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千年の時を巡り、滅びの歴史を書き換える。 ――河越家は、もう二度と沈まない。  作者: 空識


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第22話 平家の圧力と源氏の影

 平家の使者が帰った翌朝、

 武蔵国はまるで“冬が戻ったかのような”冷たい空気に包まれた。


「平家が河越家に直轄監督を求めてきたらしいぞ」

「なんと……事実上の支配ではないか」

「河越が目立ちすぎたのだ……」


 村人だけでなく、豪族の館にも不穏な噂が広がり始めていた。


(やはり平家は本気で河越家を押さえに来ている……

 だが、それだけではない。

 背後には“未来修正派”が絡んでいる)


 都の政治――

 すでに彼らはそこへ潜り込み、

 歴史の流れを元に戻そうとしている。



 午前、河越城の政庁で家臣たちの会議が開かれた。


「平家は本気で武蔵国の改革を止めようとしている」

「治水改革も、農地改革も、平家の監督下に置くと言われれば終わりだ」


「従うべきか?

 それとも……反発するか……?」


 家臣たちの表情は重い。

 平家政権は絶頂にあり、

 逆らえば武蔵国ごと潰される可能性は高い。


 しかし――父・重房は迷わなかった。


「河越家は平家に逆らわぬ。

 だが、従いすぎもしない」


 重房は静かな声で続けた。


「武蔵国は東国の要。

 平家といえど、完全支配は難しい。

 我らは“時間”を稼げればよいのだ」


(そうだ……

 歴史はもうすぐ大きく動く)


 私は輪廻記憶の奥で、

 一つの未来をはっきりと感じていた。


(頼朝……

 彼が動く日は、遠くない)



 会議が終わると、

 一人の家臣が父に耳打ちした。


「重房様……児玉党より密使が参っております。

 平家の使者が伝えた内容を、

 “実際以上に強く受け止めている”様子で……」


「呼べ」


 豪族の動揺。

 これこそ未来修正派の狙いだ。



 密使は深々と頭を下げた。


「重房殿……聞き及びました。

 平家が河越家を直轄下に置こうとしていると」


「そうだ。しかし正式な決定ではない」


 密使の顔色は青ざめていた。


「……しかし、都では噂が広がっております。

 “武蔵国の反乱を抑えるため、河越家を押さえる”と」


(反乱……?

 それは誤情報……

 いや、未来修正派が流した“虚偽の歴史”だ!)


 密使は続けた。


「もし本当に河越家が平家の命で押さえられるなら、

 我ら児玉党は……河越から距離を置かねばなりません」


 その言葉に、家臣たちの顔つきが強張る。


「待て! 河越を見捨てるというのか!?」

「この危機の時に背を向けるとは……!」


 密使は震える声で言う。


「そうするしかないのです!

 河越が平家から“裏切りの疑い”をかけられれば、

 連座して我らも滅びる!」


(完全に未来修正派の思惑に乗せられている……!)


 私は立ち上がり、

 密使の前に歩み寄った。


「……しんぱい……しない……

 かわごえ……は……こわれない……」


「な……重綱殿?」


 私はゆっくりと密使の手を取り、

 地図の一点を指した。


「……みぎ……

 みて……」


 父が補足する。


「重綱は、平家の動きに“歪み”があると言っておる。

 都の情報がすべて正しいと思うな。

 これは“操作された噂”だ」


 密使は息を呑む。


「操られた……?」


「そうだ」


 父の声は力強かった。


「平家は武蔵を完全には支配できぬ。

 そしてこの混乱には“別の意図”がある」


(よく言った父上……

 その通りだ)



 密使が退室した後、

 私は父に近づいて囁いた。


「……みらい……まげる……

 やつ……ひと……おおく……

 むさし……だけじゃ……ない……」


「都にも潜んでいる、ということか?」


「……うん……」


 父の表情が険しくなる。


「平家の使者の背後にいた“影”……

 あれは、ただの陰陽師や呪術ではなかったな」


「……みらい……の……ひとかげ……」


「やはりか」


 父は深く息をついた。


「敵は、もはや理解の外……

 しかし、重綱。

 そなたはその敵を“見える”のだろう?」


「……みえる……」


 私は迷いなく答えた。


「……だから……たおす……

 かわごえ……まもる……」


 父は私の頭に手を置いた。


「――ならば、戦おう。

 武蔵国だけではなく、

 未来そのものと」



 その日の夕刻。

 私は城の高台から、武蔵国の大地を眺めていた。


(平家は強い。

 だが、その強さは歴史上“長くは続かない”)


 輪廻の奥底に刻まれた未来記憶が語る。


――やがて源氏が挙兵し、

――東国武士団が一つになる。


(その時……河越家がどこに立つかで、

 歴史の流れはまったく変わる)


 未来修正派は平家に肩入れしているわけではない。

 彼らはあくまで“均衡”を求めて動く。


 だからこそ――

 河越家が強くなるたびに、

 別の勢力が揺さぶられるよう仕向けてくる。



 夜。

 私は再び揺らぎを感じた。


――ふ……ぅん。


 光でも影でもない、

 世界の“ノイズ”のような揺らぎ。


(これは……黒装束のやつらではない……

 もっと……薄くて……遠い……)


 まるで、“未来そのもの”が震えているようだった。


 その時――

 薄い声が耳元で囁いた。


『重綱よ……お前は、どこまで歴史をねじ曲げるつもりだ?』


(また別人……!

 未来修正派は何人いるんだ……!?)


『源氏が動く。

 平家が揺れる。

 歴史が大きく変わる。

 その中心に、お前がいる』


 声は続ける。


『その歴史が耐えられると、本当に思うのか?』


 私は静かに答えた。


「……たえるように……する」


『そのために、未来を壊すのか?』


「……みらい……つくる……

 こわさない……

 かわごえ……まもる……」


 揺らぎは一瞬だけ固まり、

 そしてふっと消えた。


(……やはり、未来修正派は“源氏の動き”を警戒している……

 ならば、次の局面で彼らは必ず介入する)


 私は拳を握りしめた。


(いいだろう……

 来るなら来い。

 源氏と平家、そして未来まで。

 すべてをこの目で観測し――

 私が未来を作る)


 武蔵国の夜風が、静かに私の頬を撫でた。


――歴史は、とうとう戦乱の時代へ動き始めたのだった。

どうぞ気軽に読んでいただければ幸いです。

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