第十三話 ふれあい橋で朝食を
少女は、探していた
朝ごはんを食べる場所を
母と喧嘩をした
ほんの些細なことで
最近は、いつもそうだ
分かっている
自分が悪いことも
母は、ただ心配しているだけなのも
でも、いらだちが
抑えきれない
川沿いを、歩く足が、少しずつゆっくりとなる
川の流れに合わせて
心も少し緩くなる
少女は、この川沿いを歩くのが好きだった
川面が近く、朝の光が波打ち揺れる
ほっと息を吐いたときだった
どこからか笑い声が聞こえた
見ると、ふれあい橋の真ん中で、
人が集まっている
おそるおそる近づいていくと
笑顔の輪が広がっていた
通勤途中らしい会社員
散歩中のおばあさん
大学生
近所の店で見かけた店員さんもいる
橋の真ん中に置かれた小さなテーブルに
自然と食べ物が集まっている
誰かが持ってきたおにぎり
誰かが淹れたコーヒー
誰かが持ってきた牛乳パック
誰かが焼いたパン
おばあさんが、少女に気がつく
「あら、はじめてさんがいらしたわ」
言われて、手にコンビニの袋を持っていたのに気がつく
「さあさあ、こちらに座って」
少女の返事も待たず、おばあさんが
自分の隣を、ポンポンとたたく
欄干前の花壇の仕切塀だ
けれど、少女は気後れして、促されるままに座ることができない
「大丈夫よ。はじめはみんなそうだったもの」
おばあさんの穏やかな物腰に
少女の緊張はいつしか解け
腰を下ろすと同時につぶやきが漏れた
「なんか、あったかいな」
まるでフワフワの毛布に寄りかかっているような不思議な温もりだった
「うふふ、ここへ来ると、体もぽかぽか、心もぽかぽか」
「そうなのよ。こうしてると、こころが暖まってね
さあ、会社に行こうとすると、風が背中を押してくれるのよ」
会社員の女性がいたずらっぽく笑う
その会話に、水面が揺れ、光がキラリと走った
その朝ご飯は、とてもおいしかった
普段から口数の少ない少女が、
自分でも驚くほど、しゃべった
心地よい暖かさと頬をなぞる風、柔らかな川面の光に誘われるように
自分のこと
母親のこと
今の気持ち
誰もそれについては、何も言わない
それぞれが、好きにしゃべり
うなずいて、小さな言葉を返すだけ
(お母さんとも、こうして話せたらいいな)
ふいに、遠くからチャイムが風に乗って聞こえ、ハッとして立ち上がった
少女は、おばあさんたちにぺこりとお辞儀をして言った
「また、きていいですか?」
みんながうなずくのを見て、少女は笑った
「いってきます」
そのとき——
ふわりと、風が背中を押した
手を振った、その足取りはとても軽かった




