21話 どうやら僕は、死んだようです
タイトルの雰囲気から分かると思いますが、今回はコメディー回です。
話の流れ的にやっちゃいけなかったかな―……でもこれ普通におもろいよな……。という葛藤の結果、こうなりました。別に、修正するのが面倒だったからじゃないんだからね!
あと、今回出て来るアニメネタが一年くらい古いですが、許して下さい。こっちは本当に、最近あんまりアニメ見てなくて、修正できなかったんです。
目が覚めると、祐介はきれいな庭にいた。
というよりは孤島か。二五メートルプールほどの大きさの島に立っていて、周りはすべて、見渡す限り水水水。
しかし、海ではない。それらの水からはキラキラと輝く光? が浮かび上がり、それらは雲ひとつない空へとどこまでも昇っていく。
初めに庭と称したのは、真ん中に一本の木とそれを囲むように花々が生えていたからだ。品種は分からずとも、白、黄色、ピンクと可愛らしい。
「こんにちは、上谷祐介さん」
唐突に優しい声に名前を呼ばれるて辺りをキョロキョロ見まわす。
が、どこにも見つからない。首をかしげてもう少し探すものの、やはりいない。もしかして幻聴か? 本格的に頭おかしくなってきた? と不安に思っていると。
「こっちですよー。上谷祐介さーん」
二度目の声を頼りに、今度こそ見つけた。
年は二十と言ったところだろうか。
身長と同じくらいかと言うほどカールの撒かれた銀髪を伸ばし、ふわふわのフリルがこれでもかというほどにあしらわれた、真っ白なワンピースを着ている女性。
胸元には赤いリボンがされており、すらりと細い足が裾からぶらぶらと揺れている。
彼女は木の枝に腰かけていた。
四,五メートルほどあり、落ちたらけがをするくらいの高さだ。
「とぅー!」
すると、なんと彼女は威勢のいい声を出しながらその枝から飛び降りた。
あまりにも唐突なことだったの、祐介は助けにいくことも忘れてしまう。
だが、彼女はそんなことは必要ないとばかりに自信満々な顔で重力に引っ張られ――
ズデーンと、彼女はお尻から見事に着地した。
◆
「グスン……また失敗してしまいました……。わたし、やっとこの立場につけましたのに……」
「あのー」
しかし、目の前にいる彼女は祐介の声が聞こえないのか、テーブルの上にうづくまって一人の世界に没頭し続ける。
ちなみに、今はカフェのデッキにあるような白くて華奢なテーブルをはさんで、向かい合う形で座っている。背もたれが思ったよりも柔らかく、学校の椅子もこんなのならぐっすり眠れるのに、と思った。
「う``う``……あの人も絶対私のこと変人とか思ってます……。今日こそは頑張ろうって、かっこよく登場しようって……」
「……あのー、ちょっとー」
「やっぱり私、この仕事向いてないんです……でも姉さんにはとってもお世話になりましたし……」
「えっとーそのー……女神さま?」
「はいなんでしょうかよばれて跳び出て女神です!」
祐介の言葉が琴線に触れたのか、それまでとは打って変わってキラキラとした目をする彼女。……彼女神?
っていうか、勘で言ったみただけなのに、マジものの女神様?
色々と意味が分からず、祐介は戸惑いながら疑問を口にする。
「あの、状況説明とかしていただけると助かるんですが……」
「あ、はいそうですよね。うーんと、なんというか、あのーあれですよあれ」
「……僕、死にました?」
「……あわわわ、それ言っちゃダメですよ。そしたらパニックになる、って先輩に口酸っぱく言われたんです」
「ああ……そう……」
女神様の慌てぶりは放っといて、祐介は一人うつむいた。そのまま目元に手をやる。
「僕……死んだんだ」
自分で言って、心にストンと何かが落ちたような気がした。未だ信じられないし、信じたくないし、信じられる気もしないが……それでも、理解した。っていうか、自分で女神って予想したし。うすうす、気づいてたし。
一方、女神様はその事実に気付かれたことが相当不味いようで、さっきから視線が右往左往している。
「あの……上谷祐介さん? 大丈夫ですか?」
「…………」
「心配ないですよ上谷祐介さん。あなたのことはお母様がしっかり葬儀してくれました。死体はちょっとあれだったので非公開でしたが、たくさんの人があなたのために泣きました」
「…………」
「お友達さんのことも心配ありませんよ。秋一さんの方は、誰もいないところでひっそりと泣いて、まだまだ引きずっているようですが、時間とともに回復しそうです。千春さんも――」
「あのさ」
祐介は下を向いたままおもむろに彼女の言葉を遮った。本人は自覚していないようだが、グッと拳が握られている。
やがて数行の沈黙の後、絞り出すように彼はつづけた。
「ここってパソコンある?」
「……はい?」
彼女はあまりにも唐突な展開に思わず訊き返してしまう。
そしてこれがいけなかった。
「だってさ、僕まだまだ見てないアニメがもんのすごくたまってるんだよ。俺物語!!とか黒子のバスケとかFateとかさ。あれもうすぐ最終回なんだよいろいろ気になるんだよ『死んでも死にきれねぇ』んだよ分かる? 友達から勧められているギアスとかグールとかまだ見てないし、何よりブラブレとノゲノラの新巻いつ出るのさ! あれ最後に出てから2年近く経ってるよね? ISも長い間出てないけどあれはエロ方面に力入れ過ぎたから仕方ないとして、ともかくあれの最終巻まで、せめて次の巻ぐらいは読ませてよ神様なんだから出来るでしょ!?」
「ごめんなさいよく分かんないですどちょっとキモいです」
「今あげたのは健全な奴です!」
しかし、アニメというのは全く興味ない人からすればすべてひとくくりにされるものだ。とらぶるの一期と二期はまぁまぁ好きだったが、ダークネスも好きだと勘違いされるぐらい心外であるが、仕方ないことだろう。
だから、目の前の女神さまが急によそよそしい態度を取り出して、本格的に本題に入ろうとしても傷付いたりなんかしないと心に決める。
「ところで上谷祐介さん。そろそろ本題に入るとしませんか?」
「あ……はい」
思ったよりも真面目な顔をしたので、つい反射的にそんな返事が出てしまう。一応、相手は女神なのでどんな時でも真面目にしていなくてはいけないのだが、祐介はともかく女神すらも気付いていなかった。
「では、状況確認から。まずあなたは2015年9月に亡くなったことは、もう認識してますね?」
「あの、死因はなんなんですか?」
「落雷による感電死です」
「あー、なるほど」
言われて祐介は納得した。ここに来る間際に見た眩し過ぎる光は雷だったのかと。
「僕の死体、どんな感じでした?」
「うーん、写真とか見せられますけど、いろんなところが真っ黒焦げですよ?」
「やっぱ遠慮しときます」
自分の体が黒焦げになった写真とは、中々に目の毒だと思われた。全く興味がない訳ではないが、世の中には知らない方がいいことだってあるのだ。
「でも、意外ですね上谷祐介さん。普通自分が死んだと分かったら、もうちょっとパニックになるものらしいんですけど。……ああ、さっきはそれなりに混乱してましたっけ?」
顎に手を置きじっくりと考えてみると、なるほど、確かに自分でもびっくりするほど冷静だ。
「多分、実感がわいてないだけですよ。そのうちあとから来ます。だから、びっくりしてないうちにブラブレの新巻読ませてください」
「あの、私的にはそれでも構わないんですけど、あんまりお勧めはしないですよ?」
「はい?」
すると女神様は、言おうか言うまいか迷うようなポーズをして、結局あきらめたように口にした。
「あのですね、あなたはあまり分かってないようですが、ここは死後の世界。さらに言うならば女神が顕現する世界ですよ。そんな所に位置人間の魂が迷いこみ、さらには長居でもしようものなら、いつの間にか消えてなくなってしまいます」
「なにそれ怖い」
祐介はぶるっと自分を抱えるポーズをする。茶化してはいるが、そうでもしていないとやっていられないのだ。存在そのものがなくなるというのは想像もつかないが、出来ることなら体感したいとは思わない。
「まぁ、嘘ですけど」
「てめぇ調子乗ってんじゃねぇぞシバき回しますよコラ」
「ごめんなさいごめんなさい昔友達にやられてすごく腹が立ったんで、誰かにやり返したかったんです!」
「僕全然関係ないじゃないですか!」
まぁ、この女神さまはイジりがいがあることについては激しく同意するが。
ともあれ、祐介は自分の想像以上に目の前にいる女神さまを人間臭く感じた。この人だけが例外なのか分からないが、ギリシャ神話もあながち嘘八百というわけではないのかもしれない。
「あれゼウスが浮気して、ヘラが嫉妬するってだけの話なんだけどね」
「はい? 何のことですか?」
「すみません、ただの一人言。女神さまが思ったよりも……えっと―……そう、親しみやすい人だなーって思いまして」
「うーん、なんだか複雑な言葉ですね。そりゃまぁ、私って少しばかりおっちょこちょいなところも万に一つだけあるかも知れなくもなくもないですが……」
いや、君の思ってる百万倍あるよ――とは思いつつも空気を読んで我慢する。
一方、彼女は彼女でうぬぬと絞り出すように考え、やがて何かひらめいたようだ。
「あっ! それなら私の凄いところをお見せします」
堂々と胸を張る彼女。
しかし祐介は何とも微妙な表情だ。
「うーん、別にいいですよそういうの? ほら、そんな風に自分からハードル上げたら、いざやってから微妙な雰囲気になっちゃいますよ」
「なに女神相手に学校あるあるみたいなこと言ってるんですか! 大丈夫ですよ、これ本当にすごいですから、眼玉が物理的に飛び出ますから!」
「グロい!」
なんだかいろいろ不安になる祐介だった。




