第四十九話 カイキン①
「ヴァンとゲン?あぁ、あの二人ね・・・人間としてはそこそこ強かったけど、ボクにとっては不必要な存在だったからさ、石ころにしてあげたよ。どこかに転がっているとは思うケド、石ころだと呼吸が出来ないからもう既に魂は冥界にいっているんじゃないかな?三竜姫はこの体内にいるよ。ボクの目的には必要不可欠な存在だから、大事にしているから安心してよ。」
「ふざけるな!」
再び、セスが03に向かって攻撃を仕掛ける。わたしたち全員の視界はまだ回復していないが、セスは波の力で相手の位置が解るようだ。
「彼女たちは、この体内の絶対領域に隔離しているから、外部からはどこにいるのかも解らないし、その攻撃での影響も皆無。この素体はダメージを喰らうかもしれないけど。」
03は、ニヤケタ表情でセスの攻撃を交わし続ける。やはり、視力が回復しないと的確な攻撃は難しいのか・・・
それにしても、絶対領域って・・・
外部からじゃ、探知出来ないとは・・・
「これでも喰らいな!」
波の力を圧縮したセスは両手を水平に広げ、目の前で手の平を合わせる・・・
その動作を確認するや否や、03も何故かセスと同様の動きをする・・・
セスが発したスキルは空間を圧縮し、03を両サイドから観えない空気の壁で押し潰すというものであった。
まさに波の力があって可能なスキルであったが、ティナの天空の力そのものでもあった。
しかし、一方の03もセスを両サイドから押し潰そうとしていた。ヤツでは波の力が使えないので、気を圧縮して観えない気の壁でセスを押し潰そうとする。これって、疑似スキルのディールじゃないのか?
もし、ティナが天空の力が使える状態なら、恐らくセスと同様に空気の壁で押し潰そうとしたであろう。だが、その疑似スキルでも十分に威力はセスのものと近いものがあった。
《この感じ・・・03が使っているのはレイが考えているようにディールだよ。セスのスキルに対応したんだ・・・これって、もしかしたらティナを吸収したから使えるようになったんじゃ・・・だったら、リンやキールのスキルも03は使えるってことになるよね。》
03がディール・・・
そんなことって、あって良いのか・・・
厄介だな・・・
もし仮にカイが復活し、無限の力を再度集められたとしても、赤の一撃や青の二撃、ロゼオンはうかつに使えなくなった。カウンターでこれらのスキルをこちらが喰らうことは致命傷になりかねない。
それだけ、この三つのスキルは特別なもので、ある意味切り札になるのだから・・・
お互いに空気の壁の圧縮に耐えようとしている反面、スキルに更なるパワーを与えてもいた。
これだけの緊迫した場面、わたしたちは何も観えないし何も出来ないでいた。そんな中、一人だけは異なる行動を取っていた。
「カイザースラッシュ!」
そう、ソードマスターであるキャンティだけは、心眼で03の位置を特定し涙しながら剣を振う・・・
それは03が憑依したイリヤンを切り裂く一太刀であり、弟子に致命傷を与えることを決断した戦士としての行動であった。
見えない斬撃が03を襲う・・・
しかし、03に致命傷を与えるどころか、かすり傷さえ負わすことも叶わなかった・・・
「残念だったね。ボクは魔人ごときの攻撃では、ダメージを受けない。ボクにダメージを負わせることが出来るのは一握りの者たち・・・そう、神々くらいだろうね。」
「さぁ、それはどうかな・・・」
キャンティがそう呟いた直後、03の身体が傷を負い、血しぶきが周囲に飛散する・・・
「バ、バカな・・・」
そのダメージの為、急激にパワーダウンし、セスのスキルで押し潰されてしまうのだった。
ようやっと、皆の視界が開けて状況が明らかになって来た。
苦悶の表情をする03・・・
身構えるキャンティとキャンディ・・・
静かなる魔人セス・・・
そして、何も考えていないわたし・・・
イヤ、実際は考えているのだ。アイちゃんが・・・
わたしは03の中にいるという三竜姫と、ダメ元で石ころにされたというヴァンとゲンを無限竜魔気と雰囲気の個性を駆使してサーチしていたのだ。
しかし、五人の雰囲気は全く感じられない。
ヤツが言うようにヴァンとゲンは絶命し、三竜姫は絶対領域とやらで隔離されているのだろうか・・・
「ナゼ、僕がこんな奴等にダメージを・・・」
「あたいの剣は聖剣エルコンドル・・・神をも切り裂く素材、神断材ヴェガを使っている。加えて、奥義カイザースラッシュ。物・気・波をも切断可能な一撃を喰らったんだ。まぁ、ソードマスタ―のあたいしか出来ない一撃だがな・・・」
カイザースラッシュ・・・
無音で斬撃が放たれた・・・
そして、わたしは心の力で見届けたから、その物凄さが解る。
通常ならば、斬撃とはただ一直線に放たれるもの。そりゃそうだ、野球のような変化球はボールに回転を加えなければ発生しない。
だが、キャンティのカイザースラッシュは変化したのだ。それも見えない斬撃が不規則に動き、まるで分身するようにして移動していた。
だから、斬撃を察知出来ても、予測範囲外から一撃がくる可能性があるのだ。ソードマスターとはここまで凄かったのか・・・
「いやはや、恐れ入ったよ。こんな強者が魔人風情にいたとはね・・・神殺しが可能な魔人が二人か・・・クフフッ、おもしろいね。全員でかかってきてもいいんだよ。それにカイザースラッシュとやらも、ボクにはもう通用しない。」
「通用するかしないかは、やってみなけりゃわかんないよ・・・カイザースラッシュ!」
「その通りだ。もう一度、お前をデリートしてやるよ。そして、イリヤンとティナを返せ!ディーノ!」
キャンティはカイザースラッシュを、そしてキャンディは再び03を消滅させるべくディーノを放つ・・・
03は不敵な笑みを浮かべながら、腕組みをしての仁王立ち・・・
《まずいよ・・・恐らくヤツはディールでカイザースラッシュをマスターに突っ返すつもりだよ。予測演算では、カイザースラッシュならディーノをかき消すことが出来るから、一石二鳥ってやつだし・・・でも、マスターならそんなことは解っていると思うんだよね・・・》
アイちゃんの言う通りだ。何の勝算もなく、キャンティがやみくもにカイザースラッシュを放つわけがない。
それにキャンディもディールの存在を知っていたようだったから、先の展開は読めよう。そんな二人がコンビネーションでスキルを発動したんだ。絶対に何かあるはずだ・・・




