下弦の月
短く叫んで飛び起きたオレは、そこが紛れもない自分のマンションの一室であることに気付き、両手で額を押さえた。
また、あの時の夢を見てしまった。
額に汗をかいていることに気付き、無造作に右手の甲で拭う。
これが初めてのことではないのに、心臓は早鐘を打ち、全身は汗でぐっしょりと濡れていた。
夢の中で、何度も再現されるあのシーン。それは、彼女を救えなかったオレの自責の念が生み出したものに他ならず――
あの時、もっと強く彼女を引き止めていたら。
どこにも行くなと、強引に腕の中に閉じ込めていたら……。
そんなことをいくら考えても、全てがなかったことになる訳ではないというのに。
変えられない事実。
戻らない魂。
胸の中に渦巻く彼女への想いは、最早、愛情よりも謝罪の方が遥かに強く。自分と出会わなければ全ては起こらなかったかもしれないと、おこがましいことを考えては頭を抱えた。
いつか、真相は明らかになるだろうか?
オレが、この呪縛から自分を解き放つ日は来るのだろうか?
ふと気を緩めると、あの日に引き戻される自分がいる。そして、時間の経過とともに自分を責めることで贖罪に代えているような、そんな自分に嫌気がさした。
過去なくして現在があり得ないように、現在なくして未来もあり得ない。
明日があるから今生きることを願い、過去があるから今の自分が在る。
ベッドから起き上がり、ベランダへと続くカーテンを開ける。見上げると中空に浮かぶ下弦の月が、オレの未来を照らし出すように青く輝いていた。
END
本作品は二次小説として書いたものですが、一次でも成立すると思いアップしました。
作風を知っていただくためのサンプルとしてお読みいただければ幸いです。




