第四十二話 ナゾコエ④
破壊竜ティナ。カイをパートナーとして子を宿し、能力を代々継承していく存在。それは彼女だけでなく、万力竜、次元竜も同様の存在。
故に、パートナーにナカナカ出会えなくてもウン千年間以上も無事に生存が可能。如何に不老不死といえども細胞が消滅したり、魂が消滅したら自己再生は不可能。その場合は転生し、再度パートナーのカイとの間に子を宿し、能力を継承していく。
但し、その場合能力はリセットされ、ゼロからのスタートとなる。だから、今の彼女は弱い。
代々、子を継承してしていけば、母親から天空の力やカイのこと、竜水晶のことなどを聴くことが出来よう。しかし、転生ともなればそれも不可能。
そこで今回の謎声ちゃんの登場となる。
謎声ちゃん・・・その正体は不明。現状は光の力の持ち主であるマイちゃんの可能性が高いが、それはあくまで推測。
転生したティナに母親代わりに情報を与えてくれる存在の謎声ちゃん。その者がティナに生きる術にもなるディールを与えた。
ディール・・・
これまた謎のスキルだが、おそらくは同調スキル。相手のスキルと瞬時に同調し、同等以上の力をも発揮出来得る素晴らしいスキルだ。カウンターとも呼べるそれは消えることなくティナのスキルとして身につけられる。かつての超星獣ストロームならば、喉から手が出るほどに欲するスキルだろう。
だから、今のティナは弱い。
誰かが守ってやらねばな・・・
それは偶然か必然かわたしの役目であろう。故にわたし自身も強くならなければならない。
カイの為にと思ってゲットしたわたし専用のブレス・・・
これを活用し、無限竜魔力と共に彼女を守っていこう。そして、復活したであろうカイを探し出すのだ。
あとの謎はブレス無しの念波だが、先に考察したようにこの八百年間の間に時代は変わったし、ブレスを媒体としなくても念波が可能となる何かが出来たのかもしれぬな・・・
まぁ、これもそのうちに判明するであろう。
「レイ、これからどうするの?あたしも散々カイっていう子を探してみたのよ。竜眼のサーチには引っかからないし、沢山のギルドにも問い合わせしても無駄足だったんだ。」
「ギルド?それは何だ?」
「えっ?ギルドを知らないの?冒険者が集う同盟みたいな感じかな。強そうな人もいたけど、所属している人は皆、まともだったよ。今の時代、荒くれ者が多い中、力を正当なことに使うことを理解している集団ばかりだったよ。」
わたしの空白の八百年の間にそんな団体が沢山出来ていたのか。昔のようなゼウス統治の時代では無くなったからかもしれないな。誰かが誰かを守ることを自然と出来るようになっていることは素晴らしい限りだ。
「なぁ、そのギルドにはどんな人種がいるのだ?人間だけではないのではないか?」
人間の身体能力は限界値が極めて低い。カイ、ヴァン、ゲンのようにブレスを持ち、三竜姫の力の恩恵を得られた者のような特殊な条件でなければ所詮ムリなのだ。
「えっとね、人間、魔人、魔獣、妖人、昆虫人、星獣、星人・・・あと他にもいるかもしれないケド、とにかく色んな人種がいたよ。ギルドには長がいて、長以外は皆の立場は平等。上も下もないし、差別や偏見もない。ステキだよね。」
「うむ、そうだな。組織として申し分ない。ギルド巡りをして知識を得ることや手合わせをして我々の力を上げていくことも出来そうだな。」
「じゃあ、これからはギルド巡りをするの?あたしも何か所か回ったけど、結構時間がかかったんだ。飛行スピードが遅いし、方向音痴だから・・・」
ティナは照れ笑いをしていたが、自らの弱みを明るく話す彼女は素直である。自らをカッコつけて弱みを見せない者よりもわたしは断然彼女を信じるに値すると感じた。
「イヤ、先にブレスにセットする石を集めたい。それとだな・・・」
わたしは、素直に自らの事やその他の事を隠さずに素直に話してくれたティナに申し訳ないと思ったのだ。
自分が前世のカイやティナと共に戦ってきた事。
自らの正体が実は魔剣で人化が可能、それも男性・女性の性別を問わずに行えること
これらのことを話すのを躊躇したのは、変態扱いされるのではないかと危惧したからである。
しかし、彼女の言動をみてそれは過ちであったと後悔したのだ。
やはり、大切な仲間に対して嘘はいけない。ここは詫びをいれて正直にあったことを伝えるべきなのだ。
遅かれ早かれ、わたしと行動を共にする以上、いずれは解る事。別に変態扱いされても良いではないか。それがわたしゼブルの実態なのだから・・・
「実はだな・・・わたしの実態は人間ではない。信じられないかもしれんが、魔剣なのだ。嘘をついてしまい申し訳ない。お前に変態扱いされるのを危惧してしまったのだ。魔界の天才女鍛冶師キャンティが五百年かけて作った一太刀、ホントの名はゼブル。二本の魔剣が合身して一本となった。男性のゼロと女性のレイでゼブル・・・何ともふざけた名前と思うだろ?名付け親はカイ。わたしのパートナーだった。八百年前の戦でカイと前世のティナはこの世を去ってしまった。カイとティナは転生すると約束してくれたのだ。待ちに待った八百年、ティナは転生して目の前にいるお前だ。竜水晶があるので間違いない・・・わたしは一度なった形態には再度なれる。」
ティナにそう伝えると、わたしは前世のカイの姿へと形態を変えてみせた。
「どうだ?これが前世のカイの姿だ。実際にはカイにはなったことがなかったが、カイと合身することがあり、彼の遺伝子情報は獲得出来た。わたしは無限竜魔気という突然変異種の魔気を使用できる。その力を活用し遺伝子操作を行い、自らが描いた生命体になれるのだ・・・そして、レイはわたしが望んだままの姿。どうだ、見事な変態だろう?」
わたしは開き直って、正直に今まで隠してきたことを話していった。これで彼女が気味悪がってわたしとの旅を拒むのならば、それは致し方ないこと。全てをありのままに受け入れることが大切なのだ。
「ビックリのオンパレードだね~。でも、ありがとう。そんな大切な秘密をあたしなんかに明かしてくれて・・・ねぇ、知ってる?変態って形態が変わるって書くんだよ。レイにピッタリな言葉だよね。」
ティナは私を直視し微笑みながら、そんなことをつぶやいた。
そして、何やら熱いものが込み上げてくるのを実感した。
何だ?何なのだ?この感覚は・・・
もしかして、わたしは感動しているのか?
剣という無機質のものにAIと魂を取り込んで出来ただけのこのわたしが感動?
カイを失った時は悲しみに陥った。喜怒哀楽以上のものがわたしにもあるのか・・・
参ったな、生きる喜びにしかならないぞ。
「勿論、あたしはレイと一緒に旅をするよ。あたしに特殊な魔力を与えてくれたのもあんたなんだからね。でもさ、この特殊魔力ってスゴイね。自分の魔力に特殊魔力をぶつけたら魔力を侵食しちゃうなんて・・・だから、成長を見届ける義務があんたにはある。なんて、偉そうなことを言っちゃったケド、やっぱカワイイ子と一緒にいるのはあたしも楽しくなるからさ。」
何と、この一時の間に竜魔力もどきの特性に気付くとは・・・まだ目覚めていないキラリと光るセンスがあるのかもしれんな。
それにしても、嬉しいことを言ってくれる。わたし自身の成長も大切だが、ティナの成長、特に天空の力に早く目覚めてもらわなければならないな。
「レイ、それで最初は何処に行くの?何か決めている所ってあるのかな?」
「あぁ、それは決めている。光の力の持ち主、マイちゃんの所だ。」
「光の力って、激レアの力で超有名じゃん。その持ち主のマイちゃんって知ってるの?門前払いされるのがオチってことになるんじゃないの?」
ティナがそう思うのも無理はない。
未だかつて、マイちゃんがカイ以外に心を開くことは無かったからだ。この八百年の間も変わりなくマイちゃんは、コウさんと旅を続けていたに違いない。
そんな寂しい日常は、わたしたちが行くことで無くしてあげなければならない。そう思うのは恩着せがましいか・・・カイならば、もっとフランクに友達として接しているだろうからな。
「実はな、マイちゃんとは面識がある。まぁ、面識というかわたしとカイ、前世のティナで友達になったのだ。そして、カイはマイちゃんに認められ、光の力を得たのだ。」
「そうなんだ。前世のカイって凄かったんだね。でもさ、以前友達だったからといって今回も光の力を託してくれるとは限らないよね。だって、八百年間誰一人として光の力を得られていないんだよ。八百年、八百年だよ。」
「そんなに強調しなくても十分承知している。時が経てば人の考え方も変わるかもしれないからな。でもな、光の力は絶対に必要なんだ。わたしはそれを受け取ってカイに託したい。」
わたしはハッとした。そうだ、何でこんな単純なことに気付いていなかったんだろう・・・
ブレスに石をセットし、その力を有効活用出来るのは、石を託した者が認めし存在のみ。仮にマイちゃんが、わたしを認めて光の石を託してくれたとしよう。
しかし、転生したカイを見つけ出してもわたしが得た石がセットされたブレスをカイは扱えないということに気付いていなかったのだ。
前回の戦でカイの意識が無くなった時は、わたしが無理矢理カイの体を動かしてきた。だが、それはカイがメインでわたしが魔剣というサブの状態だったからこそ可能だったということ。
だから、今回メインがわたしでカイがサブということは有り得ない。有り得るとするならば、カイが魔剣に転生しわたしがメインでドラゴノイドになることしか考えられない。
人が魔剣に転生するという可能性は、無くはないのかもしれない。このスティール星には五本の魔剣が存在していた。ゼロ、レイ、グリフォン、ハルさん、行方不明のメデューサ。可能性があるならば、メデューサか他の星々の魔剣・・・
だが、そんな可能性は天文学的数値であって、まずは考えにくい。人が人に転生するということが一番可能性も高く、極々自然的なことなのだ。
もしかしたら、さっきの会場に集まっていた沢山の若者の中にカイがいてもなんら不思議はない。勿論、名前や雰囲気は前世のカイとは全く異なっているという前提だが・・・
そこに気付いてしまった以上、冷静に考えた結果、選択肢は二つに絞られた。
さてさて、どちらを選択すべきか難問である。




