第四十三話 カラッポ①
選択に迫られたわたし・・・
今の今まで自らがブレスを準備し、カイが復活したら無限の力をすぐに発揮出来るようにするのが目的だった。その為、事前に天空、光、音、剣の石をゲットしようと・・・
しかし、その考えは過ちであったことに気付く。そう、石の力は与えた者が認めし者のみが使用出来るという、いわば契約的なものであったのだ。
ナゼ、こんな初歩的なミスに気付いていなかったのか・・・焦り、孤独、不安、様々なファクターが重なり冷静な判断が出来なくなっていたのだろう。
しかし、何もしないよりか確実に前進はしているのは間違いない。何もしないでの後悔よりも、何かをしてからの後悔の方が納得いく。
さて、二つの選択肢に迫られたが、どうするか・・・
一つは、カイを探し出すことを最優先とし、無限の石の素材である光、音、剣の力を持つ者へと事前のアプローチを行うこと。
天空の力の持ち主であるティナは同行しているので問題ない。その他の三人、マイちゃん、パルス、キャンティに事前承諾を得るのだ。カイが復活した際には再度、石の授与をして欲しいと・・・
そうしておけば、カイが見つかった後の展開がスムーズにことが運ぶ。
もう一つは、わたしが無限の石を完成させる。通常ならば、石の持ち主が認めし者のみ、石の力の発動が可能。故に、わたし以外の者は石の力を使用出来ない。
だが、魔剣状態へと形態を戻し、わたしが石の力を発動させたものであれば、それをカイへと託すことは可能である。即ち、わたしの力をカイへとフィードバックさせるのだ。
後者の方がスムーズにことが運ぶと思われるが、カイがそれを受け入れてくれるだろうか?それよりも、わたしなんかが三人に認めてもらえるのだろうか?ということが一番危惧される。
あれこれ、不安要素を考えても仕方がないな。まずは行動してみてから、柔軟に行動を変えていこう。
「最初に光の力の持ち主のマイちゃんの元へと行く。竜眼では、サーチが難しいだろう。マイちゃんなんて名前の人物は、多数存在していそうだからな・・・だから、ここは雰囲気の個性を使っていく。」
「雰囲気の個性って何なの?」
転生したティナが解らないのももっともだ。一緒に行動を共にするのであれば、大切なことはしっかりと共有していかなければならない。共有することで、わたしが思いつかないことを彼女が思いつくかもしれないからだ。
「雰囲気の個性とはな、魔王ファイが前世のカイとティナに教えてくれたものだ。これはスキルのようだが厳密には異なる。人は各々、雰囲気というものが存在する。気や存在感がそれに相当するが、十人いれば十人十色その個性も異なるのだ。」
「うん、そうだね。気や存在感は皆、それぞれ違もんね。」
「その沢山の個性がある雰囲気を遠く離れていても感じる感性が、雰囲気の個性というものだ。カイとティナは天空の力を持っていた・・・天空の力は大気を掌握する力、故に探したい相手が遠方にいても探し出すことが可能だったのだ。わたしには天空の力は無かったが、二人の感性を幾度となく感じることで、今から使う雰囲気の個性が自然と身についた。そういう訳だ。」
「でもさ、その雰囲気って知っている人しか解らないじゃない?」
「そうだ、よく気付いたな。知人や友人、家族など直に接したことがある者でなければ雰囲気は感じられない。勿論、遠方にいてもわたしの無限竜魔気がある限り、対応は可能だ。」
「じゃあ、あたしにも出来る可能性はあるんだね。特殊魔気は無限じゃないから今はムリだケド、天空の力が目覚めた時に・・・でも、レイばっかりに負担かけられないから、あたしも何か役に立ちたいよ。」
「そうだな。だが、まぁ焦ることはあるまい。共に行動していれば、雰囲気の個性は一人が出来れば良い。」
ティナは黙って頷いた。今は弱くても、彼女なりに何かが出来るようになって役に立ちたいという向上心は素晴らしい。
それにディールのスキルはかなり魅力的だ。彼女のボディーが耐え得るレベルまでのスキルならば対応可能だろうから、かなり期待が持てる。
「マイちゃんのいる場所は・・・こっちか。」
わたしは雰囲気の個性を発動させ、彼女の居場所を特定する。
「ここからだと、結構遠いな。」
わたしは、おもむろにティナの首に左手を回す。彼女の身体は、ビクンと反応した。丁度、うなじの辺りだったからであろう。女性が感じる部位の一つではあるが、突然の行為であった為に彼女はたじろいだ。
「チョッと急に何?」
そう彼女が言うのと同時に、今度は右手を彼女の足へと運び、お姫様抱っこの体勢を取る。
「何って、お前を抱えて飛行した方が早く到着するであろう?」
「・・・・・」
ティナは顔を真っ赤にしていたが、言葉が出なかった。いい年をした自分が、同年代の少女にお姫様だっこをされたことにプラスして唐突にとはいえ、うなじに触れられて反応してしまったことで頭の中が恥ずかしさで一杯だったのであろう。
こういう女性らしい一面を観るのは、何とも微笑ましい限りだ。今までの魔剣形態ではゼブルとして男性がメインの存在で、女性のわたしは表舞台に出ることはなかった。戦力としてはゼブルの中で活躍はしていたものの、感情を表に出したり誰かに触れるという感覚は皆無だったから・・・
だからこそ、今この一瞬一瞬が新鮮で楽しい。
魔剣形態から人化する際に女性の形態にしたのは正解であったな。男性の形態にしていたら、ゼロの奴、ティナと触れ合うことも出来ないし、オロオロするのがオチであろう。
二人で一つの存在である我らは、互いのことを熟知している。ゼロは男気に溢れ強さも兼ね備えているが、女性に対しての免疫が皆無だ。
その為、キャンティに言いくるめられたりする。それに女性に対してのアプローチも不憫でならない。
その点、わたしは女性としての思考は十分理解している。勿論、同性ならではの問題点は出てくるだろうが、そこは柔軟に対応していく所存だ。女とは意外と複雑で繊細な生き物・・・なんてことを男が口にしたら色々と問題になるが、同性のわたしが言えば率直な意見なのだ。
「そろそろか・・・」
わたしは飛行スピードを抑え、ゆっくりと目的地へと足を下ろす。抱きかかえていたティナを優しく腕から降ろし、辺りの様子を伺った。
目の前には、コウさんとマイちゃんが出迎えていてくれたのだ。その他には人の気配はない。
やはり、この二人は人目を避けて旅を続けているのだろうか?だとすれば、マイちゃんの人間不信は未だに健在という訳か・・・
「コウさん、マイちゃん、久しぶり・・・って言っても、この形態で会うのは初めましてだな。わたしはレイ・・・カイのパートナーのゼブルが人化した状態って言えば解るかな?」
「えぇ、勿論解りますよ。あなたの中には極めて珍しい、夜叉極とギドファインが宿っているのを感じます。ゼブルさんにもそれがありましたからね。イヤ~レアな二品目を同時に感じるのは、実に八百年ぶりで、感動ものです。それにあなたの気は特殊ですから、間違いないと確信致しました。」
コウさんは丁寧に対応してくれた。
しかし、わたしの中に眠る夜叉極とギドファインの存在をナゼ、コウさんは解ったのか・・・それが理解不能だ。
キャンティが言っていた。わたしの素材には夜叉極とギドファインを使っていると。この二品の素材は、その辺に転がっている物ではなく、激レアな素材であり滅多な事では入手が出来ないとか・・・
もしかして、コウさんは光を当てて物質の素材をサーチ出来るのか?光の波長の種類によっては、そういったことが可能なのかもしれないな。
外部からの物質のサーチにおいては、パルスの超音波の方が可能性は高いがここにはパルスの存在は確認出来ん。パルスの居場所は、雰囲気の個性によるとここからかなり離れている。
それにしても、八百年前にしれっとゼブルの内部をサーチしていたとは・・・
コウさんはやはりキレる人物だ。戦力的には突出して高くはないが、頭脳としてはかなり出来る存在。
その冷静さも相まって、味方となればかなり頼りになるのだが・・・
「コウさん、わたしはよく解らないのだが、夜叉極とギドファインという素材はそんなに希少価値の高い物なのか?なにぶん、キャンティが作ったとはいうものの、詳細については何も聞いていないのだ。」
「レイさん、夜叉極は魔界において特別な逸品と聞いていますが、詳細はわたしにも解りません。しかし、ギドファインはわたしたち光の精霊が作り出した物。今、作製は訳あってストップしているので激レアなのです。どんな状況に於いても光輝くことが可能な素材、不可能を可能にする素材がギドファインなのです。」
何とそんなに特殊な素材だったのか・・・
どんな状況に於いても光輝くことが可能とは。言われてみれば、わたしはヘコむことはあっても引きずらないで可能思考で物事を考える傾向がある。
どうすれば、出来るのか?を考えることは簡単なようで意外と難しい。そう考えることで自らの中が熱くなり、何か光輝くような感じが何となくあった・・・
それと夜叉極・・・これが原因でわたし自身が夜叉となってる気がするな。時折、スーパーハイテンションになっているが、わたしの中の夜叉が暴れているのであろう。
その暴君化している竜魔気をギドファインが超活性している?
まさかそれがキーになって無限竜魔気が発生しているのか?ドラゴノイド形態へもこの二つの素材が共鳴して成功しているとしたら・・・キャンティ、改めて唯一無二の鍛冶師だ。そこまで計算しての魔剣作製だったとは・・・グリフォンやハルさんとの【圧倒的な差】はここにあったのか・・・
わたしは苦笑いをしながら、同時にキャンティに感謝した。激レアな素材をわたしの為に使ってくれたのだ。
それとも無限の可能性を発揮出来る魔剣をただ単に作りたかっただけなのかもしれない。どちらにしても作り手の想いを超越した成果を出してこそ、その想いに報いることが出来るのだ。更なる精進を重ねていかねばな・・・




