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序章 追う者1
幼子が無茶苦茶に積み上げたつみきのような建物が建ち並び、その中心を通る日の差す大きな通りは多くの人と客引きの威勢のよい声、屋台の料理の匂いで満たされていた。
ふと少し外れた路地を覗けば酒瓶をかかえた者が寝転び、虚ろで焦点の合わない目薬物中毒者が壁にもたれて座っている。
「随分と雑多な街だな」
となりにいる男が溜息混じりに言った。
そうですね、と僕は答えた。
東洋の魔窟と呼ばれるこの街は確かにひどくごちゃごちゃとしていた。
「確かお前はスラムの育ちだったか?」
男が僕に尋ねた。
「ええ、でもここの方が治安はいいと思いますよ。」
死体とゴミが山のように積まれた景色と腐ったものの酷い異臭が一瞬頭をよぎる。
懐かしいとも戻りたいとも思わない故郷。
同じスラム街といっても天と地ほどの差がある。
「今回は何をすればいいんですか?」
僕は男に尋ねた。
「人探しの依頼だ。詳しくは今から向かう場所で説明されるだろう」