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妹扱いだった幼馴染は、結婚後に愛を止めなくなりました!?

作者: 有梨束
掲載日:2026/02/16

「アデル…、俺の女神は今も昔もお前だけだ」

クロードは私の首筋に唇を当てて、熱っぽい瞳で見下ろしてくる。


「もう俺だけのものだ、誰にも触らせたりしない」


私のことは、昔からずっと妹扱いだったのにっ…!



「アデル、なんで逃げるんだ」

「クロードが追いかけるからじゃない!」

私は侍女のサナの後ろに隠れた。


「夫が妻を愛して何が悪い」

「加減ってものがあるでしょう!?」

私は顔を赤くしながら、抗議する。

結婚初夜の翌朝、体中が痛すぎて3日も起き上がれなかったのは記憶に新しい。


クロードは兄の友達で、子どもの頃から知っている。

でも、クロードと結婚するとは露ほども思っていなかった。

私には9歳の時から、別の婚約者がいたから。


その婚約者は、寄宿学校に通う頃から人が変わったように女遊びが激しくなった。

それでも関係は続いていて、いよいよお父様が婚約を考え直そうとした時、婚約者は風邪を拗らせて呆気なく亡くなった。


その時だった、クロードから結婚の申し込みがあったのは。

家格も元婚約者より上で、昔からの知り合いだったのもあって、お父様は承諾した。

喪が明けてから婚約し、先月とうとう結婚したのだけど…。



「そもそも結婚してからクロード変よっ」

サナを挟んで、少しだけ顔を覗かせる。

「何も変じゃない。大体何がそんなに嫌なんだ。お前は昔から俺のことが好きだっただろ?」

「なっ、そういう無神経なところが本当に嫌っ!クロードのバカ!」

私はわなわなと震えながら、サナの背中にしがみついた。

婚約者がいるからと、そっとしまっていた初恋を今更暴露しなくてもいいじゃない…!


「申し訳ございません、我が主に情緒がなくて」

私を隠してくれているサナが呆れながら代わりに謝る。

「出会った時から妹扱いだったのに、なんでそんなに態度が変わるのよ」

私がさらに文句を言うと、クロードがウッと言葉を詰まらせた。


何よ、そんな気まずそうな顔しちゃって。

しばらく口だけが動いていたが、クロードの絞り出す声が聞こえた。


「…婚約者のいる女に、懸想するわけにはいかないからだろっ!」


「はあ…?」

「クロード様はアデル様を妹扱いすることで、ご自身の理性をなんとか保って生きてこられたのですよ」

「サナ、余計なこと言うな」

「アデル様が結婚するまではと、あんな歳になるまで結婚どころか婚約者も作らず」

「サナ」

「誰とも婚約しないから、当主様に何度怒られたことか」

「…サナ」

「本当に諦めが悪いのでございます。まあ、今回は粘り勝ちでしたね。長年の恋が実ってようございました、クロード様」

「………」

「ですので、ようやくアデル様を独り占めできて浮かれておいでなのです。申し訳ございません、我が主が想いを拗らせているばっかりに」


クロードは両手で顔を覆って、しゃがみ込んでしまった。


え、…っと、クロードって私のこと、好きだったの…?

じゃあ、私たち実はずっと両思いだったってこと?


「…好きって言われたことないんだけど?」

「…結婚したんだからわかるだろ」

わかるか!

「申し訳ございません、我が主が口下手のヘタレなばっかりに」


「ああ、もういい!アデル、出かけるぞっ!」

「へっ、どこへ?」

「サナ、支度してくれ」

「クロード様、そういうところですよ。結婚したからといって、心まで貰えたと思うのは思い上がりにございます」

「…連れて行きたい場所があるんだ、一緒に来てくれアデル」

クロードを言い負かせるのは、乳母の娘で本当に妹のようなサナだけかもしれない。


「そっか、今って夜明け祭の時期だったのね」

クロードに連れられて街に出ると、祭りで賑わっていた。

「昔、行きたいって言っていただろ?」

それ、12歳の時の話じゃない…?


夜明け祭とは、昼の神が怒り幾日も夜だけが続いた時に、夜の女神が自分の存在をベールで隠したことで昼を取り戻したという神話に基づいた、夜の女神に感謝を捧げる祭り。

女の子の憧れのデートの定番で、私も行ってみたかったのだけれど、当時の婚約者は私と行くことはなかった。


「アデル様、失礼します」

後ろにいたサナが、私に美しいレースのベールをかけた。

「え…」

すっぽり被って、私の顔は外から見られなくなった。

夜明け祭にベールって…。

意味がわかって、みるみる顔が赤くなっていく。


夜の女神にちなんで、意中の女性にベールをかけることで、他の男に近寄ってくれるなという印になるのだ。

今時、そんなことする人はいないのに…。

周囲の人たちから歓声が上がると、ヒューと口笛が聞こえたり、拍手の音がした。

ううう、恥ずかしい…。


「ほら、アデルの行きたいところに行っていいぞ」

なんだか満足そうなクロードの声が聞こえて、そわそわする。

クロードって、本当に私のことが好きなのかな。

こんな上等なレースで私を覆うくらいだから、好きと言われているようなものだけど。


手を握られて、私の歩きに合わせて進んでいく。

たしかに、大事にされているのはわかる。

でも、結婚しても今まで通り妹扱いは変わらないんだと思っていた。

だから、正直戸惑う気持ちのほうが大きい。


その手は熱くて、私の熱も気持ちも伝わりそうだった。



結局ベールは家に帰って、湯浴みをするまで被ったままだった。

夫婦の寝室に行くと、クロードは先にベッドに座っていた。

「祭りはどうだった?」

「楽しかった。夜まで踊っているって本当だったのね」

「ああ、お前に見せられてよかった」

なんとなく隣に座れなくて、突っ立ってしまう。


「アデル?」

「ねえ、クロード。私のこと、好き?」

「なんだよ急に」

「だって、信じられないんだもん…。10年の間、そんな素振りなかったし」

「婚約者のいる相手に何かしたら、お前に幻滅されるだろ」

「それは、そうだけど…」

たしかに、元婚約者のそういう部分に辟易していたから、クロードの気持ちが見えていた時点で私はクロードにもガッカリしていたかもしれない…。


「結婚は、昔のよしみで引き取ってくれたんだと思ってた」


私の呟きに、クロードは腕を伸ばして私を引き寄せた。

クロードは私を見上げて、どこから出したのか、さっきのベールで私を包んだ。


「初めて会った時から、俺の女神はアデルだった」


月に照らされたクロードの目が、私だけを映している。


「俺は諦めが悪いからな、お前と結婚できるチャンスを逃さまいと必死だったんだよ」

「…初耳よ」

「お前の兄に頼み込んで、義父上に手回ししてもらったんだからな」

なにそれ、お兄様も協力していたの…?


「アデル、愛してる。俺にはお前しかいないんだ」


そう言って、私と一緒にベッドに倒れ込んだ。

そのままいつもみたいに、たくさんのキスが降ってくる。


「これからはちゃんと口で言って」

「…こんだけ愛しているのにか」

「クロードの愛、わかりにくいもの」


私はクロードの唇にベールを当てた。


「ちゃんと言ってくれないなら、私も言わないから」

「…どれだけ俺がお前に焦がれていたと思っているんだ」

「え…」

「アデルがあの男と腕を組むたびに、腕を切り落としてやりたいと思っていた」

「ク、クロード…?」

「俺なら他の女に現を抜かして、あんなふうに悲しませたりしない」

「…クロード」

「お前のことを、最初から妹だなんて思ってない」


クロードの目が訴えかけるようで、私は息を漏らした。


「私もずっとクロードが好きだった。でも、それはダメだと思っていたから…」

「過去形じゃ困る」

クロードはベールごと私を抱き締めた。

あまりの力強さに、どこにも行くなと言われているみたいで、泣きそうになった。


「好き、クロード私も好き」

「あの男の記憶を消してやりたい」

「最初から心はクロードの方を向いていたのに?」

私がくすくす笑うと、クロードは眉を顰めた。

「それじゃ足りない」

クロードは激しくキスをするのだった。


夜の女神に見守られながら、初夜さながらの夜を過ごした。

次の日からまた3日立てなくなったのは、言うまでもない。


サナがクロードを説教するのが、本当に恥ずかしかった…!




お読みくださりありがとうございます! 毎日投稿47日目。

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