退室した。しかし再び扉が開いて…

「おっと、その前に顔を洗うことをオススメするよ。では。」

と言ってから扉を閉めた。

僕は言われた通りに顔を洗おうと洗面所に立つ。鏡を見て自分の顔を確認すると、目脂がついていたのに気付いた。水道の蛇口をひねり、小さな滝のように流れてくる水を両手のひらで汲み取る。暑い夏に冷たい水が心地よくてしばらくそのままにしていた。とっくに溜まってあふれでてくる水をボーッと見つめていた。ハッとしてその水を顔にかける。顔にも同じような冷たさを感じて気持ちがいい。目元を重点的に洗う。洗い終えると寝ぼけていた頭もすっきりした。寝癖でボサボサになっていた髪を整えてから、施設内のヴェルカー対策本部に向かう。

「遅いぞ、フィリオ。」

警備をしていた重装備でつり目気味の女性が声をかける。

「す、すみません…。ガイさんに起こしてもらわなかったらもっと遅れるところでした…。」

「しっかりしろ。お前は私たちの主戦力なんだ。少しのたるみも許さないぞ。」

厳しいこの人の名前はコレイナ。

僕を含めた5人の“ヴェルカー退治部隊”の1人だ。肩まである赤色のなめらかな髪と黄色の瞳をしている。口調からみても男勝りな性格である。

「隊長が待ってる。早く行ってやれ。」

「はい!」

僕は急いで隊長がいる部屋まで行った。

道中で僕たちを支援してくれる部隊が挨拶してくれた。

部屋の前に着くと、ドアをノックしてから開ける。

部屋のなかでは、2人の男が机越しに話していたようだ。

緑色のベレー帽を被った若い男が僕を見る。

「フィリオか。遅かったじゃないか。」

「す、すみません…。」

隊長のギルマさんだ。焦げ茶の髪と青い瞳で筋肉質だ。ちなみに既婚者である。

「今さっき通報があった。コレイナとすれ違ったと思うが、それの現場に向かったんだ。」

僕にそう言ってきたのは、グマンさんだ。彼は青いフレームの眼鏡をかけている。黒髪で緑色の瞳をしている彼は、本部から僕たちに無線でサポートしたり、もしものための支援補給の指示を出している。いわばサポート役の人だ。

グマンさんが中指で眼鏡の位置を調整する。

「ギルマ隊長…僕もコレイナさんについていった方がいいですか?」

「うむ。そうだな。そうしてくれると助かる。グマン。」

隊長に名前を呼ばれた彼は、パソコンを開いて地図を表示させ、それを僕に見せた。

「場所は、旧ミクト商店街の裏路地だ。そこで遺体が発見された。遺体は食い荒らされているから確実にヴェルカーだ。特定できないため、コレイナに発見者に当時の状況を聞きに向かわせた。」



□ミッション内容を更新しました。

     ミッションNo.1 特 定



現場についた僕たちは、ヴェルカーによって破壊尽くされた商店街の裏路地を警戒しながら進む。

本当はここは活気に溢れていた所だ。でもこんなにガランとしているのは、ヴェルカーが暴れたせいだ。時々臭ってくる商品になるはずだった食品の腐臭が不愉快で、呼吸が浅くなる。

以前からこの商店街だったところはヴェルカーの目撃例が多発しているため立ち入り禁止になっていた。恐らく死亡した人や目撃者というのは、度胸があった若者か、酔っぱらいが入り込んできたのだろう。とにかく、ここを抜けた先にある住宅街が目的地なので、そこまで警戒を怠れない。

「フィリオ、音は聞こえるか?」

コレイナさんが静かな声で僕に問う。

ヴェルクウイルスの感染者である僕の五感は研ぎ澄まされている。意識を集中させればある程度遠くの物音でも聞き取ることができるのだ。

「…はい…。辺りに2匹ほど…。」

「2…。今の私たちでいけるか…?」

「どうでしょう…?」

ハンドガンをしまってショットガンを取り出す。

どうやら彼女はやる気のようだ。

すると突然聞こえてくる音に違和感を感じた。

「どうした?」

聞こえていた2体の呼吸や足音のうち、1体だけどちらも控えて気配を隠しているのに気付いた。。

「…まさか…。コレイナさん…気付かれてます…!」

「なに____!?」

ヴェルカーがコレイナさんを後ろから襲ってきた。

なんとかやられる前に反応できたコレイナさんは、持っていたショットガンをそいつに向けて引き金を引く。

銃声が商店街中に響いた。

撃たれたヴェルカーは頭から吹き飛ばされたが、顔にちょっとへこみがあるくらいだった。

「やっぱショットガンでもダメか…!」

「僕がやります!」

「だめだ! 戦闘はなるべく避けるんだ! 逃げるぞ!」

コレイナさんが僕の手を掴んで走り出す。彼女の足の早さに着いていけてない僕は何度も転びそうになった。後ろを見ると、先程のヴェルカーが追ってくるのが見えた。

商店街を抜ける頃にはそいつの姿は無かった。

「はぁ…はぁ…。ここまで来れば大丈夫だろう…。」

「そう…ですね…。」

胸が苦しくて仕方がない。何度も息を深く吸っては吐いて、吸っては吐いてを繰り返すが心臓は落ち着かない。ずっと激しく鼓動している。

彼女も息切れをしていたが、ある程度まで息を整えるとすぐに目的地へ再出発した。僕はまだ整っていない。

しばらく歩き続けていると、目的地周辺の田舎町に入った。商店街にいたときはそんな余裕は無かったが、改めて見渡せば山々に囲まれており、小麦畑が広がっていた。先程とはあまりにも風景が違うために目を疑った。

しかし僕たちはそこで“異臭”がすることに気付いた。

腐った卵のような臭いが不愉快極まりない。さっきの商店街もそんな感じか…いやそれ以上だ。

コレイナさんが立ち止まって鞄から取り出したガスマスクをつける。

この異臭の正体は、ヴェルカーが放つものだ。異臭にはヴェルクウイルスが含まれており、それを体内に取り込んでしまうと感染してしまうのだ。

僕は半分ヴェルカーみたいなものなので、それにはならないからガスマスクをする必要はない。でも臭いが嫌だからという理由で着けることにした。

「近くにいるということか。気を付けて進むぞ。」

「はい!」

ハンドガンを構え、クリアニングしながら慎重に進む。

風によって周辺の木々が揺れる音がする。その中に紛れて物音が聞こえた。

右の畑からだ。

コレイナさんにそれを伝えて正体を確認する。

確認するまでもなかったかもしれない。緑色に生い茂った背丈の高い草むらの一部が赤色に染まっていた。

この時点で僕は察した。この音の正体はヴェルカーだ。

僕の予想が的中した。うねり声をあげながらこちらを睨み付けてきた。

ヴェルカーは赤色の肉をくわえている状態で、そして口元は同じ色の液体で染まっていた。そいつから下の方へ視線を変えると、きっと麦わら帽子を被っていたであろう人のミンチとその帽子があった。

僕はそれを見てたまらず吐き気を催した。

「下がれ、フィリオ…!」

コレイナさんが銃口を、人の肉を食うとんでもない化け物に向ける。

そいつは、くわえていた肉を吐き捨ててからゆるりと立ち上がった。

吐き気がおさまった僕は改めて相手を見る。そいつの目は獲物を見つけた肉食動物のそれだ。

その目を見て僕は怒りを感じ始めた。何故なのかは分からない。理由もわからずにただ感じる悔しさと怒りがまざって…なんと言えばいいのか…。とにかく、こいつを…。

__ 殺したい。

「コレイナさん…僕に…殺らせて下さい…。」

「…ダメだ…! このまま引き下がるぞ…!」

「嫌です…食われた人の無念を晴らさなきゃ…!」

「フィリオ…!」

僕を静止するコレイナさんが、目を見てそれをやめた。

「油断するなよ。」

彼女はそう言って1歩下がってから無線機で応援要請を本部にした。

さて、僕は目の前のこいつを殺すとしよう。ナイフを取り出し、それで手のひらに小さな切り傷を作る。するとそこから黒色の炎が出てきて全身を包む。炎が青色に変化してきたところを見計らってそれを手で思いきり払う。

これが僕の、いわゆる“変身”というやつだ。

「…ブッ殺す。」

無意識に僕はそう言った。




英雄之仮面 感染の書 #1 副作用 / 戦闘

いかがでしたか?これと合わせて是非とも「アンドロイド」を…え、くどいですか?じゃあやめときます…。

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