第四十九話 カイキン③
イリヤンは意識を失ったままだ・・・
もう、かれこれ三日間は経ったのだが・・・
その間、わたしとキャンティ、キャンディの三人は様々な意見を交わした。話をする中で、二人のものの見方、考え方が常人とは違うなと勉強になった。流石、マスターの称号を得ている二人である。
そして、わたし自身のレベルアップの為に二人には気と剣技の特訓に付き合ってもらった。
カイザースラッシュを伝授してもらおうと思ったが、お前にはまだ早いとかで教えてもらうことは叶わなかった。
だが、わたしは密かにアイちゃんにカイザースラッシュの予測演算をしてもらっている。完成したら、わたしの場合、無限竜魔気を使ったバージョンでの疑似スキルになる。
あのスキルは、無限竜魔気と相性が良いだろうとアイちゃんも言ってくれた。予測演算が完了したら楽しみである。
イリヤンの意識が無くなって、十日間が経過した・・・
未だにピクリとも動かないイリヤンだが、アイちゃんの予測演算では問題なし・・・ということであった。
しかし、人が十日間飲まず食わず、排尿排便も全くしないって問題じゃないのか?とツッコみたくはなった。
特にうんこなんかは、発酵してヤバイ状態になっているに違いない。
だが、アイちゃんにはカイザースラッシュの予測演算を頼んでいるし、機嫌を損ねたら大変なのでそこはスルーしておいた・・・
あの日から、03の動向も音沙汰無しであった。恐らく、新しい身体を馴染ませる為に時間を要するのであろう。それにヤツの場合、特に急ぐ必要もないだろうからな・・・
イリヤンが意識不明になって、二週間が経過した・・・
未だに復活の兆候が見えない。流石にこれはまずいんじゃないか・・・ということで、キャンティが生命維持装置の中にイリヤンを収納した。
もし、わたしたちがその場にいなくても、自ら生命維持装置を出て活動が出来るということであった。心臓の鼓動や脳機能は問題ないというアイちゃんの診断なので、安心はしている。
だが、キャンティとキャンディにはアイちゃんの存在は伏せているので、気が気ではないだろう。それにしても、キャンティの方は妙に落ち着きがある。イリヤンに関しては何も心配していない様子だ。 わたしの気のせいであろうか?・・・
「あなた・・・あ、な、た。ねぇ、起きて。」
何やら、ゼータの声が聴こえる・・・
俺は意識がままならないまま、むくりと起き上がり、声のする方向に顔を向ける。寝起きで半目ではあったが、ゼータのいい匂いはサイコーの目覚ましだ。
「おはよう、ゼータ。何かあったのか?朝飯なら、まだ早いんじゃないか?」
俺の言葉がおかしかったのか、ゼータはクスクスと笑い出す。
「朝食はまだ作ってないよ・・・ねぇ、やったね!あなたとアタシの子供が出来たんだよ。」
俺はその言葉を聞いて、一気に目が覚めた。
え?でも、そんなことが解るのか?妊娠検査薬とか使っている様子もなかったが・・・
「アタシには解るの・・・やっと出来たんだよ。男の子で順調にいけば、来週には出産出来るよ。」
「ウソだろ?フツーは出産まで、十月十日っていうじゃん・・・何でそんなに早いんだ?もしかして、俺が石ころだったからフツーには産まれないのか?それに何で男の子って解るんだよ。」
俺があたふたする光景がおかしかったのか、ゼータは再びクスクスと笑い出す。
「違うよ・・・覚醒魔人同士の子は成長が早いのよ。それにアタシの波の力を与えているからね、どんどん成長しているの。波の力を与えていると解るんだ・・・この子の遺伝子情報は男の子。アタシとあなたの子だからね、きっと物凄い優秀だよ・・・て、親バカだよね。」
ゼータは舌をペロリと出し、照れ笑いをしている。
俺が父親・・・
石ころだった俺が・・・
ゼータの錬金術で人となった俺が、わずか二週間で・・・
命ってもっと深く大きなものだという認識があったが、こうもあっさり、新たな命が芽生えると正直呆気にとられる。
イヤ、嬉しいのは嬉しいよ。何て言ったって、愛するゼータとの子だ。何事にも変えがたい。
俺の願いがこうもあっさりと叶うとは・・・
イヤ、無事に産まれてくるまでは安心できない。
俺があれこれ考えているのが嬉しかったのか、ゼータは俺の顔をウットリと見つめている。
「ねぇ、名前はどうするの?何か考えている名前はある?・・・どうせなら、カッコいい名前がイイよね。イシノムテキはチョッとダサいから、やめようね。」
ゼータが二週間前に俺に付けようとしたした名前・・・やっぱ、心の中ではダサいって思っていたのか。
イヤ、あの時はきっと冗談で言っただけだろう・・・
うん、きっとそうだ・・・
そうに違いない・・・
名前か・・・
改めて名前を付けるとなると、色々と考えるよな・・・
俺たちは考えた。結論はすぐには出なかったので、出産までに考えようという話で落ち着いた。
だが、実は考えている名前があるにはあったのだ。それをゼータが受け入れてくれるかどうか、不安だったので考えないようにした。
俺の考えは念波となって、彼女に筒抜けだからな・・・
だから、名前の候補を十個くらいダミーで頭に浮かべて濁しておいたのだ。本命は一つあるにはあったが、もっと慎重に考えよう。
日に日にゼータのお腹は大きくなっていった。前日と比較して、格段に大きくなっているその様は、俺が親父としての自覚を持つのに十分なことであった。
俺が人化して取り組んでいることが一つある。気の練り上げだ。これは、前世でも行っていた記憶があったので、今回も引き続き行っている。その事によって何かメリットがあるとか、どうなるとかは解らない。只単に俺がそうすることで落ち着くし、既にルーティンとなっているのだ。
一方のゼータは、母親としての準備を進めている。紫髪の彼女は美しい。ステキな匂いを持つ彼女が近くにくると俺の心もウキウキする。




