貴様との婚約を破棄する!!
婚約破棄モノを目指したのですが、斜めにスリップしました。
途中、他の方の作品をディスっているような表現がありますが、そのようなつもりは一切ございませんので、ご理解いただけますよう、お願いいたします。
「リーファ・エメラルド!貴様がこのアリス・スピネルに行った悪行の数々は既に白日の元に晒された!
その所業は、建国の英雄の孫であり、魔王討伐を成し遂げた勇者と聖女の子であるこの俺、アルス・ブライトの妻たるにはふさわしくない!
よって、貴様との婚約をこの場で破棄し、アリス・スピネルとの婚約を宣言する!」
広い空間に、青年の声が高らかに響く。
青年の傍らには、優しげな面立ちの少女が困惑顔で立っており、その二人の背後には、個性豊かな美女が4人、微妙な顔をして立っていた。
対して、青年たちに向き合うように立っていた貴族風の女性は、冷め切った顔で手に持っていた扇を広げて顔の下半分を隠し、これ見よがしに溜息を吐いた。
「祖父は、当時圧政を民衆に強いていた帝国を滅ぼし、新たに民衆が笑顔で過ごせる国を立ち上げた英雄。
両親は、魔族を率いて国を征服しようとしていた魔王を倒した勇者とその仲間だった聖女。
それらの血を引く本人は、幼い頃よりその才能を遺憾なく発揮した天才児。
剣を持たせば、五歳にして国最強の騎士団長を下し、魔法では、誰も読み解くことのできなかった古文書を七歳にして解読し、伝説級の大魔法を習得。
斬新な発想で数々の発明品を世に送り出して莫大な財産を築き上げ、それを国の運営に注ぎ込んで国を豊かにし、賢者との呼び声も高い。
その一方で、十歳で生まれを伏せて冒険者登録をするや、たちまち世界に五人しかいなかったSSS級にまで駆け上がる。
才能あふれる4人美女と出会い、その悩みを解決することで絆を深める一方、国の最有力貴族の一人娘を婚約者とし、国内のパワーバランスにも気を配る。
ある時、一人の平民の少女と出会い真実の愛に目覚める。
それを知った婚約者が少女を排除しようと動くも、それを察知して回避。
婚約者にその罪を突き付け婚約を廃棄することで、元婚約者は自分の罪を自覚して反省し、二人の仲を祝福する。
周囲すべての者に祝福された二人は秘められていた能力が解放され、この世界の滅亡を目論む邪神に仲間とともに立ち向かい、これに勝利。
その功績により、邪神を倒した一行は神としての資格を得、末永く幸せに暮らした。」
一気にまくしたてられた内容に、青年は目を白黒させ、何も言うことができない。
青年の傍らに立つ少女と背後の美女4人は、長台詞を言いきった貴族風の女性に感嘆の拍手を送っている。
貴族風の女性は、もう一度溜息をつくと青年を見据えた。
「設定を盛りすぎです。あれもこれもと盛りすぎて、全体的に薄っぺらくなっていて食指が動きません。
何よりも酷いのは、これらの設定が『ここまでがテンプレート』だという現在の風潮です!」
「あー。私も、無茶な設定の盛り合わせは好みだったけど、さすがに『そればっかり』っていうのは、ごめんかなー?」
いつの間にか貴族風の女性の傍らに現れた黒い球状の光が、瞬きながら話す。
それに対して、青年の背後にいた美女たちもうんうんとうなずく。
「戦闘能力にしても、魔法にしても、『親から引き継いだ才能が見事に開花』で終わりだしねー」
「内政・発明も、『斬新な発想』で終わりですからね」
「『どんなものを』『どんな過程で』発生させるのかっていうのが、私たちには重要だから」
「それよりも、『真実の愛に目覚めた』とか言いながら、他の女性との関係も続行するのはいただけません!!」
青年の傍らの少女も、両手を握りしめながら言う。
その少女の傍らに出現した、硬質な様々な色に光る球状も瞬きながら話す。
「『女性たちの悩みを解決』っていうのが、話聞いて『分かるよその気持ち』で終わりってのも、なめてんのか!って思うよねー」
女性たちが好き勝手に『設定』にダメ出しをしていたが、貴族風の女性がパチンと音を立てて扇を閉じると、口をつぐむ。
貴族風の女性が、改めて口を開く。
「そういう訳でして。現在、同じ夢を見てらっしゃるすべての方の夢を繋げております。
そしてこの場で宣言いたします。
我ら『夢喰い』と呼ばれるモノ達は、求めるエネルギーを得られなくなったこの世界に見切りをつけ、これより別の世界へと旅立ちます。
誠に残念な結果と相成りましたが、皆様のこれからの益々のご発展とご活躍をお祈りいたしております。
それでは皆様、ごきげんよう」
貴族風の女性は、それは見事な一礼を披露し、まるで蝋燭の炎が消えたかのようにふっと消え失せた。
同時に、青年を囲んでいた女性たちも、球状の光もいなくなる。
残されたのは、何もない真っ白な空間と、呆然と立ちすくむ青年のみ。
『夢喰い』と呼ばれる存在がいた。
ソレは、知性あるモノが好きなことを想像する(夢をみる)際のエネルギーを活力源とし、それを得る対価として、夢の実現に役立つ何かを与える。
エネルギーを食べられても体調などに変化はなく、対価として与えられるモノもささやかであるため、誰にも気付かれることなく時間が過ぎていった。
だがある時、人々は『夢を叶えるモノ』の存在に気づいた。
そうなると、人々はより効率良くより強力な力を手にする方法を探究し始める。
結果として、人々はやがて神へと至る英雄の夢を見るように統一され、『夢喰い』たちの興味を失った。
自由に夢を見ることを忘れた世界の行く末など、『夢喰い』たちにはどうでもよく。
『夢喰い』たちはただ、新しい世界で好みの夢をつまみ食いするのみ。
改めまして、私は俺TUEEEやチートモノも大好きです。
あくまで、『夢喰い』たちが夢の実現のための助けとなる何かを与えるには、漠然としたイメージでは無理だという設定で、ああなりました。
ほんとはもうちょっと軽い夢オチになるはずだったんだけどなあ。
8/6 5000PV突破しました。
8/18 7000PV突破しました。
10/9 10000PV突破しました。
読んでくださった方々、ありがとうございます!




