第四十二話 ナゾコエ②
「これが、ディールなのか?」
「うん、そうだよ。謎声ちゃんが言うには、相手の攻撃に対応する力なんだって。それも相手のパワーを少しだけ上回った状態での対応らしいよ。だから、レイの技を粉砕しあたしの技が生き残った。でも、いなされちゃったけどね。」
ティナはニッコリと微笑みながら、説明してくれた。なんてこった・・・これじゃ、容易に彼女には勝てないケースが想定される。
ディールウィズの略がディールって言っていたな。ディールウィズって、よくよく考えたら、なんとかするっていう意味ではないか・・・
まぁ、完璧なスキルは有り得ないというカイの自論があったから盲点はあるにしても、どうやら謎声ちゃんとやらに彼女は加護されているようだな。
「なぁ、このスキルで出来たことは、その一瞬だけのことなのか?つまり、わたしが放ったリーズストライクを今後お前は使えないのか?」
「ううん、使えるよ。使える技が増えていくのって何か楽しいし、あたしは謎声ちゃんとディールに守られているって感じかな。」
これはキャンサーのスキルコピーを上回ったスキルだぞ。キャンサーのスキルコピーは確かに凄かったが、一定時間のみの使用しか出来なかった。
時間の経過と共にコピーしたスキルも自然消滅していったからな・・・
だが、ティナのディールは違う。得たスキルは時間制限もなく自然消滅しないし、相手のスキルをわずかに上回ってカウンターのように放つことが出来る。
彼女自体が不老不死であるから、ドラゴンハートのような自滅技を使用しない限り、まずは安心である。
それにしても、わたしの手刀が放ったスキルと同レベルのスキルを一瞬で発動させる反射神経は素晴らしい・・・
だが、論理的にそんなことは可能なのか?イヤイヤ、ムリだろう。ディールという特殊スキルをもってしても、初見で一瞬のカウンター攻撃は高速攻撃では絶対に不可能だ。ならば、どうやって・・・
時間を止めることが可能?
ロゼオンのようにタキオン粒子状態のスピードが可能?
未来が見える?
未来からのフィードバック?
まぁ、可能性がある所はこんな所だろう。謎声ちゃんの加護があってのことだが、その正体は不明・・・
もしかして、謎声ちゃんってクロちゃんなのか?時の神クロちゃんなら、こんなことも可能であろう。
クロちゃんなら転生したティナに肩入れするのも頷けるしな・・・
そうだ、もう一つの可能性があるとしたら、ディールとは相手と同調するスキルなのかもしれない。相手と同調することが可能ならば、瞬時に相手と同じ行動が取れカウンター攻撃も出来る。
もし、これが可能ならばまさにほぼ無敵だがな。まぁ、それはほぼであって完全無欠という訳ではない。同調にも穴があり、つけ入るスキはある。
そういえば、カイが言っていたな・・・
スキルとは、じゃんけんみたいなもの。完全なスキルは存在しない。何かには強いが別の何かには弱いものであると・・・
現状では考察はこれくらいしか出来ないが、今後のティナの状況確認をしていけば、真実が見えてくるだろう。一つ試したいのは、わたしの無限竜魔気の限界状態でも同等のパワーを有するカウンターが出来るかどうかというところだ。
無限竜魔気はそれこそ無限の気を発することが出来、それをパワーに変換出来る。
だが、今のボディーで耐え得る限界レベルというものが存在する。その限界レベルを超越したパワーは出せるのだが、ボディーが崩壊してしまうのだ。
それは魔剣状態であっても同様で、無機質での限界レベルを超越してしまえば剣も崩壊してしまう。
どこかにないだろうか?わたしの無限竜魔気をそれこそ限界無く使えることが可能なボディーは・・・
あぁ、やめだやめだ!あれこれ考えることよりも今はカイを探し出すことのみにフォーカスした方が良い。
でも、試したいものだ・・・
ティナのディール、わたしの竜魔トルネードも対応可能なのか?
試したいかも・・・
試したい・・・
試そう!
わたしは自らの好奇心から、竜魔トルネードをティナに試すこととした。勿論、フルパワーでは行わない。低レベルにパワーをコントロールして、ティナがこれに対応し、竜魔トルネードを放つことが可能なのかが観てみたいのだ。
イヤ、正確には竜魔気のスキルが複製出来るのかが観てみたいのだ。竜魔気とは突然変異種で唯一無二のものだと認識している。だが、ベースにはティナのドラゴンの気も含まれている。だからこそ、興味がわいてきたのだ。
「いくぞ、竜魔トルネード!」
わたしは両手ではなく、竜魔気で作り出した観えない一本の剣を片手に持ち、仁王立ちする。観えはしないが、その切れ味はわたしが魔剣形態であった時と何ら変わりない。
カイと共にこのスキルを編み出した際には、電磁コイルの力を用いていたが、今は光の力が無い以上、それは不可能。
電磁コイルの力を用いれば、ロスなくダイレクトにパワーを回転力に回すことが出来る。パワーを電磁力に変換すれば良いからだ。
しかし、それが叶わぬ以上、竜魔気を回転にまわしていくしかない。そう、これはヴァンが行った方法であり、パワー主体のやり方である。しかし、やってみて実感したがこれは無理矢理なやり方である。体力バカのヴァンだからこそ成功しているが、それもリンのアシストがあってこその成功である。故にフツーの奴がやろうとしても成功しないだろう。
「ディール・・・竜魔トルネード!」
おっと、ティナもディールの力を用い回転を始めた。その手にはわたしと同様、観えない剣を持っている。
謎の力、ディール・・・それの解明の為にも直での接触が必要だ。 これで竜魔気の対応が出来るのか?という疑問が解ける。
駒のように回転した二つの剣。一定の回転力に達した途端、地を離れ天高く舞い上がる。そのタイミングはほぼ同時・・・やはり、ディールとはわたしが予測したいずれかの方法で行われるスキルなのだろう。
天高く舞い上がった二つの駒は、ほぼ同時に水平飛行へと角度を変える。そして、遂に激突の時を迎える・・・
激突した瞬間、激しい閃光が発生する・・・
二つの高回転の剣先は、お互いに引きことなく接触し続けスパークする。
この感触・・・魔気でもなく、波気でもない、まさしくわたしの竜魔気と同系統・・・だが、何かが異なるな。竜魔気のレベルを上げてみるか。
わたしは竜魔気のレベルを少しずつ上げていく。一方のティナも気のレベルを上げているようだ。故に未だに二つの駒は、どちらかがはじけ飛ぶことはない。
やってみるか・・・わたしは自らのボディが保てる限界値まで一気に気を放出する。それに合わせてティナも気が上がったようだが、それはこちらの気のレベルには程遠いのが接触していた為、把握出来た。
有限だが、現状のボディで使うことが出来る無限の竜魔気・・・そう、わたしの竜魔気は唯一無二の無限竜魔気であることが証明された一瞬である。
気のレベルが段違いな為、ティナの方は吹っ飛び地面へと激しく激突する。まぁ、彼女は不老不死ゆえに少々のことでは心配無用である。
「イタタタタ、レイ、あんた強いね。あたしのディールをもってしても、あんたの竜魔トルネードには対応できなかった。初めてだよ、ディールを使って負けたのは。」
「イヤ、お前のディールには驚いたぞ。初見でリーズストライクや竜魔トルネードを繰り出せるとは思ってもいなかった。対応力としては申し分ない。そこは自信をもって良いと思うぞ。」
「最後にレイの気が一気に膨れ上がって、それにはあたしは対応できなかった。何なのさ、あの膨大な魔力は。あんたもしかして、覚醒魔人か何かなの?」
ティナがそう思うのももっともだ。フツーの人間や魔人が、あそこまでの戦闘力を繰り出せるはずもない。デルタは確かに強かったが、今のわたしのMAXパワーまでには至らないだろう。ミユークラスのパワーに匹敵するそれは、自分で制御していかないと身体が崩壊して自滅しかねない諸刃の剣なのだ。
「わたしは、覚醒魔人でも何でもないフツーの人間だよ。フツーの人間は波気を使っているものだが、わたしは突然変異でな、無限竜魔気という気を使っている。変態と思うかもしれないが、それが自らの定め・・・受け入れなければならない。そう思っている。」
ティナが引くかもしれないとは思ったが、ここは正直に無限竜魔気のことを明かした。まぁ、人間ではない魔剣がわたしの本来の姿ということはここでも伏せておいたが、これは正しい選択であろう。
無限竜魔気を伏せておいたら、後々面倒なことにも成りかねないし、彼女自身がわたしの竜魔気に接しているのだ。フツーの魔気とは異なる気であると気付いているに違いないからな。
「そっか、そうなんだ。無限竜魔気・・・うふふっ、初体験だったケド、何かドキドキする気だった。それよりもそんな大事なことを打ち明けてくれてありがとう。レイってステキだと思うよ。瞳も赤と青の二色でオシャレだし。」
別にオシャレが目的で赤と青の二色の瞳にしている訳ではないのだが・・・とは思ったが、良い方向に受け取ってくれたみたいでまずは安堵したのだった。
それにしても竜魔気と同系統の気を使えるとは思いもしなかった。だが、彼女が使ったのは実際には恐らく竜魔気もどき・・・オリジナルとは少々異なる気だったからな。
これから考える所、回答が一つ出た・・・
彼女は未来が見えたり、時を止めたり出来る訳ではない。ズバリ同調である。
何故ならば、彼女は当初魔気であったが、竜魔トルネードをわたしが発動させたら、突然竜魔気もどきに変化したからである。
魔気と竜魔気では気の質が全く異なる。血液と油といった感じで、全く比較にならないからだ。
だからこそ、竜魔気は突然変異種と言われ、今まで存在が確認されていなかったのだ。同調なくして竜魔気もどきは出来るものではないし、同じタイミングで竜魔トルネードは出来るものではない。




