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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

白寿の

作者: 蝎鳥

「へー、こんな辺鄙(へんぴ)な場所に村なんて在ったのか」


「秘境と言え秘境と。で、お前は?初めて見る形してるな」


其方そっちから言えよ」


「そうか。俺は此処の勇者兼村長────。ほら言ったぞ」


「細いのに随分と強気だな。俺は人間界から来たバイクのシーノ!」


「宜しくな、人間界の」


「此方こそ、ケモノ界の」






 とある山の最奥、ある一種類のゴミで出来た山脈。複数の小さなゴミ山が連なり、其れは最早「壁」だった。其のゴミ山脈は粗大ゴミと化したオートバイで構成されて居る。騒音を出すバイクだ。車輪が隠れているタイプと隠れていないタイプ。何れも彼も二輪車には変わり無いが多種多様。其れ等が此の地に棄てられて居た。

 物語は此処から始まる。




 初めて目にした景色は緑と光だけが在った。どうやら俺は仰向けに寝転がって居た様だった。木漏れ日が目を射して痛い。

 ・・・仰向け?木漏れ日?背中が地面に着いてたら「バイク」の俺にはこの景色は見えない筈だ。

 起き上がると起き上がれた。暗い景色が広がり、視界の隅に履かされてる緑色のズボン。胴体は黒のインナーにまた緑色のジャケットを着ていてやっと俺は人間の形に成っていると気付いた。


 ・・・俺、人間に成ったの?


 未だ理解出来る程、頭はクリアではない。前まで機械だったから夢と言う物を全く知らないし、一瞬で状況を把握して更にこれからどうするかのプランも考えていた。

 あれこれどうこうしている内に、後ろの壁が目に入った。それはバイクの山だった。前の仲間が今こうして雑に積まれている。どれもこれも我楽多でボディは傷付き、動かないモノばかりだ。挨拶をしても返して来ない。ヘッドライトも点かない。大声を出しても怒鳴っても何も聞こえて来ない。自分が人の姿になったからではない。


 もう解って居るじゃないか。彼等は既に、


 気分が悪い、唾液が出る、腹から苦くて酸っぱい物が逆流する。


 逃げたい。逃げよう。


 新しい姿に生まれ変わって直ぐ見た光景がこれなんてあんまり過ぎる。山から反対の方向に走る。四つん這いは難しく、二足でも前より速くなかった。身体中から水が噴き出す。目からも流れ出る。嗚呼、この体は不便過ぎる。ガス欠まっしぐらじゃねえか。

 地面に倒れて、肩で息をする。死にそうでも死なないこの体。人間は弱くて脆くて化物を使役するのをよく見てた。そして俺は人間を載せて走ってた。今じゃ載せれもしないし走れもしない。マップだって見せれた。目的地だって解ってた。それが出来ない。仲間もいない。目的もない。体力が必要なのに無い。

 何回か咳き込んで、目を閉じて、意識が無くなった気がした。

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