第二章 最終話 パニック②
さてさて、どうしたものか・・・
時間操作をして、とりあえず一度リセットすることも出来たのだが、アイちゃんからの警告もあったのでそれは最終手段としたい。
《フッフッッフ・・・》
《アイちゃん?》
《いよいよ、ワレの出番だな。感謝するが良いぞ。》
《お~!とっておきの秘策でもあるの?あ、待って、答えを言わないで。考えてみるから。》
《チョッとレイ、今はこれでも緊急事態なんだってこと認識してるの?君は緊張感、足りないぞ。》
《エヘヘッ・・・だってさ、アイちゃんはわたしのパートナーでしょ?それも単なるパートナーじゃなくて、親愛なるパートナー。そのパートナーがもったいつけてるんだから、楽しみしかないよ!》
《そ、そんなに褒めても何にも出ないぞ。と、とにかくだ・・・今はチャカついている場合ではない。良く聞くのだ・・・ワレは遂に成功したぞ。この世の極のスキル、神撃の予測演算を!》
《え?じゃあ、わたしにも神撃の疑似スキルが使えるってこと?》
《そういうことだ・・・だとしたら、お前だったらこの場をどう切り抜ける?神撃に神撃をぶつけても、暴発にしかならないよ。》
わたしは無言になってしまった。折角、最高のスキルが使えるようになったっていうのに、それを活かす手段が思いつかない。このまま、ニューと共に神撃の餌食になってしまうのか?イヤ、ニューはダメージを喰らわないから、わたしだけが悲惨な結末に・・・
「あ、あれならイケるかも!・・・ディールならば相手の攻撃をかき消し、少し上回ったカウンター攻撃が出来る。ティの力と新劇の疑似スキルの合わせ技。これならどうよ!」
わたしは思わず叫んでしまったが、横にはニューがいたのだった。思わず赤面し、チョッと挙動不審なポーズを取って誤魔化す・・・
《レイ、今のお前は物と気のオーラマスターの力を得ている。しかし、波の力のオーラマスタ―であるゼータからは認められていない。神撃は物、気、波が融合した極限のスキル。それを不完全なディールでカウンター攻撃が成功する自信がホントにあるのか?》
《そりゃそうなのだが・・・ダメだ。わたしの考えではアイちゃんの考えには及ばない。》
《この状況を打破する方法はある。それはね・・・》
アイちゃんが答えを言おうとした所、何とニューが間に入ってきたのだ。
「もういいだろ?レイちゃんが困っているじゃないか。えっと、アイちゃん・・・AIが覚醒するとこんな感じになるのか。お前、スゴイね。あ、俺のことは気にしないでくれよ。ゼータの核のお蔭で、お前たちの念も解るようになったみたいでさ・・・」
「ニュー、お前ならどうする?もう悠長には構えていられない。そろそろ、03のヤツが動き出しても・・・」
「終わりだ。レイ、キミの無限竜魔気を頂くとするよ・・・」
わたしが言うや否や、03は遂に神撃四を収縮させてきた。神撃四の内部では大爆発が起きる・・・
終わったな・・・
流石のわたしでもこれだけの大爆発では無事ではいられまい。如何に不老不死でも、神レベルの攻撃の前で、それは通用しない。
まぁ、ニューは不死身らしいから、そこだけは安堵している・・・
あれ?わたしの意識はまだあるのか?
そういえば、肉体にも痛みは感じない・・・
ていうか、まさかの無傷?
周囲を覆っていた爆風が消え去り、視界が開けるのであった。
「な、何でキミが生存しているんだ?・・・あれ?ニューはどこに消えたのだ?・・・フッ、不死身って言っていたニューのヤツが消滅するとはな、やはりハッタリであったか。」
03は、少し動揺していたが、すぐに冷静さを取り戻していた。それにしても解らない・・・
ニューはホントに消滅したのか?
あいつはたまにハッタリをかますことがあったが、直前の様子ではそんなそぶりは微塵も無かった。
わたしは雰囲気の個性を発動させてみる・・・
ニューがもし消滅してしまったのなら、彼の雰囲気の個性は感じられないハズ。
ドキドキしながらも、冷静になってみた。
あれ?ニューを感じる。
しかも、わたしの右腕の中に・・・
これって・・・
《そう、ニューはお前のブレスの中にいる。ゼータ、やってくれるね・・・これが彼女の言っていた真なる【保険】だったのよ。》
《アイちゃん、どういうこと?ニューがブレスの中にって・・・彼が魔動石になったってことなの?》
《おっと、それは俺から説明しよう。》
ブレス内から念波が届く・・・
それはニュー本人からで間違いなかった。
《俺は転生して石ころだった。生前の名前だけは記憶になかったが、他の件に関しては記憶があった。そんな俺を拾ってくれたのがゼータだ。ゼータは錬金術を駆使して、俺に肉体と五感を与えてくれた。名付けの代償として、視覚という眼球だけは彼女そのものだがな。俺は覚醒魔人としてやっていけるようになったが、同時にゼータは錬金術でストーンモードにもなれるようにしてくれていたんだ。最初は何の為にストーンモードなんて必要なのかって考えたが、この時の為だったんだよ。俺のストーンモードは魔動石、イヤ魔神石なんだ。ゼータは生命の力、グランドマスターの力の全てを圧縮して、この魔神石に宿している・・・レイちゃん、お前は今からGODの力を使うんだ。三人のマスターが認めたお前がな・・・》
《え?わたしがGODの力の持ち主?でも、ゼータが認めたのはニューであって、わたしではない。それにニューに込められたゼータの力は、五パーセントなんでしょ?》
《そんなことないよ。ゼータはお前の事、【面白いヤツ】だって言ってたぜ。彼女が面白いヤツっていうのは、認めたってことなんだから。何を隠そう、俺も彼女に面白いヤツって言われてたんだからな。俺に込められた五パーセントは圧縮されたものだから、解凍すれば能力は百パーセント発揮出来るんだよ。》
ニューはそう教えてくれた。
そうか、わたしもゼータに認められし者なんだ・・・
ニューがブレスの中に入ってくれたお蔭で、わたし自身も真なる不死身となった・・・そういうことか。
《レイ、さっきの回答だがお前は無限竜魔気と無限の力を活用しきれていない。それが出来ていれば、どんな攻撃をも無効化出来るんだぞ。そう、それが例え神撃でもな・・・そうそう、お前にちょっかいをかけてきた者もいたようだが、ワレがお前のW無限で無効化してやったがな・・・》
え?待って・・・
今、神撃も使える・・・
GODの力も得た・・・
これって、わたし無敵じゃね?
「ならば、これならどうよ!」
03は神撃三を展開する。多方向からの神撃の乱れ撃ち・・・
わたしは光速で避けることも出来たが、ここは試しにと神撃の疑似スキルで相殺していった。
「こんなことって・・・お前なんかにボクの神撃が使えるハズがない・・・それにしても、ニューが神撃で消滅したのは正直誤算だったが、ボクには01の基本スキルが揃っている。絶対にキミの弱点を攻め入ることが出来るスキルが、僕にはあるからな。僕に敗北という二文字はない。」
「あ、折角の所、悪いんだけどさ・・・ニューはわたしのブレス内にいるよ。だから、お前はゼータの残りの五パーセントを吸収することは出来ない。それに、無限の力、無限竜魔気、GODの力を得たわたしに勝つことはムリでしょ?」
《それに、03よりも強い子がそこにもいるしね・・・》
《え?今ここにいるのって、わたしと03以外ではカイしかいない・・・もしかして、わたしにちょっかいを出してきたのってカイだったの?》
《あぁ、そうだよ。オレがお前にちょっかいをっていうか、本気でお前を取り巻くW無限のバリアを破ろうとした。だけど、ムリだった・・・お前のこと、母上や父上が認める訳だ。スゴイな。オレは母上の波の力と父上の優秀な遺伝子を得て、【波】を超える【破】の力を持つ。母上も父上には伝えていなかったが、このことは知っていたと思う。破の力は、全てを破る力・・・だから、精神生命体だろうがこの世だろうが全てを破壊出来るんだよ。今までのことも余裕で見ていたが、もうそろそろいいだろ。終わりにしようぜ。》
《そういうことか・・・でもね、03はわたしが滅するよ。わたしに売られた勝負だからね。》
「ちくしょう、こいつは想定外だ。これでは、あの方に申し訳が立たない・・・不完全な肉体だが、ある程度はこのメタル系銀河を破壊することは出来るだろう。その後はお任せすれば良い・・・」
03はブツブツと独り言を言っていた。
しかし、どんなに小声でも、わたしとカイには一定のレベルの聴覚が備わっているので聞き取れた。
あの方って、誰なんだ?
こいつらの裏に黒幕でもいるってか?
まぁ、そんなことは後で考えれば良い。ここはディールでも対応不可能なアルティメットスキル、ロゼオンを使う。これにディのスキル、ディーノを組み込めば精神生命体でも浄化が出来る。
しかし、浄化途中でまた誰かの体内に憑依されてはたまらない。ここは、アレの強化版をわたし独自で作り出したほうが良いな・・・
あ、よくよく考えたら、ロゼオンなら神撃四をクリア出来たな。どんなに物凄いエネルギー体でも粒子間の隙間は介在する。その隙間をわたしがタキオン粒子体となれば、何の影響もなくすり抜けられるということだ。
まぁ、どんな完璧に見えるスキルでも弱点はあるものだからな・・・
「もういいだろ!母上の身体、返してもらうぜ!・・・」
「え?」
わたしが止めたにも関わらず、カイは右手を前に突き出し、開いた手の平を握り締め行動に移る・・・
その瞬間、ゼータを取り巻く03の存在が完全に消滅したのだった。
スゲーって正直思ったが、カイの言っていたことはハッタリではなかった。
ホントに全てを破壊する者として存在を明らかにしたのだ。
そういえば八百年前、前世のティナがカイのことをカイトって呼んでたな。カイトは破壊する人みたいでカッコいいって・・・
ちくしょう・・・それが今現実になったってことか。ものスゲータイムラグじゃないか。全てを破壊する人か・・・
ゼータは意識を失って横たわっていた。横でカイが見守っていたが、何か良い雰囲気だ・・・
これが、真なる家族ってヤツなのかもしれないな。
《ニュー、お前はわたしのブレスから出られるんだろ?ゼータのそばに行ってやれよ。愛する者が帰ってきたんだ。抱きしめてやれって。》
《イヤイヤ、ゼータが無事に戻ってくるのは想定内だ。お前でもカイでも、03なんかどうにでもなるって解っていたからな。そんなことよりも、どうやらあの方ってヤツのお出ましだぜ・・・》
周囲の大気が震えている・・・
あの方ってヤツの登場か・・・
わたしとカイでどうにかなる相手ならば良いが・・・
「やはり、あいつらでは役不足であったか・・・」
物凄い威圧感が伝わってくる。それは、神々以上であることは明白だった。
「お前が黒幕だったのか。何の為にこんな騒ぎを起こしたんだ?悪いが、お前を滅して全てを終わらせるよ。」
目の前に登場したのは、漆黒のドレスをまとった女性・・・
特に武器は持っていない。肉弾戦が得意なのか何かのスキル持ちなのかは不明だが、明らかに強者であるのは伝わってくる。
「わっちは銀河神。ギャラクシー神とも呼ばれている。主たちは強いの・・・邪神を使って、まずはこのスティール星から破壊していき、再生させる予定であった。生と死を司るペルセポネーの子であるザグレウスのみ、それが可能。だが、予定が崩壊した・・・わっちは遥か太古、このメタル系銀河を創造した者。ゼウスやクロノスをはじめ、108人の原始の神々を生み出したのもわっち。だが、現状のメタル系銀河の環境は見るに堪えない始末・・・だから、我子たちにその尻拭いをさせるべく、今回の計画を立案した・・・しかし、我子たちでは役不足であった。イヤ、生命体を超越した主たちであれば納得できる。」
「ならば、わたしたちの目標と同じではないか。わたしたちもこのスティール星を復興させるべく、行動してきた。もう少し、時間をくれないか?この状況を作り出した我々のことは信用出来ないかもしれないが、皆で元に戻すべく努力していく。どうか、見守っていてほしい。」
「ならば、その具体的方法は?人間や魔族、その他の生命体全てが協力し、一致団結でやれるのか?誰一人として欠けることなく?・・・ムリっしょ?わっちは主たちのことは認めているし、期待もしたい。だがな、残念なことにエゴイストが多すぎるんだよ。わっちが生んだ、神々でさえエゴが強すぎて邪魔な邪神を切り捨てた。だから、もうわっちがこのメタル系銀河を消滅させ、新たに銀河を創造する。崇高な意思をもった生命体を創り出すのはザグレウスでなければ出来ないが、致し方あるまい・・・あれこれ考えてことを進めるのはもう面倒だし、ゼロからスタートさせるって、もう決めたから・・・じゃあね・・・」
「チョ、チョッと待っ・・・」
次の瞬間周囲は真っ白になり、全てが消滅した・・・
そしてメタル系銀河は無くなったのだ・・・
《ヒュー・・・危なかったね・・・ワレに感謝するが良いぞ。》
わたしはアイちゃんの機転でロゼオンを発動し、タキオン粒子と化していた。この状態であれば、星の消滅影響も受けないし、ヤツにわたしの存在はつかめないという。
《レイ、もう人化しても良いぞ。ヤツの存在はここには感じられない。》
《うん、解った。》
辺りは宇宙空間で酸素は無かったが、天空の力を持っているので、わたしは宇宙空間でも生きていけるのだ。
だが、カイとゼータが・・・
《オレたちなら、ここにいるぜ。》
突然、目の前にカイとゼータが現れた。
「え?お前たち、一体どうやって?」
「言っただろ。オレは全てのものを破壊出来るって・・・だから、時空を壊してそこにオレたちは身を置いたのさ。そして、オレは破壊の反転である、創造を発動させ壊れた時空を閉じた。そして、また時空を壊してここに参上したってわけだ。まぁ、あれ位の空間爆破くらいじゃ、オレはダメージを受けないけど、意識が無かった母上が一緒にいたからな。」
「でも宇宙空間だぞ、ここは。真空状態で生きていけるのか?」
「その点に関しては問題ないよ。アタシとカイは生と死を司る神の末えい。無酸素状態でも体内で酸素を作り出すことが出来るのよ・・・それよりも、皆には迷惑かけたね。神々の問題に巻き込んじゃって・・・イリヤンには申し訳ないことをしたし。」
珍しく、ゼータは落ち込んでいた。普段は明るく元気なイメージであったが、こういった一面もあるんだな・・・
イリヤンの形見はわたしのブレス内にある。
いつまでも、わたしの心の中で生きている。
生きている・・・
ん?生きている・・・
わたしはハッとした。イリヤンは死んじゃいない。そうだ、舌が残っているじゃないか。
細胞が残っていれば、魂が無くても青の二撃で復活させることが出来る。色々あって、気が動転していたので気付かなかった。
ペルセポネーでも魂が無ければ、死者を復活させることは出来ないらしい。
だが、わたしの青の二撃は言わば神越スキル。
これって、神への冒とくとも取られられるかもしれないが、そんなことは知った事か。イリヤンは復活できるのだ。だが、今はその時ではない。
「ゼータ、カイ、今後のことだが・・・」
「何も言うな。お前の好きにするが良い。父上から聞いているぞ。ブレスには、時の石があるんだろ?未来を書き換えろよ。そして、ギャラ子に一泡ふかせてやろうぜ・・・お前は父上、母上に次いでこのオレが認めたヤツなんだからな。」
「プッ・・・ギャラ子って、もしかして銀河神のことか?・・・女神ギャラクシーシンだから、ギャラ子か。ネーミングセンスがあるんだな、カイは。」
「そうだろ?お前にもニックネームをプレゼントしてやろう・・・うん、レイ。お前はお澄だな。澄み切った心の持ち主、だからお澄。どうだ?ナカナカだろう?」
「お澄か。いいじゃないの。アタシもそう呼ばせてもらうわ。」
「チョ、チョッと待って。お澄って・・・そんなにわたしは純粋ではないぞ。純粋なのは、ニューの方でわたしなどではない。」
《あのさ・・・無限竜魔気って、色んな要素がかみ合って出来た突然変異種の気なんだろ?俺、思うんだけどさ、ゼロは純粋に強さのみを求めていた気がする。一方のレイちゃんはさ、視点が高かったと思うんだよね。視点が高いってことは雑念が消えて、純粋に何が大事かってことを見据えている者のみが得られるんだって思う。もっと自分に自信をもっていいんじゃないかな。お澄・・・》
わたしの顔は現在、赤面状態であると認識した。熱い・・・全身の血が沸騰しそうな感じであると言っても過言ではない。
それにしても、お澄って・・・どこぞの町娘の様なネーミングに戸惑いを感じる。まぁ、皆がそう決めたのだ。ありがたく受け入れるとしよう。
「解ったわ。呼びたいように呼べばいいと思う・・・その代り、わたしも皆を好きに呼ぶよ。ゼータは姫、カイは神超、カミゴエ・・・いや、言いにくいからごえもん、ニューは・・・相棒ってね。」
「姫かぁ、何か照れるけど・・・仕方ないわ。」
「カミゴエって、お澄も神越人じゃないか。てか、お澄はオレ以上に強いって認識してるのか?まぁ、いいか。好きにしろ。ごえもんも悪くはない。」
「俺は相棒か・・・いいね。昔に戻ったみたいだな。今はお澄がメインで俺がサブだけど・・・」
「ううん、わたし嬉しいのよ。前はさ、カイとティナで二人のブレスを作り上げていったじゃない?今度はわたしとアイちゃんで二人のブレスを作り上げたいの・・・その為に相棒には力を貸してほしい。そんなことよりも、話は変わるケド・・・皆、これからわたしが決断したシナリオを進めていきたいって思うんだケド、ホントにいいの?」
姫とごえもんは黙って頷いた。そして、ブレス内にいる相棒も念波で《OK》と伝えてくれた。
「じゃあ、時を戻すよ。でも、姫とごえもんの時は今のままでいくからね。これって、難易度は高いんだケド、アイちゃんのサポートで出来るらしいから。」




