表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千年の時を巡り、滅びの歴史を書き換える。 ――河越家は、もう二度と沈まない。  作者: 空識


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/32

第25話 裂けゆく武蔵 ― 平家の包囲と源氏の密約

 平家の査察が始まってから五日。

 武蔵国は、ゆっくりと、しかし確実に“不穏な熱”を帯び始めていた。


 村人たちは噂に怯え、

 豪族たちは密かに兵を集め、

 寺社は武装を強める。


 平家が送ったのは“監督官”ではなかった。

 実際には――

 《東国の反乱兆候を早期に潰す部隊》だった。


(やっぱり……

 これはただの査察じゃない。

 修正派が平家に“東国に反乱あり”という誤情報を流している……)


 東国は燃え上がる寸前だった。



 その日の正午。

 河越城に児玉党の代表が駆け込んできた。


「重房殿! 一大事でございます!!」


「どうした」


「平家の査察団が……

 児玉領の武士二十名を“不審者”として拘束しました!!

 彼らはただ巡回していただけなのに!」


 家臣たちが怒声を上げる。


「いくらなんでもやりすぎだ!」

「反乱をでっち上げる気なのか!?」


 私は強烈な“揺らぎ”を感じていた。


(……平家の判断じゃない。

 この“過剰な警戒”は、未来修正派が誘導している……

 目的は“東国を割ること”)


 そう、東国武士団は本来、

 源氏挙兵の時にまとまる土壌がある。


 未来修正派はそれを最も恐れている。



 午後。

 比企氏の使いが来た。


「河越殿……

 平家方が“比企領で叛意の動きあり”と言って兵を動かしました!

 このままでは攻撃を受けかねません!」


 続いて足立氏。


「河越殿!

 わが領にも平家の兵が入り込みました!

 監視どころか、もはや占領です!」


 そして寺社の使者も顔色を変えて訪れた。


「久遠寺の僧兵隊が……

 平家の命で“武装警備”を命じられました。

 東国で戦が起こるのではと……!」


(動いたな……

 修正派は“東国内戦”を起こして、

 本来の歴史を壊させないようにしている)


 本来歴史は――

 源氏vs平家が主軸で、東国は一枚岩となる。


 だが修正派は、

 その前に“東国同士の争い”を引き起こそうとしている。


 歴史の軸をずらすために。



 その日の夕刻。

 父・重房が重臣会議を開いた。


「いま武蔵国で何が起こっている?」


 家臣が答える。


「平家は“東国反乱の芽を摘む”と言って兵を動かしていますが……

 動いているのは反乱ではなく、

 平家の攻撃そのものです」


「豪族たちは震えております」

「河越家に助けを求める者もいれば、

 平家に寝返ろうとする者も……」


 父が私を見る。


「重綱……

 そなたには、この戦の芽がどう見える?」


 私は地図を見つめた。


 地図の上に――

 薄い揺らぎがふわりと浮かび、広がっていくように見える。


(これは……修正派が“戦の火種”を置いている位置……

 つまり、戦略的誘導点)


 私は指を動かし、三か所を指した。


「……ここ……

 ここ……

 そして……ここ……」


 家臣たちが驚く。


「重綱さま……これは……?」

「まさか……“平家の狙い”か?」


 父が深く頷く。


「――いや、これは平家ではない。

 “第三の勢力”の工作だ」


(父上……気付いてきたな)



 議論が続く中、

 城の裏門からそっと入ってきた影があった。


 気配で分かった。


(季国……源氏の使者だ)


 季国が頭を下げる。


「重房殿、重綱殿……

 急ぎお伝えしたいことがあります」


「何だ?」


「平家はすでに、東国の豪族五家に

 “疑いの文書”を送りつけています。

 これは……反乱をでっち上げる前兆です」


 家臣たちがざわつく。


「平家は本気で東国を潰すつもりか……!」

「いや、これは明らかに不自然だ!

 平家はここまで強硬ではなかったはず……!」


 季国は首を振った。


「いいえ。

 この強硬姿勢は……“何者かが平家を煽っている”」


(そうだ……

 修正派の誘導だ)


 だが、季国は知らない。



 季国はさらに声を落とした。


「そこでお願いがあるのです。

 ――河越家には、東国武士団の“中心”となっていただきたい」


 一気に空気が引き締まる。


「中心……?」

「河越家が東国をまとめるのか……?」


 季国は私を見つめる。


「重綱殿……

 あなたの治水改革、豪族調整、寺社交渉……

 すべて東国の武士に希望を与えています。

 皆、あなたに従いたいと言っています」


(……そうか……

 だから修正派は河越家を潰したい)


 私は静かに言った。


「……かわごえ……が、

 まんなか……になる……」


 季国は深く頭を下げた。


「東国はあなたを求めています。

 そして……源氏もまた」


(源氏が……私を求める……

 歴史が動きすぎている……

 でも、止めない)



 会議が終わった後、

 私は一人で城の中庭へ出た。


 夜風が松を揺らし、

 その影の中に――

 また揺らぎが現れた。


『重綱……』


(修正派……今度は誰だ?)


 声は静かで、冷たかった。


『お前が河越家を中心に据えるつもりなら、

 歴史は必ず“破綻”する』


「……こわれない……」


『壊れる。

 お前の力は強すぎる。

 武蔵国も、東国も、源氏も……

 すべてが予定より早く動きすぎている』


(早く動くのが何だ……

 未来は変えられる)


『ならば、見せてもらおう。

 本当に未来を統御できるのか――』


 揺らぎは薄れながら続けた。


『――次に動くのは、平家ではない。

 東国の“内側”だ』


「……うちがわ……?」


『河越に刃が向く。

 歴史が“均衡”を求めるためにな』


(……豪族の誰かが裏切る……!?

 修正派が誘導して……!)


 揺らぎが消えた。



 私は城へ戻り、父に告げた。


「……うらぎり……くる……

 むさし……の……なか……から……」


 父の顔が緊張で固まった。


「重綱……誰が裏切る……?」


「……わからない……

 でも……くる……ぜったい……」


 父は深く頷いた。


「分かった。

 すべての豪族に目を光らせる。

 河越家は必ず守る」


 武蔵の空に、

 重たい黒雲がゆっくりと広がっていくように見えた。


(裏切り……

 戦……

 修正派の誘導……

 そして源氏の密約)


 東国は裂けようとしていた。


(ここから――歴史は“戦乱”へ加速する)


 私は拳を握りしめた。


(ならば、私が正しく導く……

 河越家の未来を)


――武蔵国、裂動の幕開けである。

どうぞ気軽に読んでいただければ幸いです。


ブックマーク・ポイント⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️・感想など、励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ